表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

現代戦 戦闘描写練習

おかしいところ、改善点等ありましたら気軽に感想を送ってください。

昨日の夜から一睡もできない。明日、いよいよ戦闘が始まるからだ。

俺、ウィリアムズ小尉、小隊指揮官は興奮で眠ることができない。

明日からの戦闘に備えてしっかり睡眠をとらなければならないのはわかるが、この興奮は収まりそうにない。

俺以下、約40名の命を預かる身としては早急に眠り、備えなければならないのは重々承知しているがこの戦闘が初めての実践になる。とてもじゃないが落ち着ける状況ではない。

的確な指示を出せるだろうか。今回の戦闘は間違いなく、今隣の天幕で寝ているケニー一等兵曹長の援助で指揮することになる。彼はこの小隊に1年以上配属されていて、現場で出世してきたたたき上げの曹長だ。実務経験の浅い俺の補佐として参加することになるが、大学から上がってきたばかりの俺のことを見下しているに違いない。不安で仕方ない。

今後の戦闘で少しでも良い印象を与えるには明日どう立ち回るべきかばかりを考え、あまり疲れが取れないまま夜は明けた。


今回の作戦は大隊規模の攻勢作戦であるから作戦全体の動きについてあまり理解する必要がなく、基本中隊本部から来る命令をその都度考えて、各分隊に飛ばしておけばよかった。

初めての戦闘でビビっていたのに、俺らが所属し、大隊後方に位置する中隊はほとんど接敵しないので頻繁に聞こえる小さい銃声や時々聞こえる砲弾か何かの爆発音を除けば少し隆起のある乾燥した平原の中ではまるで戦争の気配が感じられない。


「いやー、戦争ってこんな感じなんすね」


夜はあんなに興奮しておびえていたのに実際こんなもんかと思ってしまい、つい軽口が出てしまった。するとケニー一等陸曹はこちらを鋭い目でにらみながら言う。


「私たちは、中隊長殿もあなたと同じ新米ですから、予備隊として後方に置かれているのでしょう。ですから、安全にそれだけ悠長にしてられますが前線では激しい戦闘になっていて間違いなく今も多くのわが軍の兵が死んでいます。それを思っても今の軽口が言えますか」


と厳しい口調で言われてしまう。相手は私のことが嫌いできつく当たってるのかもしれないが正論なので謝っておく。


「すみません」


「わかればいいのです。我々の出番もあるかもしれません。今のうちに学生気分を捨ててください。今あなたが立っているここは戦場です。そのような気持ちではすぐに2階級特進できましょうな。大尉殿」


など笑えないような皮肉を混ぜながら言ってくる。内心俺は、こいつを早く見返してやりたいと強く思った。

しかし、戦闘がはじまって数日たっても、全然接敵する気配がない。ただ俺たちはハンヴィーに乗って、移動するだけだった。これは中隊全体でらしく中隊長殿も

夜の報告や次の日の作戦行動の説明の時間、無線で

「俺たちの今回の任務はお散歩のようだ。お前ら今回はただ飯だな。わあははは」

とか似たようなことを何度か言っていた。

本当にすることもなく退屈していた戦闘が始まって1週間後のとき、ついに中隊長が大隊長から任務を受領した。

その内容は俺が所属する大隊の右に展開している大隊の左翼、つまりは俺たちの大隊とその大隊の間で突然交戦し始めたのだ。それが味方が存在しない地域からのものであるため、敵と断定し他中隊が正面で拘束され動けないので大隊右翼の防衛に回れというものであった。

予備中隊を丸々そちらに回すということはそれなりに大きい攻撃を側面に受けてるんだな。

隣の大隊は大変だなあと思ったが、自分たちもその攻撃から正面と戦っている味方を守らねばならないと感じて少し心が引き締まった。


昨夜に作戦が伝えられ、今朝すぐに出発した。味方が展開している右翼につき、前線は停滞しているようなのでしばらく進むことはないだろうと中隊長は予想したので、俺たちは簡易陣地を構築した。付近に手ごろな建築物がないため小さい塹壕を掘ったり土嚢を並べたりする。

しかし、次の日大隊長から無線連絡が入り隣の大隊の中隊の交戦が少し収まったらしく、両側から圧力をかけて撤退させることができると考え、こちらから仕掛けることになったようだ。

陣地構築した意味ねえじゃん。俺たちの苦労は何だったんだと思いながらもすぐに部下に出発と戦闘の準備をさせて自分も備える。

一応構築した陣地は撤退のときに優位に戦えるよう残しておくことになった。こいつが活躍するとき俺は死んでるのかなと思いながらこいつらが何の役にも立ちませんようにと祈りながら、簡易陣地をあとにする。


少し進むと前線側に展開する小隊が交戦し始めたようだ。ちなみに俺たちは、最も前線から離れたところだった。俺たちが接敵するのはもうすぐかと思いながら進んでいく。

始まりは突然だった。部下の1つの分隊から報告を受ける。


「こちら、第一分隊分隊長。小隊本部応答を願う。オーバー」


これまでほとんど雑談にしか使われていなかった無線でいきなり真面目な無線が入ったのでびっくりした。が、すぐさまケニーが応答する。


「こちら小隊本部、第一分隊どうぞ」


この突然の無線に対する対応力も実践慣れで得られるものだろうか。


「こちら第一分隊、敵と交戦を開始した。我々の進行方向に敵、およそ2分隊と交戦。援護を求む」

「了解。すぐに判断し、送る。」


「了解。ブレイク」


と相手の分隊長から無線を終了する。ケニーはこちらに向き直りながら、


「だ、そうです。命令を」


という。いきなり命令をと言われてもわからない。あまりに突然に始まるものだから、俺はまだ戦闘が始まったという自覚があまりない。多少銃声が大きくなったこと以外変化が感じられないのだ。

とりあえず、中隊長に交戦開始を無線報告する。しかし、すぐに小隊員をどう動かすか考え、決断しなければ味方に被害を出してしまう。

しかし、初めての実践で自信がない。大学で学んだ一応の戦術は頭に入れているが、部下の命を預かる以上、それが最善なのかについてわからない。どうすればいいかと悩み、

恥を忍んで聞くことにする。


「ケニー一等曹長、君ならどうする」


少し考える表情を見せて口を開いた。


「私なら、交戦中の第一分隊でそのままくぎ付けして残りの分隊を回り込ませ側面をからの攻撃を目指します」


頷きながら考える。実に堅実な作戦だ。軍でも一番最初に学習させられる戦術、片翼包囲だ。普通ならそうしたいし、そうするべきなのだ。経験の浅い俺でもわかる。

が、何かが引っかかる。機動中の部隊は基本的に弱い。分隊単位で考えれば動きながら銃弾を敵に命中させるのは困難であるし、何より掩蔽のない場所で仕掛ける権利が相手にある。不利な戦闘では味方に大きな被害をもたらし、人員の損耗につながる。これをできる限り避けたいがあまり慎重になりすぎると第一分隊が全滅してしまう。確認するようにケニーに問う。


「敵軍の小隊の基本構成はわかるか?」

「はい、基本我々と同じ3分隊と本部です」


そうケニーは答えて少し納得した表情を見せる。


「ああ、なるほど。つまり少尉殿は相手も小隊単位で運用しているなら第一分隊と交戦していない残りの一分隊が伏兵としてどこかにいるはずだと思っているということですね。

それならば、ここが一番怪しいかと。」


と言いながらケニーは衛星写真をもとに作られた地図にある小高い丘を指す。

昨日の夜にも地形確認のために見たがわかりにくい地図だな、これ。


「ああその通りだ。いるとすればそこになるだろう。それ以外は使い勝手が少々悪い」


あまり射線の通らないところに部隊を設置してもうまみがない。いるとすればそこになるだろう。

時間稼ぎをされ1対2の戦力さの分第一分隊が厳しくなるが、相手に先制を取られたハンデだ、我慢してもらうしかない。そして、ケニーがさした丘の敵兵を倒す算段をケニーと少し相談して素早く決めた。


俺は無線機を背負う兵士に声をかけ


「第一分隊に連絡してくれ。20分待てと、そして第二、三分隊につないでくれ」


といい、俺の小隊の全員に命令を下す。



戦闘開始から10分後ついに第一分隊の隊員が被弾し始めた。相手も少なからず被害を負っているだろうがやはり厳しいのは局地的に人数が劣っているこちらだ。

早く第二、三分隊を援護に回さなければならないが、見えない残りの敵を排除しないと、安全に援護に回せない。被害を減らすために素早く動いてもらいたい。


「こちら第二分隊、目標地点に到着」

「こちら第三分隊、準備完了。いつでも行ける」


と無線連絡が入り、すぐさま俺は行動開始の合図を送る。

一斉に行動を始める。まず、第二分隊は小高いところから敵のいると予測される丘の頂上に散発的に銃弾を撃ち込み牽制する。

いる場合は銃撃の合間に反撃があるはずだ。何回か繰り返すと撃ち返してくるはずだ。

そして、しばらくして相手が第2分隊に対して反撃を開始した。やはりいたようだ。予測が見事に的中した喜びをかみしめながら、

第三分隊の移動状況を確認する。彼らには敵の丘の一から見えにくいところを通って裏に回り込んでもらっている。


「こちら第三分隊、敵を発見。裏をとれた、発砲許可を求む」


と無線が入る。見事裏をとれたようだ。すぐに俺は


「発砲を許可する」


という無線を送る。すぐさま発砲し全員を倒したようだが、残念なことに死亡者が1名出てしまったようだ。


悲しいことではあるが、しかし全体のためにも気にしている場合ではない。すぐさま第三分隊にはその丘から第1分隊の援護をさせる。第1分隊にもすでに死者が出ている。

これ以上負担をかけたくないので、第2分隊には第1分隊と合流させ交戦させた。不利を悟ったのかすぐに敵はひき始めた。


戦闘結果はこちらの圧勝だった。敵兵氏死亡者10名、負傷は不明。こちらは死亡者2名、負傷者は重症なし軽傷3名だけだった。敵の死者はほとんどが第3分隊が出した成果だった。味方に死者を出してしまったことが悔やまれるが、

ケニーは


「死者のない戦闘はありません。あなたが悔やまれる必要はない。いやむしろ、私がはじめに提案した作戦であればもっと多くの味方が死んでいた君は誇ることがあれど、残念がることはない」


と言いながら、握手を求めてきた。どうやら彼は俺を小隊長として認めてくれたようだ。これがビギナーズラックで彼らに失望されないようこれからも奮闘しなければならないと思った。




別視点


俺はウィリアム小尉が率いる小隊の第一分隊の隊長だ。大学上がりの新人に指揮されることは不本意だが、階級が上である以上彼の指示には従はなければならない。しかし、指示にないことは従わなくていい。彼が無能な場合、自分も含めて分隊全員の身を守らなければいけないと思っていた。


陣地構築した次の日、敵がいるだろう方角へと前進が始まった。これまではほとんど安全だったがここから先は違うとおのれの心を入れ替え、分隊員にも徹底させた。乗ってきた3台のハンヴィーにドライバーと搭載されている重機関銃のガンナー各車両2名を残して降車させて、徒歩で移動している。


移動し始めてしばらくたった時、ハンヴィーに何かが当たり、カンッという大きい音が鳴る。間違いなく小銃の弾が当たった音だ。


「敵襲だー」


分隊員の誰かが叫ぶ。方位を確認し車両を盾にして全員が隠れる。重機関銃も射撃を始めた。重機関銃の重い音が耳栓をしているのに鼓膜に響く。戦場に戻ってきたということを実感する。

俺はすぐに敵方位とおよその数と現在の状況を確認し無線で知らせ、援護を求めた。

そして分隊全員に指示を出す。


「総員、撃ち返せ」


今回は特に武器の使用制限がなかったのでアンダーバレルに取り付けられるグレネードランチャーも無制限に撃たせたが、相手は二倍の戦力でこちらは顔を出すことすらままならない。

顔を出し、狙いをつけて数発撃って素早く隠れる。弾倉が空になればすぐさまリロードし、もう一度顔を出す。という一連の動きを繰り返す。何度もするうちに反動で肩が少し痛むが、射撃をやめれば相手の攻撃が強くなり、車も破壊されてしまうかもしてない。そうなるとこちらがより一層不利になってしまうので銃弾が近くをかすめても勇気を出して顔を出さなければならない。

そんな中敵のグレネードも近くに着弾し始めて、一人の味方が足を負傷する。俺はすぐさまその負傷した隊員のもとに駆け寄り、足に止血帯を巻く。そして痛みに苦しんでいる彼に

鎮痛剤のモルヒネを注射する。


「隊長ありがとございます」


と彼はお礼を言った。しかしそれを聞く余裕がなかった。何度も経験している戦闘で、慣れたように思えても銃声によるストレスや銃弾が近くに着弾した時の不快な音による恐怖にはやはり慣れようもない。

戦闘前は皆の命のことを優先するとか考えていたが焦りは無意識に俺を冷静で亡くした。俺は無線で強めの口調で小隊本部に言う。


「どうなっている、援護はまだか。こっちはもう、一人が被弾した。早くしてくれ」


「第2、3分隊が位置についた、これから10分以内にそちらへの援護が始まる。あと少し踏ん張れ」


と返答が来る。さっきから、こっちは踏ん張っているんだ。早くしなければ、死人が出ると思いながら小銃を敵に向けて発砲する。しばらくたっただろうか、ついに死者が出た。

俺の分隊の一人が頭部に被弾し、頭から血が流れている。その隊員のもとにすぐ駆け寄り様子を見る。意識はない、大きな声で呼びかける。


「おい、生きているか」


返事はなく、呼吸も心臓も止まっている。蘇生は不可能だ。彼は死んだ。死人が出たのを無線で伝えるが応答はない。


「くっそ、まだなのか」


焦りも限界だ、今すぐ怒鳴りそうだ。しかし、この瞬間に無線連絡が入る。


「よく頑張った。第3分隊が今から援護射撃を行う。第2分隊もそちらに合流する」


無線を切り、俺は


「ようやくか」


とつぶやいた。そのあとここからは見えないが味方が丘から敵を打ち下ろしているようでこちら側への射撃も減り、楽に交戦できた。第2分隊も合流し戦力が増えたため、戦闘は収束していく。

俺も死んだ味方の分だといわんばかりにプレートキャリアのポーチに入っている弾倉をすべて撃ち尽くした。

そして、生きている敵兵は撤退しはじめ、こちらも追撃はしない。戦闘は終了し俺の分隊から出た死者を黒い袋に入れてやり、乗ってきたハンヴィーにのせてやった。

部下の死に関して小隊長に思うところがないといえばうそになるが、何度も実践を経験しても慣れない俺と違って、うちの小隊長殿はよくやったと思う。間違いなく優秀だと感じる。

敵の待ち伏せに気づき対策し、先手を取られたのにも関わらず敵に5倍もの被害を出した。

初めてでこれができるのだから本当にすごいと思う、素直に彼の指示には従おう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ