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フェンリルの挽歌~狼はそれでも狩りがしたい~  作者: 火魔人隊隊長
王女護衛の夜想曲
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10話 やくわりに

前回:――敵襲、騎士はカラッキシ駄目――

「王女を助けて頂いた事、深く感謝致します。流石に、あの銀狼が認めたチームなだけは、あるようですね」


 ミッチェルさんが、深々と頭を下げている。あの騒ぎの後、直ぐに宿へと王女様を連れ戻して、ヴァンとヴィンセントさんが、賞金首のオーガを衛兵の詰め所へと連れて行った。

 王女様は、最初は震えていたのだけど、今は落ち着いている。ただ、ミーシャちゃんがまた、体を抱きしめられているのだけど。

 流石に、彼女も今回は、安心させる為に嫌がったりしないで、されるがままになっている。


「それに比べて、騎士の者達と来たら……」

「ミッチェルさま、それはあまりお言葉になさらない方が宜しいですわ。確かにちょっと、本当にちょっと、対応が遅れていましたが、それを言えば、その者達だって……」

「みゅう!あぶない奴がいるから、逃げるために裏道に行こうとしたんだよ!それを気付かなかったのも、悪いんだよ!」

「そうです!騎士側にも魔術を使える者は居りますよね!マナ感知能力は、魔術師に必須の能力でしょう!殆ど先天的な才能ですが、ヴァンさんも、其方の御2人も感じ取っていて、どうして騎士達は気付かなかったのです!」

「そんな……王女様、無茶を言わないで下さい……!」


 たまにある、言い争いが始まっちゃった……それより、今日の夕食はどうするんだろう?


「ちょっといいかあ?エメラルダさん落ち着いたなら、そろそろ食事にしないか?」


 ヴァンが、窓の外から声をかけてきた……ここ、3階なんだけど……ヴァンだったら、跳躍魔法を利用して、宙を歩くんだよね。あれ、できる人って、意外と少ないらしいんだけど。


「ああ、ヴァンさん!心配して下さるんですね、有難う御座います!ですが、この状態で予約していた店へなど、とても怖くて迎えません!震えが止まりませんわ!」

 物凄い、満面の笑みで、飛び跳ねながら、ヴァンに叫んでいる。どう見ても怯えてない。彼は、予想していたらしく、窓からちょっと離れているけど。


「ああ……危ないからさ、落ち着いてくれないかな?とにかく、昨日ヴィンセント達と試食して、大丈夫な事を確認したものがあるから、ちょっと試してみないか?」

「ええ、それはもう!様々な料理を作って下さるヴァンさんの物なら、安心して口に運べます!」

 昨日も一昨日も、女中の3人は、部屋で料理する話になると、必ず王女を止めようとしていたんだけど、今回は出来ないみたい。できれば、この先もずっと、そうだったら良いんだけど。


「ほな、レシピと食材、ウチが貰うわ。王女様、すんませんけど……」

「いや、ちょっと重いから、マリアも来てくれ。少し前に、新しいアーティファクトが試用品として、ハイエルフの研究者から送られて来たんだ」


 そう言いながら、大きくて丸い、鉄板が乗った台座を取り出した。確かに、1人じゃこれは、大変かもしれない。大きくて、抱えるようにして、持っているのだし。使い終わったら、ワタシかエイダさんが収納しよう。


「これで、肉や野菜を焼ける。ほら、やった事あるだろ?BBQだよ。それに、この麺を合わせて使う。肉や野菜が入った、焼きそばって物だ。どっちかって言うと、炒めラーメンなんだけどな……」

 袋の中を、リリーさんに見せている。どう違うのかな?ラーメンって言う物も、聞いた事がない。


「どっちもよう分からんし、どうでもええわ。このアーティファクト、後で研究させてもらうでー」

 マリアさんが食材の入った袋、リリーさんがアーティファクトを抱えて、こっちに来る。ワタシが取り出したテーブルに、アーティファクトと食材の袋を置いた。


「その鉄板、鍋やフライパンのように熱くなるから、手で触れよお」

「何言ってんのよ!触るな、でしょ!」

 変な冗談を言い合っていても、仲悪いように見えているだけで、毛嫌いしている訳じゃなさそう。こういう仲良しも、あるのかな?


「成程、この鉄板で野菜や肉が焼けるのですね。それなら、ソーセージやチーズなども焼けるのでしょうか?」

「チーズどろーってなって、焦げるんじゃないー?やめよー」

「ですが、焦げる前に、ヘラ等で削いで、何かにかけてしまうというのも、良いのでは無いでしょうか?そうであれば……」

 ……エイダさん、そんなにチーズが食べたいのかな?レシピを見ないで、チーズやソーセージを出して、焼き始めた。


 ワタシはレシピを見て、焼きそばっていう物を作ってみる。麺が乾燥しているから、先に湯がいてちょっと柔らかくしてから、焼くみたい。

 油は……オリーブオイルでも肉の脂でもいいって、ちょっと適当じゃないかな?


――――――――――――――――――――――――――――


 夜の時間帯、警備をしている人が数人残った状態で、残りのメンバーとミッチェルさんが集まった。

 ワタシ達の方は、ヴァン、ヴィンセントさん、エイダさん、マリアさん。騎士さん達は、全員。どうして、騎士さんは5人とも連れてこられたんだろう?


「騎士の方達は、何故連れて来られたか、御理解頂けますよね。此度の襲撃、彼らは気付いていた上に、彼等の手に拠って、治められたのです」

「いや……しかし」

「言い訳は無用です!そもそも、貴方達は彼等よりも年も経験も上であると言うのに、コボルドの存在にも気付かず、危険を察知した彼等の計略を妨害し、襲って来たコボルドに後れを取っていた挙句、銀狼殿が消し去るまで、おっかなびっくり剣を振り回していただけではありませんか!」


 ホテルのロビーに、彼女の怒声が響き渡る。ミッチェルさんの叱責に、ブルーノさんは反論をしようとして、できずにいる。この為に、ワタシ達も呼ばれたのかな?


「ちょっといいかなあ?そんな話の為に、俺達を呼びつけるなら、警戒に戻った方が有益じゃないかあ?呼ばれた理由は何なのさ」

 ミッチェルさんも、ヴァンの質問で叱責を止める。そして、騎士からワタシ達に視線を移して、穏やかな声で宣言した。


「深夜に廊下で居眠りをした挙句、王女を危険に晒した騎士には、警護を任せられません。貴方達が、これより騎士に代わり、深夜入り口の警護をしてくださいませんか?」

 皆がその内容に驚いた。穏やかな声と表情だけど、断ったら、大変な事になりそう。どうしよう……?


「ちょっと待って。こいつらは空中の警戒をできる訳じゃないだろ?俺は、空中まで警備の対象にしていたんだ。今更交代と言われて、はいそうですか、とは行かないよ」

 断る心算なのかな。ミッチェルさんは、予想していたらしく、表情を変えないまま、言葉を紡いだ。


「そうでしょう。ですが貴方以外は、同じ様に空中を警戒できる訳では無いはずです。其方の方々に御願い致します。女性陣にも、負担を増やして仕舞う事に為りますが、宜しく御願い致します」

 ここまで言われたら、ヴァンも退くしかないんじゃないかな?実際、頭を掻いて、何かを考えているみたい。でも、反論しないから、受けるんじゃないかな。


「成程。そうであれば、彼らは外の警戒へと移ると言う事で、良いのでしょうか?我々の未熟な剣で、守れるのであれば良いのですが」

「ご謙遜を。2.2mはある、あのオーガを抑え付けるだけの力量が、貴方には御座いますでしょう。信用しておりますよ、ヴィンセント・ハートフィールド」

 ヴィンセントさんは、この言葉に一礼を返している。貴族としては、彼の方が各上だったけど、今は平民と同じような扱いだし、相手は王女のお付きの人だから、畏まらなきゃいけないのかな?確かに、貴族って結構面倒くさい。


「お待ち下さい!我らが外回りなど、到底納得できません!今一度、信用して頂けませんか!」

 ブルーノさんは、それでも何とかして、中の警護をしたいらしいけど、ミッチェルさんは無視して、そのまま部屋に戻って行った。彼等の怨めしいような顔が、ワタシ達に向けられる。


「どうして、こんな人狼と子供に、我等が後れを取らねばならんのだ!辺境伯家の者とはいえ、今は冒険者!まして、人狼などと居るような、こんな奴らに頭を下げる必要はない!行くぞ、お前ら!」

 よく分からない叫び声を上げて、外に向かった。


「あーあ……アイツら、やっちゃった。王女に怒られるわ……アタシ知ーらない」

「うーん……知らないから、しょうがないんじゃないかな?」

「悪いけど、俺は行くなあ。ユウタ呼んで、中に入るように言っておくよ」

「済まない、ヴァン。して、どういう事だね、一体?」

 ヴァンは空中の警戒していたから、聞いていたのかな?耳もいいし。ヴィンセントさんには、説明しないと。


「その事なのですが、リリーさん達が内容が気になるという事でして、例の映像アーティファクトを使わせていただいた次第です。その話で、王女も興味をお持ちになり、共に覗いていらっしゃる筈です」

 その話を聞いて、ヴィンセントさんはちょっと、呆れているみたい。でも、王女様に知られちゃったから、断れなかったんだよね。


「成程、王女の耳に届いて仕舞ったのか、あの罵倒が……今も覗いていらっしゃるのだろうか?」

「ああ、大丈夫です。あの馬鹿が叫んで出て行った後、すぐに切りましたので。無いとは思いますけど、ヴィンセントさんが今悪口を言っても、王女には聞こえませんから」


 ちょうどいいタイミングで切ったんだね。自分が発言すると、上げ足取られるってリリーさんに言われて、アーティファクトを切るまで黙っていたみたい。たまに王女様が見ていない所で、騎士さんがミーシャちゃんに嫌がらせしようとしていたから、怒っていたんだよね。


「それより、部屋へと参りましょう。ユータさんもいらっしゃったようですし」

 入り口を見ると、ユータが焦った顔で、こっちに来る。多分、ヴァンに何か言われたんじゃないかな?その姿を確認して、部屋に戻る為に、会談に向かう。


「ちょ、どうしてぼくたちが中に入って警備なんだよう……ヴァンに早く行かないとハリセンで叩くって言われたから来たけどなんで中に入らなきゃいけないのか教えてくれなかったし騎士はものすごくこわい顔で歩いて睨んできたし」

「以下略、で宜しいでしょうか?」

 エイダさん、ワタシとヴァンがやっていたのを見ていて、やりたかったのかな?この間は、ハルちゃんがやっていたけど。


「……あーうん。いいから何があったのか、教えて」

 捲し立てていたユータは、固まっちゃった。


 階段を上りながら、今あった事を説明すると、顔がどんどん青くなっていく。ユータは、王女様の事苦手らしいし、しょうがないのかな?

 部屋の前に着いたら、中から声が聞こえてきた。また、王女様が暴れているらしい。


「放してください、ミーシャさん!こんな暴言、黙っているのは不可能です!」

「それでも喧嘩はダメなんだよ!仲良くするのが、一番なんだよ!」

「エメラルダ、いい加減になさい!今更行った所で、何か変わると云う事も有りませんでしょう!」

 こんな声が響いてきたら、中に入るのに、ちょっと戸惑う。それでも、入るしかないよね。


「……ぼくたち、悪いことしてないよね……なんでこうなるんだよう」

「一難去ってまた一難、か……フム……仕方あるまい。我々の出来る事を、するしかあるまい。さあ、入ろうか」


 そして、王女様のいる部屋に、ノックをした後に入った。それから小一時間、王女様を落ち着かせる為に時間を使った。


精霊のボヤキ

――炒めるのに焼く……――

 まあ、そういうものだから、仕方ない。

――たまに、あんたのすることが分からない――

 そうは言ってもなあ……

――どっちも熱するんだから、同じでしょ――

 そっち!?違うよね!

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