第5話:ふたりの同棲生活?
桜子は、撮影現場に克二がいたのにはおどろいた。
知らない人といっしょよりも、克二だったので、安心した桜子だった。
タクシーから降りようとした桜子はよろけてしまったが克二にたすけられた。
「だいじょうぶですか。桜子さん」
「ありがとう、克二くん……」
「桜子さんはかわいいですね」
「かわいいって……。克二くん、ぼくは男だよ」
「ゴメンゴメン。だっておれのまわりに、桜子さんみたいなひといないから」
ころびようとした桜子をたすけた克二は、桜子の手をつかんだ。
桜子の手をつないだ克二は撮影場所にむたった。
「ち、ちょっと克二くん、手をはなして。はずかしいから……」
「はずかしくないよ。それに場所がわからないよね。そうですねマネージャーさん」
「そうですね。私もここがはじめてだから」
撮影場所にはいっていく桜子たち。
克二は、高校生ながら大人っぽくて落ちついていたので、年下の克二がたのもしくみえた桜子だった。
「うらやましいなぁ……」
「なぜですか」
おもわず口をだした桜子の言葉に、克二はきいた。
「克二くんは大人っぽいから。それにひきかえぼくなんか……」
「たしかに桜子さんは大人っぽくないですね。雰囲気が女性っぽいですね」
「なんかけなされてる気がするんだけど……」
「そうでなくて。まもってあげたいというか、桜子見てると庇護欲がはたらくんですね」
マネージャーによると撮影のコンセプトは、恋人たちの夜というものだった。
桜子は克二の恋人役で、女性役だった。
スタイリストが桜子に用意した服は清楚で、はじめてデートをする女性というコンセプトだった。
克二の服は、背広がきれいにきまって落ちついていたから、高校生には見えなかった。
「これから撮影はじめるから。ふたりは恋人同士という設定だから」
カメラマンがいったので撮影がはじまった。
「桜子さんがんばりましょう」
「はい……」
桜子は克二を信頼していていただろうか。
克二のリードのおかげで撮影は楽しくできた。
実際は、桜子が克二より年上だが、なぜか年下の克二にたよってしまう桜子だった。
「あのふたり、なんだかいいわねぇ」
クライアントが桜子のマネージャーにいった。
「とくにあの娘。ホントに男の子なの」
「そうなのでして……。事務所もおどろきました」
「もっとみがけば美しくなるわ」
「でも、桜子くんは男ですから……」
「そんなの男も女も関係ないわ」
クライアントとマネージャーがしゃべっているころ、桜子たちは休憩にはいっていて克二とはなしていた。
「桜子さんはひとり暮らしでしょう。夕食とかはなに食べているのです」
「スーパーとかで買い物して料理してるよ」
「すごいですね」
「すごくないよ。外食だとお金がかかるからね。克二くんもお母さんがつくっているでしょう」
「いやぁ、じつはおれ、コンビニの弁当」
「克二くんのお母さんはいないの」
「父親がヨーロッパで海外赴任で、母親もついていったのです」
「そうなんだ……」
「それに姉貴がいるけど、姉貴は彼氏の家へいったきりもどってないんだ」
「ほとんどひとり暮らしなんだ」
「まあね」
休憩もおわり、撮影が再開し、順調よくすんだ。
撮影がおわり、桜子は自分の服に着がえて、マネージャーと別れて帰ろうとしたとき、克二に声をかけられた。
「桜子さんは料理とかできるのでしたね」
「まあ一応だけど」
「相談なんだけど、おれの家に住まない」
「でも迷惑でしょう」
「迷惑だなんてとんでもない。正直、コンビニの弁当やファミレスの料理にあきてきたんだ。それに桜子さんの家賃が、大学の学費につかえるよね」
「それはそうだけども」
「じゃあ、おれの家に住んでくれるよね」
「そのかわり、なにかするんだよね」
「朝と晩の食事のしたくや洗たくをしてくればいいだけだから」
「それぐらいだったらいいよ」
「ありがとう桜子さん。さっそくなんだけど、晩ごはんつくってほしいんだけど……」
克二は照れくさそうに桜子にいった。
一週間後、桜子は克二の家にひっこした。
桜子は、克二のために朝、夕のごはんや、克二の高校での弁当をつくり、家のそうじや洗たくをした。
克二も、高校の勉強がわからないところを桜子に教えてもらったりしていて、桜子と克二はなかよく暮らしていた。
それはまるで新婚生活みたいだった。