特別警戒任務
「はぁっ……はぁっ……」
「ん? あれは……」
カレンやアンナ達が座るテーブルに向け、走ってくる少女が1人。
それはアンナにとっては見覚えのある、どんくさそうな見た目をした幼馴染みだった。
「ミーナ? どうしたのさ、あんたはマティアスさんのところに……」
「た、大変なの! 実はついさっき、マティアスさんのところに特別警戒任務っていうのがきて……」
「特別警戒任務……ちょっと待って、いつの間にそんなヤバい奴が出てきたの!?」
通常の任務とも、緊急任務とも違う任務、特別警戒任務。
S級以上のモンスターが出現した際にギルドから発令されるこの任務の名を聞いて困惑するカレン達の前に、書類を片手に持った受付嬢がやってきた。
「たった今、ですよ。このギルドまで連絡がきたのが……」
「……受付嬢さん……」
「場所は王国北端の街、セッカ。現れたのは……何でも、巨大な亀だとか」
「亀?」
「ええ、それもただの亀じゃない。これはあくまで報告による話ですが……街1つはあろう巨躯に加え、甲羅には世界樹を思わせるほどの大木が生えているとか……」
「……なにそれ。そんなモンスター聞いたコト……」
「でしょうね。上はそいつを完全な新種としてSS級モンスター、『ユグドラシル』と名付け……王国各地から、腕利きの冒険者をあたらせる必要のある『特別警戒任務』の討伐対象としました」
SS級。それがいかに規格外な存在かというとこは、冒険者のランクがSまでしかないことが物語っている。
ーーつまり、どんな腕利きだろうが、1人の人間では手も足も出ないほどのモンスターなのだ。
「これは、本部に先んじてギルド北方支部から発布されました。そのため、この本部にいる冒険者の方々よりも先に特別警戒任務の発布を知った方がいるらしく……」
「……その冒険者の中に、マティアスがいるっていうの?」
「はい。既にマティアスさんはセッカへと向かっているようです。カレンさん達も……」
「勿論、行くに決まってる! みんなも、いいよね!?」
カレンの問いかけに、リーネ、ジェシー、チコは間髪置かずに頷いた。
「カ、カレンさん! 私も……」
「アンナちゃんはここで待ってて。今回は本当にヤバい戦いになるはずだから……大事な友達に、無理してほしくない」
「…………!」
「アンナ……気持ちは分かるけど、ここはカレンさんの言うこと聞いとこう?」
自分も着いていきたい。でも、目の前の憧れの人と、すぐ横の親友がそれを止める。
勿論、他ならぬ自分のために。
アンナは、そんな気持ちが分からないような人間ではなかった。
「……分かりました。でも、必ず帰ってきて下さいね! 皆さんと、マティアスさんで一緒に!」
「……勿論!」
こうして、カレン達4人は急ぎ北へと向かうことになった。
SS級のモンスターとは、そしてマティアスは無事なのか……
カレンとマティアスの物語は、1つの佳境を迎えることになるのである。




