マティアスとカレン③
「……爺さん……最近、カレンが来なくなりましたね」
「……うむ。まぁ、あいつにも色々あるんだろう」
13歳になった頃、カレンが突然爺さんの家に来なくなった。
それまでの6年間、どんな時でも1週間に1度はここに来ていたカレンが、もう1月も顔を見せていない。
……心配だ。爺さんに対して手紙すら出さなくなったなんて……もしかしたら、カレンになにかあったのかも……
「……爺さん、カレンの家を教えてくれませんか?」
「……やめておけ。お前が行ってもどうにもならん。……儂が行っても、無駄だったのだから」
爺さんには、俺の考えていることなどお見通しだった。
カレンの家を直接訪ねて、カレンがこっちに来なくなった理由を聞こうとしていたことを。
「……何で無駄なんですか? カレンがいいとこの娘なのは知ってますけど、それに関係してるんですか?」
「ああ、その通りだ。カレンの父親は、あの娘に余計なことを教える儂のことを快く思っとらん。きっとあの娘が来なくなったのも、あいつがそう命令しているんだろう」
「……爺さんは、それでいいんですか?」
「……個人的には、よくはない。だが、カレンにとって幸せなことがどちらなのかは……分からない」
「どっち? あいつの気持ちは、爺さんも分かりきってるでしょう? あいつは、敷かれたレールに沿って歩く人生なんて……」
「……思い出せ、お前の両親のことを。冒険者とは、あのような危険な仕事なのだ。いくらあの娘に才能があるといっても、そんな仕事をさせるよりはその辺の男と結婚でもして……」
「カレンがそんなこと望むわけないだろ! 確かに冒険者が危険だってのは分かるけど……それで自分の意思を殺しちゃダメだろ……」
「……儂だって、カレンに冒険者になって欲しくないわけではない。そう思っていたら、あの娘に何年も稽古をつけたりしないわい。……でも、あいつの父親の気持ちも、儂には分かるのだ……」
……こんなに情けない爺さんははじめて見た。
当時の俺はまだガキで、大人ってのは余計なばかり考えて本人の気持ちを無視してるようにしか見えなかったんだ。
「……カレンの気持ちは、俺が一番分かってる。俺は1人でカレンの家に行って、あいつを外に連れ出してやるからな!」
俺は感情のままに家を飛び出し、適当な馬車を捕まえて乗り込んだ。
カレンの家がクィーンズという街にあるのは知っている。
まずは街に行って……そっから先は、その時考えりゃいい!
今じゃ考えられない行き当たりばったりな行動で、俺はカレンのもとへと向かったんだ。




