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昔話のはじまりはじまり

「それじゃあマティアス、アンナちゃんのことはよろしくね」


「ああ、責任持って1人前に育て上げるよ」


「カレンさん! また会いましょうね!」


 昼過ぎになってから、マティアスとアンナ、そしてアンナの親友であるミーナは、カレン達に別れを告げてその場から去っていった。


「……なんか、今でも信じられませんね。私、本当にあのカレンさんと……」


「ホント、よくあんなに喋れたよね、アンナは。私なんてガチガチになって一言も喋れなかったのに……」


「緊張しいなのはミーナの欠点だからねぇ。あんたはリーネさんに憧れてたんならもうちょっと喋ればよかったのに」


「憧れっていってもアンナみたいな狂信的なやつじゃなかったからなあ。私はあれで満足だよ」


「狂信的て……言い方悪いなあ……」


「でも、カレンのヤツとあそこまで仲良くなれるなんてな。あいつはそれなりに難しいヤツなんだが、こんなに速く打ち解けられるとは」


 アンナとミーナの会話の中に、マティアスも入ってきた。

 人見知りのミーナは急に黙ってしまったが、アンナは変わらない調子でマティアスとも話しはじめる。


「難しい人……なんですか? 確かにちょっと、見た目よりも弱い部分はありそうでしたけど……」


「あいつは、本当に自分と対等だと思ったヤツにしか心は開かないからな。君みたいにカレンに憧れて弟子入りを希望する後輩もそこそこいたんだけど、あいつは全員追い返したんだ。もしかしたら君も、カレンに弟子入り希望してたら追い返されたかもな」


「対等……ですか」


 対等という言葉は、アンナに対してもカレンが言っていた言葉。

 憧れ故の苦しみを共有出来るから、2人は対等だと。


(……マティアスさんに、カレンさんは憧れている。

私はカレンさんの力になるって約束したけど、まだこの人のどこにカレンさんが憧れたのか、何も分からない)


「……あの、マティアスさん。私、聞きたいことがあるんですけど……」


「……なんだい?」


「……昔の、カレンさんのこと……カレンさんやマティアスさんの、昔のお話です。私、皆さんのことをもっと知りたいなと思って……図々しいかもしれませんが……」


「……構わないよ。君は俺の弟子で、カレンの友達だからね。俺達の昔話を聞く権利はあるさ」


 マティアスは、あっさりカレンの頼みを聞き入れた。

 その時、ちょうどマティアスの自宅近くまで来ていたので、マティアスはそこで腰を下ろして昔話をすることにした。


「まずは何から話そうか……カレンの話なら、取り敢えずは10年前からになるかな?」

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