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フェンリルの挽歌~狼はそれでも狩りがしたい~  作者: 火魔人隊隊長
王女護衛の夜想曲
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13話 基本になる物

前回:――釜玉うどんとカルボナーラはほぼ一緒の物?――

 王女様が食事を終えて、ワタシ達が交代で食事を取っている間も、騎士さん達はヴァンの料理を食べようとしなかった。

 今までも、ずっと自分達で用意したらしい、パンしか食べていない。しかも、黒いパン。あれって、ガリガリしていて美味しくないから、普通は水やスープでふやかして食べるのに、ずっとそのまま口に入れている。


 そして、移動を再開して半日。ここまでは何も無かった。問題は、ここからじゃないかな?何しろ騎士さん達は思っていた計画から変わって、王女様が野宿をする事になったのだから。


 通常ならそんな事にはならないはず。何しろ、王族なのだし、女性だからあんまり好まないと思う。

 それなのに、王女様は野宿をする事を、許容しているのか、あるいは望んでいるのかは分からないけど、どこか楽しそうにしている。普段はできない事だから、浮かれているのかもしれない。


「嗚呼……ヴァンさん達は、この様な環境で生活をして居るのですね……不便ではありますが、同時に感慨深くもあり、更には美しい星空が心を揺らします。

 何故、この様な素晴らしい情景を、貴族の方々は毛嫌いするのでしょうか……私には到底理解できませんね……」

「王女の感慨は理解できます。私も同じく、貴族であった頃の様々な事柄を疑問に思っております。彼らと生活を共にする事により、更に多くを学べている事を実感し、感謝すらしております。

 今迄の自分が、如何に小さく、如何に狭い世界に囚われていたのか、考えさせられます……」


 ヴァンが料理をしている横で、ヴィンセントさんと王女様は、何かを共感して語っている。ワタシには、いつもの夜空なんだけど。むしろ、街の夜空の方が、ワタシには違和感を持ってしまう。

 村では皆で生活するのが普通で、皆で分け合いながら、助け合うのが当たり前だった。誰かに頼りきりになるんじゃなくて、誰かと足並みを揃えなきゃいけない。できないと、その村で浮く事になるから、生活をするのが大変になる。

 貴族の生活は、ワタシには到底理解できない。今までも、ほとんど貴族と言う人を見る機会が無かった。

 だって、貴族はあまり外に出ないらしいから。ヴィンセントさんも、やっぱりそれを話して、何かに悩んでいた。どんな悩みなのかは、ワタシはよく解らないけど、エイダさん達は知っているかもしれない。


「さあ……料理ができるぞ。今まで、俺も作りたくてなかなかできなかった、パスタ料理の真骨頂。

 スパゲッティー、アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ!


 これぞ、パスタの基本、スパゲッティーの基本だ。しかし、やりたくても、なかなかできなかった……何しろ、スパゲッティーの硬さや味わい、太さや長さを再現するのに、苦戦したんだ。

 一番苦戦したのは、乾燥する方法だ……前世の正攻法が全く効かないんだよ。魔術で空気中の水分を奪ったところで、味が変化しやがる。陰干ししようものなら、あっさり発酵しやがった。割れたりカビたり……色々あった。作るのに、結構苦労したよ。


 このスパゲッティーこそ、俺の前世において、パスタの代名詞だった存在だ。

 それを基本に忠実に、かつ味わい深くする為に、オリーブオイルにニンニクと唐辛子……この世界で言うガーコンとトビカラを使い、香り立つようにしてから、パスタのゆで汁と出汁で乳化、その状態でベーコンとソーセージを炒めて、スパゲッティーの麺をそのソースに絡めたんだ。

 しっかり味をつける為に、充分な塩胡椒、そしてパセリの代わりのジッコ。これでほぼ、前世のアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノを再現できたはずだ。キノコ出汁を使ったから、質素ながらにも、味わい深くなっているはずだよ」


 質素な見た目の細長いパスタだけなのに、随分と語っている彼の脇で、ミーシャちゃんが食べやすそうなサラダを作っていて、シンプルな見た目の、コンソメスープを装う為に、氷の調理器具が動いている。

 出された料理を口にして、王女様は感無量といった風に空を見上げた。


「素晴らしいですわ……艶やかな料理ですが、こんなに簡素でありながら、しかし美味な物は無いかもしれないですね。毎日でも食べたいです」

「エメラルダさん、簡素な料理でも華やぐ味わいの物は、幾らでもあるさ。釜玉うどんだって、単に言えば麺に溶き卵を絡めて、少しの塩か魚醤で味をつけるだけだ。できれば出汁は欲しいけどね。

 出汁も、干しキノコ数種使うだけで深い味を出せる。焼き干しの魚でも、特徴のある味になる。手間はかかるけど、やる事はシンプルだ。

 今でこそ流通が安定していて、以前のような食が細い社会ではなくなったけど、美味しい物は昔から変わらずにある物だよ」

「……歴史ですか。因みに、全て前世の記憶と言う物ですか?この世界由来のものは?」

「前世では、シイタケの干しキノコはあったけど、それ以外は流通にはあまり多く乗らなかった。こっちは干しキノコが日常食で、10種類くらいが流通に乗っているからね。キノコ出汁は完全にこっち由来で、調理場に教えられていたよ。

 焼き干し魚のダシも、似ていて異なる。作り方が違うんだよね。でも、やはり旨味が多い。ハーブにしても、違うだろうしね。

 ただ、街の周辺の食糧事情が安定しただけだから、対外的な流通が安定して欲しい物だけどね」

「そうなんですね……ですが、流通の安定の為には、貴方達の尽力も欲しい所ですし、行商人をもう少し、後押しできるように為りたい所です。その為にも、今回の会談は外せない事柄なんですし……」


 料理から政治の話になってきた。そのまま、2人は話し込む心算なのかな?でも、王女の表情も落ち着いているように見えるし、このままこの場所で野宿をするなら、安心できるのかもしれない。

 ワタシ達は、より警戒しないといけないけど。


 その分、かなり疲れが酷くなってきた気がする。予定されていた行程を、まだ半分も終えていないし、一番大事な会談を目前にして居るのに。


――――――――――――――――――――――――――――


 王女様は、ヴァンが魔術で作った、簡易コテージで休んでいる。中には彼の作ったクッションや布団で、ベッドが作られていて、それを見た王女様は大層喜んでいた。


 ようやく食事ができる時間になって、ワタシ達は警備を交代しながら、順番に食事を口に運ぶ。彼は食べやすいように、さっき王女に出していたパスタを、イタリアンオムレツと言う物に作り直していた。

 食事を終えて、これからの話し合いの為に、荒野の開けた場所で皆が集まっている時に、気になっていた事を聞いてみた。騎士さん達はコテージの反対側の馬車にいる。話し合う気はなさそう。


「ヴァン……あまり考えたくないけど、王女様が襲われるとして、どうやったら守れると思う?」

 ワタシの言葉に、皆はぎょっとしている。それは分かるんだけど、念には念を入れたい。


「その辺りだけど、基本的には女性陣に、引き続き王女の近辺警護をしてもらうことになる。敵を王女の場所にまで向かわせない事が重要だ。俺が空中から警護しているのも、分かりやすい所にいる事で、侵入経路を抑えることが目的だ。


 それでも完全じゃない。入ってくる事が前提になるなら、侵入経路を予想しておくことが必要だな。天井裏や床下なんかがあるなら、そこも警戒対象になる。ヒトが入るのは効率的じゃないから、術式やアーティファクトでトラップを掛けるくらいだろうけどな。

 その上での実戦となれば、接近戦闘になる。しかも、狭い室内だ。大振りの武器は優位に立てない。剣技も突きを意識する事になる。魔術師であれば結界術式などに頼る事になるけど、アリスはどれだけ結界が使える?」


 大体皆が考えているだろう所を、ヴァンも予想していたけど、ワタシの結界の事を気にしているみたい。前にも話したけど、改めて意識しているのかな?


「よくある、流体結界と硬質結界の2つだよ……ヴァンがローブに掛けていた物より、かなり弱くなっちゃうよね……」


 結界にも種類があって、上位の結界技術は仕組みが複雑に出来上がっている。下位は簡単な物で、障壁のような単純にマナを硬質化させるものから、属性を与えて硬さや攻撃力を与えるようにするものがある。中位は、下位を発展させたもの。

 そして、一般的に言われる結界と言うと、大体は上位術式で、中位以下の物は個別の名前で呼ばれる。守れる力が、全然違うから。

 ワタシはどうにかして、上位結界の2つを覚えただけ。


「ああ……3重にはできないか。マナコートが無いなら、対魔術をあまり考えなければ充分だけど、魔法剣みたいな攻撃には弱くなるしな。

 エルフの術式だけど、ちょっと試してみるか?俺が随分前から使っていた、単一結界式の物なんだけど、究極的な障壁と言った感じの物だ」


 なんか、極端な言い方をしている。そんなに強い魔術、存在するのかな?あるとしても、出来るか分からないけど。


「究極的な障壁って何や、それ。大層な言い方しとるけど、あまり強くなさそうやないか?」

「確か、障壁って剣を思いっきり突き刺したら、割れるんだよな?魔力で変わるから、エリナさんはほとんど誰も割れないくらいだったけど」


 リリーさんとユータが気になったのか、割り込んできた。確かに障壁だったら、魔術師では無くても使える事が多い守りの魔法。それなら、皆が使えるようになるかもしれない。


「大袈裟な言い方をしただけだ。ユウタは知っているだろ?――プリズムシェル。正確な名称は、積層性格子力結合式多面充填型硬式結界だ」

「プリズムって……光ってる亀の甲羅か?あれが……せきそう?何とかって言うのは?」

 彼は見ているけど、理解は全くしていないのかな?単純な想像じゃ、微粒子構成を理解できる訳が無いけど、今の積層性格子力結合と言う事なら……


「それってつまり、マナを微小で物凄く硬い多面体にして、積み重ねたような物を作るっていう事なの?確かに硬くて強そうにも思えるけど、そんなに小さいマナのコントロールをするのって、麦つぶに羽ペンで、上位術式に使われる魔方陣を正確に書き上げるような、精密コントロールが必要でしょ?」

「ええー……アリス、さっきの言葉だけで分かるのかよう……」


 そういう説明を、簡単にしていたじゃない?積層性格子力結合式多面充填型って言うなら、だいたいこういう事だと思うけど、違うのかな?


「ああ、うん。そのコントロールをするのが大変なのは間違いないけどさ、その先にある積層部がバランスを崩すと、どれだけ堅い仕組みができても直ぐ崩れるんだ」

「って、合ってるのかよ!嘘だろお前らなんなんだよう!」

「馬鹿め、素人がプログラム技術や粒子力学なんかを、厳密かつ正確に知っている訳が無いじゃないか。その素人が、専門の学者同士の話に、割り込む事ができると思うか?無理なんだよ、お前が理解するのは。


 それはとにかくとして、その精密コントロールと積層、そして受けた力を分散させる構造、こう言った物を、粒子構成から理解できないといけないからね。当然、その時の境界を構成する粒子をどんな形にするのかだけど、1つは5角12面体でもう1つは切頂捻れ双角錐だ。

 それらを複雑に絡めて、ハニカム構造になる粒子構成をしている仮想物質を生成して、更にドーム状のテントのようにしながらハニカム構造を作りつつ、その間に膜状にした粒子による盾を形成するんだ。

 ユウタが持っている盾を、何枚も棒で固定して、壊れないように構成している、と言うのが、近い構造になるのかな?詳細は、この資料にある」


 ヴァンが空間収納(ストレージ)から取り出した、分厚いパピルスの束。そんな物、持っていたんだ。


「どうしよう……ヴァンの言ってたことぼくは全然わからないけど……」

 ワタシは少し解ったけど、魔術の勉強をしていないと、絶対分る筈がない。ハニカム構造とか、その辺りがワタシには解らないけど。


「つまり……小さい粒子からマナで、精密な計算を重ねて作り上げる物なの?本当にそれで、出来上がるのかな……」

「悪いんやけど、ウチらにももっと解りやすく説明してくれへんか?」

「ああ、障壁はマナを固めて作る壁って、聞いた事はあるか?あれは、ただ砂粒みたいなものが並んでいるだけなんだけど、この結界はそれを複雑に構成して、力を流せる構造を持った物質を構成するんだ。

 普通の障壁よりもマナの構成からしたら薄いんだけど、その空間が空く分、力を流せるような構造になっている。その構成をするのが、ハニカム構造。ハチの巣の形だな。

 そして、そのハニカム構造を持った粒子を更に構成してドーム状にして、盾の枠組みを作り、間に同じ物質を利用した障壁を、数枚重ねて作っている。

 実際にやると、こうなる」


 ヴァンがいつの間にか、光輝きながら連結されている盾の球状結界に、守られていた。触ってみると、マナの濃度は確かに、障壁と変わらない気がする。

 ただ、掛かっている魔力の圧は、通常の3倍くらいかな?触ってみると、確かに硬い。


「うーん……ちょっと試してみても良いかな?どのくらいまで耐えられるの?」

 実際に使えるようになったとして、その効果を試してみないと、どのくらいまで耐えられるのかを確認したい。


「え?試すって、攻撃するの?ダメだろそれはぼくも攻撃した事あるけどやるものじゃないだろそもそもこれって」

「以下略。そして、現状のアリスの攻撃で、俺のプリズムシェルを壊せる技があるとは思えない。最大出力でやってみなよ」

「ええええ!」


 ヴァンはワタシを馬鹿にしているんじゃないと思うけど、ちょっと今のは癪に障る。ヴァンがやっていいって言うなら、本気でやってみよう。

 彼は攻撃を受ける為に、みんなから離れる。彼の動きに合わせて、結界も動いている。しかも、結界は歪むと壊れる事が多いのに、足元の岩にぶつかっても、結界は自然と撓んで壊れずにいる。


 小手先に、ビンを使ったスプラッシュニードルとスプラッシュランスを打ち込んでみる。これくらいじゃ、傷はつかないのは、予想していた。その後に、石礫を使ったストーンバレット。

 媒介になる水を呼び水に仮想物質を生成、数10倍に質量を増やした上で、5万倍の水圧まで圧縮した水の刀を作る。それを振るってぶつけても、揺るがない。


「うーん……じゃあ、今のでダメなら……」

「ちょ、アリス!もう充分だって!2人とも凄いから!」

「せやな……何をやっとるんや。皆気にしとるで?」


 2人は周りの人達が気になっているのかもしれないけど、ワタシは彼の出した、この結界の強度が気になる。だって、これが使えるようになるなら、王女様を守るのに、スッゴク便利。

 でも、どれくらいまで耐えられるのかは、理解しておかないと、駄目じゃない?だから……


「じゃあ、次で最後にするね?

 我がマナを素として練り上げ創り出すそれは、全てを薙ぎ倒し押し流す奔流。之を素に水を呼び生み出し、水の流れを風の流れに変え、風の流れを水の流れに返し、轟き渦巻くそのチカラはヤイバを放ち、放たれた刃は風に水に、風と水は更なる刃に循環する。その渦は、天災。之を以って彼の者を守る輝きを打ち消せ!

 水天術式――テンペストストーム――!」


 ワタシが打ち出した、最強の術式。強大な竜巻に、仮想物質として創り出した水の流れを乗せて、それを水圧で刃に変えた。

 竜巻の中に閉じ込められた彼は、どうなるかは分からないけど、何も守りが無ければ、普通の人はズタズタにされる。

 最悪、竜巻に巻き込まれて上空に打ち上げられ、そのまま奔流の中で、切り刻まれるはず。そして、数十mから数百mの上空から自由落下、地面に叩きつけられる。下手な結界とかを使っても、守り切れずに自由落下で死ぬこともある。結界を割る事だって、可能。


 ワタシが唯一覚えた、上位攻撃術式で、切り札。


 果たして彼はどうなったか……皆が……気にして居なかっただろう騎士さん達まで、こちらを見て固唾を飲む。ちょっと小さな竜巻が起きたんだから、しょうがないのかな。


 そして、


「残念だけど、これに追加で隕石召喚でもしたらどうだ?そうじゃなきゃ、割れないよ。

 何しろ、エルフが恐れられる理由の1つが、この結界なんだ。並の術者じゃ、割る事なんて不可能なんだよ。


 俺は精霊さんが警護してくれているから、命を狙われても危険を察知できるけど、それでも俺を狙って隕石落とされたら守れない。だから、エリナさんはなるべく早く、この術式を俺の手で作れるよう教えてくれたんだ」


 本気で打ち込んだ魔術でもびくともしない、彼の結界と、その結界に守られた彼の嗤う顔。こんなに余裕なのは、彼の魔力による所もあるかもしれない。

 けど、それでも並の結界だったら、あの暴風で割れたり、上空に跳ばされたりしているはず。普通の障壁だったら、簡単に割られる威力だし、そもそも全方向を守れるものじゃないから、太刀打ちできない。


「うーん……こんなに硬いって、普通じゃないよね……王宮守護の結界の為に、300人体制で張った状態と同じくらいなの?」

「ちょ?!王宮ってそんな堅い魔法で守られてるのかよ!」

 ユータは不思議な事を言っている。当たり前じゃないかな?


「ああ、それより硬い。あれは、人数揃えて作った、よくある3種類の結界の重ね掛け。これは、性質が根本的に違う。これの使い方を覚えてみるか?」

「……うーん、できるのかな……?」


 基本の構造は、簡単には理解できた。あとは、粒子構造をどういう仕組みと構成、性質なのか分かれば、多少は作れるかも知れないけど……

 ハニカム構造も、大雑把に組み上げるくらいでは、簡単に崩壊しそうな気がする。しっかり構成する為には、かなり複雑な計算式を構成して創造しなければいけない……?


「なんや……?アリスはん黙りよったけど、何を考えとるんや……?」

「……うん、どういう構成になるのか、ちょっと考えてて……」

 できるとしても、覚える期間がどのくらいかかるのか、分からない。先ずは構成を理解しないと、出来るかどうかを考えられないと思う。


「こうせいって……どういう事だよ?」

「ユウタ、ドーム球場の設計、どんな物か解るか?アリスなら、そのドーム球場の設計図を渡せば、どんな力がかかるとそのドームが崩壊するのか、予測演算できるレベルだ。

 逆を言えば、アリスならドーム球場を設計してしまうくらいの事、凡そ暗算レベルで出来るんだよ。もちろん、暗算だけでは不安要素が満載だから、紙に書き出していかなきゃいけないし、即席では必ず不備があるんだけどな。

 ドーム球場の全体図は誰でも想像できるけど、アリスは設計図を頭の中で創造しているんだ。この場合のドーム球場が、俺のやっていた結界なんだ」

「おまえの結界、ドーム球場かよ……その設計で、計算が必要って……えええ……」

「実際、似ている構造だぞ?昔セコカンやっていたから、ちょっと見た程度だけど、この結界の構造は、某ドームの構造に似てはいるんだ。同じでは無いけどさ。何しろ規模が違うし、構造の細かい仕組みも全く違う。

 想像で何でもできる訳じゃないって言っただろ?できる奴なら、想像だけで建造物の設計図を作れて当然だけど、その為には力学的な知識なんかが絶対必須なんだ。

 そう言った学問が理解できなければ、妄想でしかなく、自慰行為同然なんだよ」

「おまえ、最後の方かなりひどいんじゃないか……?」


 ワタシが悩んでいる横で、2人は随分話し込んでいるけど、何の意味があるんだろう?ワタシには、どうでもいい事なんだけど。


「……うーん、できるか分からないけど、やっぱり教えて欲しいかな……?」

 ワタシが自信を持てないまま出した言葉に、彼は珍しく笑みを浮かべて頷いた。


精霊のボヤキ

――ユーシャ理解しきれて無さそうだけど、想像がどうって、どういう事?――

 いや、想像する事は全て現実にできるとか、そんなホラ話を信じているバカはいるからね。想像しても、現実にするには法則もシステムも無視してできる物じゃないんだけど。あくまで、原動力でしかないんだし。

――どういう感じよ?――

 頭にプロペラつけて空を飛ぶとか、想像上にはあるけど、現実にはできない。誰だってわかる事だけど、箱にプロペラつけて空を飛ぶ技術は、確立している。そんな違い。

――頭にプロペラ……骨髄から神経引っこ抜けるでしょ、それ――

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