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妹と、僕と。

作者: 黒嶋珱玻

はじめまして、初投稿です。

だいぶ拙いですが、それでも書きたかったんです。


僕には、もうすぐ妹ができる。

僕は物心ついてから、ずっとずっと妹が欲しかった。

泣いたり笑ったり、毎日を妹と過ごしたかった。

おはようからおやすみまで同じ家で過ごしたかった。

妹のいる友人が羨ましかった。



僕には、もうすぐ妹ができる。

僕は物心ついてから、ずっとずっと妹が欲しかった。

なんでこんなに妹を欲しているのか、僕自身にもよく分からない。

ただ、テレビや書籍やネットから溢れてくる、妹という存在に憧れていた。

可愛い妹と過ごす幸せな日々に憧れていた。

妹のいる世間の人々が羨ましかった。



僕には、もうすぐ妹ができる。

はずだった。



「駄目だった、頑張ったけれど、産んであげられなかった。」

あの日、母様はベッドでそう言った。

「ごめんね、ごめんね。また、頑張るから、赦して。」

泣きながら僕に謝った。

僕の耳には、何も届いて来なかった。

ただ、起き上がる体力も無い瀕死の母様を、空虚な眼で見ていた。



僕には、もう妹はできない。

できるはずだった妹に続いて、母様までいなくなってしまった今、僕にはもう妹ができるはずはなかった。


僕は、もう独りだった。



あの日、妹が産まれたら名前を付けるのは僕の役目だった。

僕はそれが嬉しくてたまらなくて、何月も前からずっと考えていた。

たくさんたくさん悩んだけれど、答えはもう決まっていた。

その名前を想う度に、妹が愛しくて大切で仕方なくなる。

産まれてすらいない妹に会いたくなる。

春香に会うことはできないのに。




あの日から数年が経っても、僕の頭の中は妹でいっぱいだった。

絶望でいっぱいだった。

しかし、ある日奇跡が起きたんだ。


「はじめまして、遥お兄様。私、妹の春香です。これから、よろしくお願い致しますね?」

想像通りの可愛い声で、無邪気な声で、幸せそうな声で、僕の妹は話しかけてきたんだ。


僕は嬉しかった。

やっと、やっと妹ができた。妹と話せる。妹を感じられる。妹と過ごせる。僕の大切な宝物、春香が傍にいてくれる。

嬉しくてたまらなくて、僕は泣き出していた。


それから、僕の生活の傍にはいつも春香がいた。

春香はいつも明るく僕に話しかけてきてくれた。

春香がいてくれるだけで、僕は幸せだった。




たとえ、春香が、僕の中にしかいなくても。

現実には触れあえなくても。

僕に一方的に話しかけてくれるだけでも。



「遥お兄様、今日は春香に何をしてくれますか?」

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