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フェンリルの挽歌~狼はそれでも狩りがしたい~  作者: 火魔人隊隊長
森の追跡者の輪舞曲
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1章 エピローグ

前回のあらすじ:ババアが熱湯コ〇ーシャル。誰得?

 昨日一日歩いて途中でテントを張って休憩。今日、半日歩けば西の都「ノーザンハルス」につく。その道中。


「ミギャアアアア!放してええええ!」

 アタシの腕の中で未だに暴れているヴァンくん。ダッコされるのが嫌みたい。


「もぉ、なんでそんなに嫌がるのぉ?いいじゃなぁい」

 ちょっとショックだけど、あたしはふかふかの背中に顔をうずめる。ああぁぁ……しっかりと干されたお布団よりふかふか…………


「良くない!良くないっすわ、エリナさん!てか、ちょっと待って。なんか昨日より引っ張られ……なんか魔法使ってるでしょ?!」

「あ、バレた?」


 魔力で磁界を操作して、あたしの体に張り付くようにしていたのだけど。ダメだったかなぁ?ちょっとだけその説明をしたら、

「人間磁石って、なにそれ!いやだ、自分で歩くから放して!重いでしょ!」

「えええぇぇぇ?重くないよぉ。なんでそんなに嫌がるのぉ?」


 ちょっと、この辺の彼の考えは分からない。大人になりたい子供を見ている気分。いや、中身が大人だからなのかも。

「あぁ、照れてるんだぁ」

「そんなドウテイチックな意味合いじゃないんだが?」

「えぇー?」

 からかったら冷たい目で返された。


 そう言えば、裸だった時にも照れたり恥ずかしがったりといった行動はなかったかもしれない。服を着ろとは言われたけど。そういうものなのかなぁ?


「ほらー、2人とも、そろそろつくよー」

 後ろから、リサの気のない声がする。アタシがヴァンくんを構いっぱなしで拗ねてるのかもしれない。それなら、

「リサもヴァンくんを抱いてみる?ほら」

「え、ちょ……なんでえ!」


 ヴァンくんに反重力の魔法をかけて宙に浮かしてリサに放る。それをキャッチしたリサは、

「べ、別にー……したいって訳じゃー……」

 とかなんとか言いながら、彼を受け止めてしっかり抱きしめ、微笑む。あぁ、やっぱり拗ねてた。


「え、ちょっと、赤ちゃんのような抱き方はしなくてよくな……アファアアア!お腹ラメエエエ、お腹撫でるのヒャメエエエ……」

 何気なくリサがお腹をなでると、彼はぴくぴく体を震わせてる。

 なんだかんだ言って、しっぽを振ってるあたり、結構喜んでいるんじゃないかなぁ。好きなんじゃない、そういうの?


「それじゃ、スラムに行くよぉ!」

 元気よく右手を挙げて、門へ続く道から離れてく。

「アヒャアア……スラム?なんでさ?アワワワワ……」

 撫でられながらヴァンくんは質問をしてきた。だけど、彼の望みはアタシ達だけじゃ叶えられない。


「だからぁ、この先にヴァンくんのお願い叶えてくれる、協力者がいるのぉ。ヒョウ爺っていう、裏の世界にも顔が利く大物ぉ」

「フィクサーかよ!大丈夫なのか、そいつ!」

 何か心配事でもあるのかなぁ。実際、裏の世界って言っても、ただ暴れん坊なだけでは上には上っていけないんだけど。


「実際『ヤクザ』なんかも上の人は案外、普通の人以上に話ができるってのは分かるけど、見返りも結構厳しいもんじゃない?」

「やくざーって言うのは何か知らないけどー、ヒョウ爺は多分そんな事しないよー」

 何か心配をしているヴァンくんに、リサは答えながらお腹に顔をうずめた。ハマってきたらしい。わかる。おなかの毛はフワフワしているから。


「やめてくださいよしてくださいおねがいしますなんでもしますから何でもするとは言ってない!」

 ヴァンくん何か言ってるけど、リサは構わず続けてる。そんな2人を置いといてアタシはヒョウ爺に取次ぎをした。彼の住処はもう目の前。


――――――――――――――――――――――――――――――


「思った以上に簡単に進んだね。ていうか、交渉の対価が『週に1回のお使い』って……」

 ヴァンくんはアタシの腕の中で、首を傾げて腕を組んでる。何か思うところでもあるのかもしれない。


「なぁに、不服?結構悪くない条件だけど……」

「まあ、金貨三枚は確保していたし、銀貨とかは手元にないけど何とかなるでしょ。不服って程じゃないよ。ただ、釣り合わないと思うけど」

 アタシの質問に釈然としない答え。


「金貨って、どこから来たのー?」

「ゴブリン狩りをしてね。奴ら、たまにだけど金の入った袋持っていたから。パンとかはあまり持っていこうとしてなかったけど、行商人とか誰か襲って奪ってたんだろ」

 ……ゴブリンがお金をくすねるって言うのは、初耳。多分あそこにいたオーガがテイムしていたんだろうから、アイツの仕業なんだろうけど……何でこんなやり方をしたんだろう?


 とにかく、目的の場所に着いた。随分崩れた廃寺院の近く、スラムの一角で、目的の子を見つける。

「まず、1人目。廃寺院に住んでる子猫だ」

 彼の目的、アタシ達との契約の内容が、『スラムに居る獣人の子供の保護と安全の保障』だった。

 その子たちが襲われてる時に助けたりしていたみたい。森でとっていた獲物も、保存食にしたり料理して分けていたとか。お礼に、花やガラクタを貰ったみたい。……嬉しいかなぁ?


「そもそも、身内ならともかく、多数を捨てて1を救うって方向は間違いだ。エゴの塊でしかない。いくら愛情がそこにあっても、正しさはそこにない。むしろ悪意だ。

 俺より先に、あの子たちだ」


 彼の言う言葉もまなざしも、暗く冷たい。多分だけど、彼は自分が死んでも、あの子たちが生きられれば、納得できるんだろう。アタシ達には、納得できないけど。


「でもー……」

「実際、今回の事で、全員が安全なところに行けるなら、諸手を挙げて喜んでもいいんじゃない?これから起きる面倒な事も責任もって請け負っていかないといけないけど」


 確かに、彼は正しいとも言えることを、考えてはいる。いくらかの疑問もあるけど。彼は、それを受け入れるつもりなのかも知れない。


「本当に、これでよかったの?」

 彼は直接、その子達と会うことを拒絶した。


 未だ彼が『人狼』として狙われる位置にあることを懸念して、関係していると思わせないように。自分と同じように命が狙われるのを避けるために。誰か見てるかもしれないから、と言って。


「いいんだよ、これで……」

 そう言いながら、彼は手を振った。目的の子の方を見ると、いつの間にか、その子の隣に並人の子供が寄ってきていた。手を繋いでいる。


「次の子の所に行こうかー」

 複雑な気持ちでリサが切り出し、アタシはそれに従って歩き出す。きっとあの子たちは大丈夫。


「これが全部終わったら、ヴァンくんは冒険者の弟子になるんだからね。覚悟はいいよね?」

「当たり前だ。そのつもりでここにいるんだから。よろしく頼むよ?」

 崩れた家が並ぶスラムを歩く。

「だいじょうぶー。ちゃんと幸せにしてあげるからー」

「そういうことじゃないでしょ、本当に大丈夫かあ?」


 これまでは2人だった。これからは、3人で生活していくことになる。騒がしくて、楽しそう。


「あぁ、そうだ。ヴァンくん」

「何?」

 彼に言っておかなければいけないことがあった。必要なことだし。


「当面の間、狩り禁止だから」

「…………はああ!? な ん で じゃあああああ!」


 彼の声に赤い暖かな光が励ますように、彼の周りを飛んでいる。今空を包んでいる夕日のようなその光は、見ていて心地いい。


 先を進んでいたリサが、西の空を見上げた。夕日がもたらす明かりが、スラムに居るアタシ達を包む。

「夕日がきれいねー。明日は晴れるかなー?」

「晴れるといいねぇ。いや、晴れるでしょ。絶対」

「ちょっと、聞いてる?なんで狩り禁止なの!いやだあああ!」

 自分で狙われてるかもなんて、不安なこと言ってたのに。


 それでも彼は狩りがしたいらしい。大人ならガマンしたらいいのに。

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