マティアスとカレン⑩
「グルガアァッ!!!」
……またこいつの前に出てきてしまった。何度覚悟を決めようとも、やっぱり怖いものは怖い。
でも、怖さ以上のモノが、今の俺を突き動かすんだよ!
カレンの前では、絶対にカッコ悪いところは見せられねぇ!
「……行こう。マティアス」
「……おう」
まずは2人で左右に分かれて、少しでもドラゴンの狙いを定めさせないようにする。
俺の動きは遅いが、カレンの機動力はドラゴンの目すら惑わせるものだ。
常にドラゴンの死角に潜り込み続け、隙を見て剣でドラゴンの足を切りつけている。
「グルァッ!」
ドラゴンは、より脅威と感じたカレンに狙いを定めて炎を吐き出す。
しかしカレンは余裕をもってその炎を回避し、カウンターの一撃を叩き込んだ。
「これでも食らえっ!」
「ガアァッ!?」
カレンの一撃は足の急所に入ったか、ドラゴンは大きく体勢を崩し、カレンの前に隙を晒す。
「チャンス! これで……」
「ガガァッ!」
しかし、ドラゴンは足に大ダメージを負ったとみるや、すぐに翼を羽ばたかせて空中戦に持ち込もうとする。
流石のカレンでも、翼を持っていない以上は空中戦は不利だ。
(だから、そうはさせねぇよ!)
でも、俺はずっとドラゴンの翼を狙ってたんだ!
あんなにデケェモンスターの翼、剣で直接切りつけるのは不可能だ。なら……
(爺さんのところでずっと練習してきた大技だ。実戦で試すのは初めてだが……カレンの前なら、きっと俺はなんでも出来るはずだ!!!)
心の炎を、剣に纏わせるイメージを作れ。
炎を剣に乗せて、ドラゴンの翼に向かって放て!
「『火の剣 炎帝刃』!!!」
振り抜いた剣から放たれた炎は、ドラゴンの翼に向かって飛んで行く。
「グギャアァッ!!!」
炎は瞬く間に翼を飲み込み、翼を焼かれたドラゴンは地に落とされた。
「どうだ! カレン、今だぞ!」
「うん! 後は任せて!」
翼をもがれ、地上で呻くドラゴンにも容赦無くカレンは剣を向ける。
このモンスターを殺さなければ、自分の望む未来は掴めないから。
「……マティアスのためにも、私は可能性を掴む!」
カレンは剣に、自分の全てを込める。
持てる力全てを、掴みたい夢を、家族やマティアスへの想いを。
「『光の剣 暁光刃』」
僅か一太刀で、カレンはドラゴンを一刀両断してみせた。
まだ冒険者登録すらしていない13歳の少女がドラゴンを討伐した話は瞬く間に王国中を駆け巡り……カレンはその日から“天才”と呼ばれるようになったんだ。
「……やった……」
「……俺達は結果を残した。後はそれを認めてもらうだけだ!」




