マティアスとカレン②
「……友達?」
「うん……もう、さっさと返事してよ。なんか恥ずかしくなってくるじゃん」
夕陽の眩しさに紛れてはいるが、カレンの顔が恥ずかしさからか赤くなっているのは俺にも分かった。
正直、可愛いとは思ったよ。でも、いつまでも黙っていたら痛い目を見るとも思った。
「う、うん……俺は別にいいよ。お爺さんにも、君の友達になってくれって言われてたし」
「……そっか、お爺ちゃんが」
ついさっきまで俺達の稽古を側で見ていた爺さんは、いつの間にか家の中に帰って婆さんとともに晩飯の支度をはじめていた。
「……でも、はじめての友達って言ってたっけ?
君、友達いなかったの?」
俺は素朴な疑問をカレンに聞いたが、質問を口に出した後で、答えにくい質問だったことに気づいて口を閉じた。
「……ゴメン、やっぱ今の無しで……」
「いいよ、事実だし。私は好きで友達作ってこなかったしさ」
「……好きで? 嘘だろ?」
「……ホントだもん。街の方にいるのは父様みたいなつまらない連中だし、この村の奴らはあっちから遠ざかっていった。……私にボロ負けしたからって、勝手に逃げて……」
「………………」
「……だから、あんたが私相手に逃げなかった時、私ちょっと嬉しかったんだ。私が見たことない、これまでとは違う人間……あんたとなら、友達になりたいって思ったの」
カレンは満面の笑みを見せてそう言う。
カレンにとっての俺は、これまで会ってきた退屈な相手とは違う存在に見えたらしい。
だから、俺に友達になってくれって言ってきたのかもな。
「……うん。それじゃあ俺も、君の友達になるよ」
「……そっか、ありがと。……それじゃあ……」
カレンは1度地面に捨てた木剣を拾い直すと、俺に向かって突き出してきた。
「……友達として、明日からも私に付き合ってくれるよね?」
「……うん。明日こそは君に勝ってやる!」
それからしばらく、俺は毎日のようにカレンとともに爺さんの稽古を受けた。
いつか必ず、カレンに勝ってみせる。ただその一心のみで。
まあ、結果から言えば今に至るまで俺はカレンに勝てていないわけだが、今こうして冒険者になれたのも、この頃の下積みあってこそだと思うよ。
「……私は、父様に敷かれた道の通りの人生を進むつもりはないよ。昔のお爺ちゃんみたいな、強い冒険者になるんだから」
「……俺は、死んだ父さんみたいな冒険者になるのが夢だ。他人を守って死んだ父さんの生き様は立派なものだったから……俺も、いつかはそうなりたい」
「……じゃあ、2人で冒険者になろうか。強くて立派な、みんなが憧れる冒険者に!」
「……ああ、なろう。2人で!」
いつしか俺達は、2人で将来は冒険者になることを誓い合っていた。
……でもこの時の俺は、まだカレンの抱えている事情を全然把握していなかったんだ。




