マティアスとカレン⑪
「……心の準備はできてるか? カレン」
「……うん、もう逃げない。どんな結末になろうとも受け止めるよ」
カレンはドラゴンを倒してその名を上げた。
親父さんがその評判を知っているかどうかは分からないが、ドラゴンを倒したという実績は認めざるをえないはずだ。
「きっと大丈夫だ。……それじゃ、行こう」
俺達はカレンの家に戻ってきた。
カレンの夢を叶えるために、家族の縁を繋げるために。
「……入りなさい」
「……失礼します。……父様……」
「……俺達はあなたの要求に対して結果を示しました。これで分かったでしょう? カレンは“天才”なんです。カレンには、冒険者として多大なる富と名声を得られる才能があるんです」
「……ああ、凄いことだ。これに関しては素直に認めよう」
カレンの親父さんは微笑を浮かべながら拍手をはじめた。
でも、口は笑っていても目は笑っていない。
……やっぱり、俺にはこの人の感情がさっぱり分からない。
「……父様、お願いします。私は絶対にルークス家の名前に傷は付けません。この家の娘として恥の無い振る舞いを心がけ、常に冒険者の世界の頂点に立ち続けると誓います。だから……」
「認めよう」
「……えっ? いいんですか?」
「私はちゃんと結果を出した人間は認めているつもりだ。そしてお前達は、私にその実力を示した。ならば私はそれを認めなければならないだろう。……もっとも、条件はあるがな」
「……なんですか?」
「お前が自分で言ったことだよ。この家の名に傷を付けないことと、やるからには妥協せずに頂点を目指すこと……具体的にはそうだな、3年のうちに冒険者の頂点、S級冒険者になってもらおうかな?」
「……なっ、またそんな条件を……!?」
「できないのか?」
「……いえ、やりますよ。絶対にできます、断言します!」
「……よろしい。では、3年後にまた結果を示してくれるのを待っているよ」
「……はい……その、父様……最後に1つだけ聞いてもいいですか?」
「……なんだい?」
「……これからも、私はあなたの娘でいていいんですか?」
「……何を当たり前のことを言っているんだ? お前は私の娘だろう」
「……はいっ!」
こうして、俺達とカレンの親父さんとの対面は終わった。
結果を出せば認めてくれる……あの人が、自分の信念よりも他者の能力を認められる人間でよかったよ。
能力を認めさせるための要求が高すぎるのは難点だけど……
「……これで、一応は認められたってことだよな?」
「うん、でもまだ終わっていない。今度の課題は3年かけてこなすヤツだ」
「3年でS級になれって……また、難しい課題を出してくれたぜ」
「でも、無理な話じゃないよ。本当に達成させる気がないなら、1年みたいな現実的じゃない期限を設定してきたはずだもん」
「……3年は現実的だと?」
「大丈夫だよ。だって私には、マティアスが側にいてくれるんだからさ」
その言葉とともに、カレンは俺に対してもたれかかってきた。
もう6年一緒にいるとはいえ、彼女にこんなに密着させたのは初めてであり、思わず俺もドキッとして顔を赤くしていた。
「……マティアスと一緒なら、なんでもできそうな気がするんだよね。……だからさ、お願い、マティアス……」
「……なんだ?」
「……これからもずっと、私の側にいてね?」
「……当たり前だ。この前そう約束しただろ」
「……えへへ。よぉし、これでまた3年頑張れるぞぉっ!」
可愛らしく笑ったカレンは、勢いよく立ち上がってから天高く指を指した。
「目指すは冒険者の頂点、S級冒険者! マティアス、私達2人で、絶対成し遂げようね!」
「……勿論だ。お前の夢は、俺が叶えてやるよ!」




