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フェンリルの挽歌~狼はそれでも狩りがしたい~  作者: 火魔人隊隊長
帝都騒乱狂騒曲
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14章 エピローグ

前回:――副題もヤリキッタ……?ちょっと待って、幾ら何でも……おい、こら!作者!――

「さあ、食え!天上天下唯一無二の究極のステーキ!」

「ただのにくじゃーん」

 俺が焼いた肉に首を傾げる子供。全く以ってこの肉の意味が全く解っていないらしい。究極の至宝だぞ?2度と食えないかもしれないんだぞ?


 今ここには、家を壊されたなどを理由として、非難している者達が集まっている。この場に居る者の食事を賄うのが、今の俺のする仕事だ。住民達は最初は恐る恐ると言った感じだったが、ここ数日は慣れて来たのか、随分ラフな態度で接してくる者も居る。主に子供だが。


「も……申し訳御座いません、後で言い聞かせますので!」

 何やら親が出てきて頭下げ始めた。子供が言っている事はある意味間違っていないのだが、そんなに怯える事だろうか?

「構わないさ……だが覚えておけ!肉は肉だが、究極の魔獣の、ザブトン肉だ!……カバにザブトン、あるのか……?」

 自分で言っておいてなんだが、なんか違う。

――そりゃ、色々ね……?――

 イフリータさん、なんかお疲れ?まあ、色々忙しかったしね。


「ヴァン、肉に座布団って……」

「あるけど、レア部位なんて呼ばれるから、お前じゃなあ……焼肉好きとかなら、絶対知っているはずなんだが」

 否定しようとしたっぽいユウタは、被せ気味に考えを否定され、呆然としている。そのつもりはあまり無かったのだが。サーロインとか有名部位しか知らないだろうが、ランプとかあまり出回らない部位も、牛にはあるんだ。他の動物も同じ。機会が少ないだけだ。ザブトンはそのまま、胸の辺りにある座布団くらいの大きさの部位。無知の知ったかぶりユウタじゃ、分かるまい。

 ……バハムートだったらザブトンじゃないな。何しろ規模がデカすぎる。


「うん……バハムートのこの部位はサイズ的に、スタジアムって呼ぼう。そうしよう」

「なんでだよ……うまいからどうでもいいけど」

 理解していなかった子供も、いつの間にかステーキを食いながら首を傾げている。でも、デカすぎるんだ。別にそれでいいだろう。


 現在、崩壊した帝都にて滞在中。滞在先は俺の希望で、皇帝の城・前庭。

 レジスタンスリーダー・ケイル・ミラーは、一度は俺の提案を断って自分の屋敷へと言い出したが、俺が万一の為に巨大化……と言えばすぐに掌を返した。

 やっぱり、枕が大事らしい。

――枕じゃなくて、住処でしょ……――

 イフリータさん、あれは嘘であっても、ジョークなんだ。ユルシタマヘ。


 ともあれ、戦後復興作業の手伝いを俺達はしている。全てでは無いが、自分達で仕掛けた事の始末なのだから仕方ない。巨大化した俺のチカラを理解して、帝国軍も反抗する気を無くしている。街を飲み込んだバハムートが天空を舞うんだ。そりゃそうだろう。やろうとすれば俺も街くらい軽く飲み込める。不味いからやらんけど。

 それに、瓦礫になった城の一部に飾った、バハムートの頭の骨がいい具合に威嚇してくれている。後から来たらしい帝国軍の兵団も全て、街の状況と崩壊した城とデカスギル頭蓋骨を前に、戦意を無くしたようだった。

 尚、前庭部分以外には避難できる場所が、この街には殆ど無い。どうにか避難できそうな場所に行っても、食材が足りなくなりがちだから、避難民のほぼ全てはこちらに来ている。街にまだ住める奴らも、賄いを貰いに来るほどだ。俺の手持ちの食材と従軍商人に特急で運ばせている食材があるからだ。これは結構大きい。


「……ヴァン、こんな感じでどうかな……?」

「アン……充分じゃないか?個人的にはもう少し塩気を出した方が旨味が出る気がするけど、あまり塩辛くてもしょうがないしな。子供やお年寄りには、ちょうどいいくらいだろ。好みで塩振らせるか」

 アリスが持ってきた出汁を味見しただけなのだが、俺の意見に満足そうな顔を見せ、自分の持ち場に帰っていく。彼女は寸胴を複数作り、そこでスープを煮込んでいる。スコル達が世界樹の森や湿地を駆け回って、狩りと採取をして、ここに食材を持ってくる。その獲物と野菜、バハムートの肉と骨から取ったスープだ。


 自発光するスープを混ぜるアリスは、ちょっと眩しそうに目を細めている。なるほど、流石バハムート。スープにしたらこんな風になるのか。冗談抜きの黄金スープとは。

――料理する意味分からないけどね……――

 フェンリルの一族は、以下略。


 俺が料理しているのも、当然ながらバハムート肉。流石、究極の肉。塩をまぶして時間の魔術を掛け、そこそこに熟成させた旨味を持つハムを造ったところ、冗談抜きで黄金の輝きを放っていた。一部の兵は、ちょっと眩しくて目を窄めた程だ。夜も照明にできそうな程だ。どうなってるんだ、これ?成分を計測しても、毒素などは全く無かったし、成分比率では普通の肉だったのに?


 だが、これも昔話通りだ。黄金の輝きを湛えた干し肉で、一口食べただけで美味さのあまり、心臓発作で死ぬ者も居たとか。死なない奴も放心しすぎて、生きているのかどうか、周囲は騒然としたそうだ。これが事実なのだから困りものだ。心臓発作起こすなよ、国王。

 まあつまり、この肉こそ究極の至宝だ。異論は認めない。毒素もなく、一口食べればあまりに旨すぎて、ほぼ確実に放心した上に体が弛緩する。数名虚脱状態になる程だ。旨さが怖すぎる領域。異常だ。


 流石伝説の肉、バハムートだ。最強。……地面食ってたけど。実力も微妙だったけど。


 そして、その肉と皮を手土産に、エリナさんとヴィンセントが、ケイル・ミラーを連れて一度王国へと戻り、停戦協定を結ぶ事となった。政治の事は詳しくないので、あの2人に任せるのがいいだろう。約束通りなら、未来永劫戦争は無くなる……はず。まあ、この2国間での話だけど。それに、無理だろうけど。


 他にも手土産がある。魔王の生首が、半分ほど削れた状態で見つかったのだ。色々グロ状態なので、要所要所は隠してあるのだが、間違いなく魔王だと確認できるだけの形状を留めていた。


 しかし、それだけの条件でもエリナさんは、すぐに終戦は無理だと考えているらしい。それだけ魔国は厄介だと言う事だ。


 それ以外の面子はこの地の救助活動、及び再建の手伝いをしている。炊き出しや避難所の建設が主だ。俺達が行っていた作戦の影響もあって、帝都の住人の8割が街の外へ避難しており、バハムートと作戦の被害者は多くなかったようだ。

 俺の魔術で街を再建、という案も出たのだが、大地が色々あれだし、街の事情とかも無視できないし、再建は自分達でやりたいしで、ケイル達に却下された。まあ、何でもやってもらえればいい訳じゃない。結果俺が魔術で建てたのは、風呂とか雨風を凌ぐコテージとか、そんな程度だ。エリナさんも幾らかやったし、充分っちゃ充分か。


「旦那……クリフ、見つかったで。瓦礫に隠されとったんやが……」

 バートがこちらの戦死者を布に包んで、前庭へと連れてきた。その後ろにはマリアとリリー。アーロンは腕と足を怪我した為、領へと帰した。

 俺の強制回復神術は、どうやら完全な回復が出来ないらしく、下手に回復させれば神経が繋がらなかったりするらしい。エリナさん経由で、手を蹴った巨人のその後を聞いた。少し麻痺があるらしい。だからアーロンには掛けない事にしたのだ。


「……ああ。クリフには悪いことしたな……戦闘も出来ないのに……」

 それでも立候補し、戦場をここまで駆け抜け、仲間の為に命を犠牲にした。自分の大事な存在でもないのに。しかし……

――自分がやっていた事と、変わらないでしょぉ……――

 同じようで全く違う。命を意味無く捨てたい訳でも、捨ててほしい訳でもないのだから。必死になったとしても、命を落とす必要がない。決死でも、捨てる必要がない。


 それでも、彼は……

「この人……アタシらの為に、アンタの為にって……なのに……」

 守銭奴だった奴が、全く関係のない存在だったはずの彼の為に、涙を流している。彼女達も運悪く、一騎当千と呼べる兵と出会ってしまった。機転を利かせて奇襲をかけ打倒したとしても、自分を助けて奪われた彼の存在を、無下に扱えないのだろう。


 それは俺も同じだ。だからこそ、

「今代が神 焔の銀狼 ヴァン・カ・フェンリルは命ず」

 俺は彼の為に歌う。


 詠唱をする毎に輝く魔方陣に、周囲は驚き声を上げるが、瞬く間にそれらは全て掻き消されていく。


「神術式 創生結界――聖炎・挽歌――」

 傷だらけになっているクリフトンの体に、白き焔の結界が灯り、世界から切り離される。


「受けるべき優しさを受けられず、知るべき温かさを得られなかったお前に、良い来世がある事を願う」

 胸に手を当て、一礼。まあ、とりあえずこうすれば、形にはなるか?

――やっている事と本心の違い……――

 はて、精霊さんは何か疑問なのだろうか?嘘ではないんだよ、一応?


 そんな俺の行動に、マリアとリリーも、漸く一区切りついたらしい。耐えていた感情が一気に溢れ、涙も声も止まらなくなった。地下水道で感じたアリスの悲しみや、村人を救おうとしたユウタにも通じる感情では無いだろうか?親友を失って間もないから、余計に堪えるだろう。


「旦那……クリフに代わって……」

「感謝とかはいいから。クリフはもう語れない。戻ったら直ぐに弔ってやろう」

「……ありがとな、旦那」

 当たり前の事を言っただけなのだが、バートも泣き始めた。まあ、戦場に来てからずっと一緒に居たし、通じる部分が多かったから、彼もまた辛かったのだろう。


「バート、ここから先はアーロンもいなくなる。お前もリタイア……」

「せんで!言うたやないか、最後までついたったる!どうせ後方でゴーレム操るだけなんや!ワイが居るのと居らんのとでは、戦い方が変わるやろ!」

 撤退の意思を再確認してみれば、どれだけ悲しくても彼は進む気らしい。彼もまた、戦士としての心構えができたのだろう。


 対して、

「ゴメン……アタシらは厳しいかもしれない……」

 声を出せないリリーの肩に手を置くマリア。そもそもの経験も少なく、実践能力も高く無い2人だ。傭兵になると言う事は戦争から離れられなくなるが、前線である必要もない。


「ああ、2人は前線から離れてもいい。作戦次第では手を借りるだろうけど、ここから先は無理するな」

――最初からそのつもりだったくせにぃ――

 そうだけど、当人達の気持ちもあるから。受け取り方が全く違う。


「とにかく、仕事ご苦労さん。飯用意してあるけど、食えそうか?」

 まかないとして用意していたパスタを用意して、3人の前に出す。

「ボロネーゼ・タリアッテッレ 叩き納豆風味だ」

「いや、パスタに何入れてるんだよう!それに納豆があるってなんだよ、それえ!」

――ユーシャ復活?しなくていいのにぃ――

 すぐに潰れる。気にするな。この間の自分のした事から、何とかして逃げたいんだろ。


「めっちゃ合うんだよ、ミートソースと納豆。それと、これはググル。納豆とほぼ同じ製法の、別の豆の発酵食品。帝都周辺の特産品だ」

「検索するような名前だな!」

「だがそういう名前なんだから仕方ないだろ。お前も食ってみればいい、ミート納豆ソース」

「水戸納豆みたいな……オヤジギャグかよう!なんだよそ……」

 うるさいから、問答無用で口にパスタを突っ込む。案外粘ったが、口に突っ込まれた料理に、

「……美味いけど……ええー……」

 複雑そうな顔をして黙ってしまう。意外な組み合わせで美味いのだから、混乱しているんだろう。俺も最初はそうだった。トマト多めのミートソースだと、結構合うんだけど。

――強硬手段だねぇ、いつもと違って――

 え、いつも強硬手段だと思ったけど……?


 涙を湛えながら、料理を口にするバート達3人。炊き出しを手伝うアリスとユウタ。復興に参加しているナイン達レジスタンスメンバーも、そう時間かからずここへ来るだろう。帝国兵もまた、同じだ。その分の食事も準備しなければならない。

 復興に参加する帝国兵は、ケイル率いるレジスタンスメンバーに見張られている。まさか世界最高のバハムートを狩り獲った俺に喧嘩を売る馬鹿もいないだろうと思うレジスタンスメンバーもいたのだが、その考えを初日にあっさり裏切る馬鹿もいたからだ。そいつはどうやら、バハムート肉の旨さを理解できない奴だったらしい。直後コンガリ肉になるよう、火でじっくり炙ってやった。脂肪だらけで不味そうだから、食わなかったが。


 尚、世界樹の森はどういう訳か、あっという間に動物が近寄ってきているらしい。まだ生態系が出来上がっていないが、鳥やネズミ、タヌキなどは既に入り込んでいるそうだ。

 そう言えばここ数日タヌキ肉が増えてきた。今度タヌキのカレーでも作ろうか?臭いから、それ以外出来そうにない。癖とか言うレベルじゃない。まあ、食える物が少ない状況なら、何でも食うしかないが。


「……ヴァン、只今戻った。こちらは……」

 料理の続きをしていれば、ヴィンセント達が戻ってきた。エリナさんの手によって走りやすくなった幌馬車を挽いて、超特急でアーサーが駆けて行った結果、思っていたより遥かに速く戻って来たらしい。3週間かかると思われる道のりだが、1週間かかっていない。


「クリフが見つかってね……状態もあまりいいものじゃないだろうが、世界から切り離した。あいつらは、今はそっとしておいてくれ」

「そうか……ところで、王から書簡を預かった。エリナ殿が持っているから、後で話してくれないだろうか」

「……ああ、分かった」

 こちらの状況を見て、大方察していたらしいヴィンセントは、あまり晴れない顔をしている。だが、顔が晴れない理由は、他にもありそうだ。

――ちょっと酔っているらしいねぇ――

 うん……それと多分、それ以外にもある。


――――――――――――――――――――――――


「結論を言えば、戦争は終わらないそうだ。まあ、エリナさんの予想通りなんだけどね」

「なるほど……しかし、なぜそうなったのでしょうか、旦那さま?」


 その日の夜、白い空間……もといクリスタルの中。


「なぜそうなったのかは、お前にも言いたいんだけどな?3日前にも言ったけどさ」

「それはわたくしにも分かりません。分かるのはミーシャさんと同じことだけですね」

「みゅう……にゃん度言っても分かってくれにゃいんだよ?」

「にゃん度って何回なんだろうな……クリフ、分かるか?」


 白い空間にクリフ、参戦。しなくていいんだが、ミーシャは話し相手が出来て喜んでいる。全く喜ばしい話じゃないんだが、なんで喜ぶ、クソネコ?


 全部を見ているのかと思えばこの2人、なぜか寝ていることもあるし、談笑していて全く聞いていないこともある。記憶のオリというか、カスミというか、そんなあやふやな彼らも、多少疲れはあるらしい。食事とかは必要ないようだが。ここにお菓子でもあれば、むさぼってこっちの光景を見ていそうだ。アクションカメラか、俺は?

 クリフは俺に対面するように座り、ミーシャは胡坐をかいている俺に覆いかぶさっている。……猫は膝に乗るものと勝手に思っていたが、違うようだ。


「現状分かった事と言えば、神格を起こしてから、関係の深い人物の記憶をコピーするような力って事だな。覚醒したのはミーシャが死んだ時。在って意味あるとは思えない能力だ、これ」

「……条件的には、そうなのかもしれないですね。一族の方もいらっしゃらないのに、わたくしが現れるって事なら」

「一族さんも来てくれればよかったんだよ……そしたら……」

「煩そうだな……」

 想像して、ミーシャも苦笑いする。あの一族なんだ、しょうがない。俺達姉弟がそのまま数百人いたらと考えれば、静かになる事が無いのは分かるだろう。エンドレス忘年会状態だ。


「で、戦争の事についてだ。サーシャが散々相手していた黒幕が、まだ残っている。それが大元の理由。魔王の替え玉とかを使って、戦争をそのまま継続する可能性が高いそうだ」

 無理に話を戻したら、ミーシャもクリフも、考え込む仕草をする。だが、クソネコは考えを纏めるのは無理だろう。理解できているかも怪しい。思考は友達2人に任せていたっぽいからな、こいつ。

「ありそうな話ですね……アーロンさんも、影武者は面倒だって呟いていたこともありましたし。今回の相手が、替え玉と言う可能性は?」

「ない。魔王の戦い方は魔国内では有名だ。その戦い方はそうそう真似できる物じゃない。魔王の血筋にしか受け継がれないんだそうだ」


 影武者だったら、ある程度はあっても良いかもしれないが、しかしそうだとした場合、同じ種族を探し、その中から同じ背格好の人物を選び出す必要がある。

 幻術などで背格好をだましたところでどうにかできる訳じゃないし、術者か対象が死んだら幻術は解ける。顔を成形すると言うのもあまり考えられない。そんな技術はないし、出来たとしても縫合の跡などが多少なり存在するのだ。

 僅かに可能性があるのは血族だけだが、その血筋がほぼいない。居ても確認が取れている。隠し子の存在も全く無いと考えて言いらしい。それが事実なら、無理だろう。


「それでは……」

「ああ、ここから王国は魔国を相手取る必要がある。王は俺達にもどうにかして参戦して欲しいそうだ。

 帝国を叩きのめして、永続停戦協定を結ぶ結果に繋げた俺達は英雄視され、戦死したお前も勇者として語られ始めているそうだ。

 ついでに貴族連中でも、獣人嫌い派に付いていたどっちつかずの日和見菌どもが、今度はこっちの味方をし始めたそうだ。クソだろ、マジで」

「ヴァンくん、そんな事言っちゃダメなんだよ」

 妙に持ち上げられ始めた俺達の事を愚痴ったら、ミーシャが俺の頭に顎を載せて窘めてきた。何だ、このトーテムポール……狼と猫って……?


「……胸の内にちょっとしこりはありますけど、でもそれを聞いて、少しすっきりしました。やっぱり、旦那さまについてきて正解だったと思います」

 それでも、クリフには朗報になったようだ。彼は晴れ晴れとした顔で微笑んだ。


――――――――――――――――――――


「……食われた……?」

 最強の魔獣・バハムートが大神の手によって料理されていると言う話を聞き、放心するバアル。


 絶対に負けるはずがないと考えていた魔獣だったのだ。彼はこれ以上ないと思っていた策が破られた事が信じられないらしい。


「ハッ……更に魔王も奴らによって……」

 調査報告を持ち帰った偵察の手によって齎された最悪の一報。奉告する兵もまた、震え、蒼褪めている。魔国の未来を恐れている事と、バアルの逆上を恐れての2つの理由がある。


 だが、

「……ああ、魔王は影武者を立ててどうにかすればいい……そんなものより……バハムートが……?」

 自身の上司に当たる人物を『そんなもの』扱いするバアル。彼は魔王を幼い頃より面倒見て、自分の傀儡として扱っていた。だからこそ、誰がどんな事を言おうと、魔王自体は彼には重要ではないのだ。


 事実魔国を牛耳っているのは、バアル自身だ。


 貧民出身の彼がこの国の重鎮にまで上り詰めても、国自体を自由には出来なかった。様々な策を弄して、人々を騙し、洗脳して、漸くもう一度戦争までに扱ぎつけたと言うのに、その策の多くが、大神と師のエリナ、そして宿敵のサーシャによって阻まれている。


 魔王が落とされ、同行していた6魔人将2名も行方知れず。残る戦力を鑑みて、王国に勝てる算段は立てられなくはないのだが、例の3人が加わる事で、前線が傾く可能性がある。


 手を抜いて、帝国と兵を削り合ってくれればと思っていたが、最早言っていられないようだ。


「僕がこの先の指揮を執る。それと、前線へ向かう兵の領を増やせ。一気に畳みかける」

「……ハッ!」

 一礼して離れる兵を眺めた後、バアルは一声深く息を吐いた。

精霊のボヤキ:

――次回、2話連続で金髪達の過去編。そこで全てが明らかに……?ナニコレ?――

 予告のカンペだって。

――要らないでしょ?最終章の話は?――

 その後でしょ?

――チッ……――

 ……そんな怒らなくても。謎っぽいの無いけど、勝手にやらせとけばいいって。

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