再会
「夏目……?」
「佑……?」
わが目を疑った。
でも見間違えるはずが無かった。
両目の下にある泣きホクロは特徴的で、たれ目で、大きな口。
何より……俺の元親友で、元カノだ。
「なんでここに?」
夏目も戸惑っている。
「いや、お前こそなんでここに?」
「北原教授の授業受けたくて…」
夏目がポツリと言う。
「俺、も」
ここは山の中にある大学だ。
かなりマニアックな授業をする大学で、俺は実家を離れて賃貸を借りて、この大学を選んだ。
だから知り合いがいるなんて思ってなかった。
夏目だって、家が遠いはずだけど……。
「お前も賃貸借りてここに来てるの?」
「いや、俺は……」
俺、という言葉に違和感を感じるほどに、夏目の姿は女の子らしかった。
俺といたときは、まだまだ男っぽさが残ってたけど。
高校三年間離れただけで、こんなに女の子になるんだな。
「夏目、おまたせーーー!」
男が突然、夏目を後ろから抱きしめた。
「ちょっと、優斗! こんなところでやめてよ!」
夏目が高い声で叫ぶ。
なんか俺の前と別人じゃね?
「なんで先に出ちゃったんだよー」
「だって、気持ち良さそうに寝てるから」
夏目は微笑んだ。
その笑顔、その瞳、俺が知ってる夏目で、夏目じゃない。
「一緒に御飯食べたかったのに」
「どうだった? 味噌汁」
「辛い」
「ちょっと!」
夏目が男を殴る。
俺はその様子を、ただ見ていた。
この会話の内容だと、二人はきっと……。
男のほうが、やっと俺に気が付く。
「誰、この人……って、あーー、昨日学食でお金貸してくれた!!」
「あーーーー……」
俺はこの男と、すでに会っていたことを思い出す。
「昨日ありがとうね、えっと350円だっけ!」
「あ、そうですね」
俺は言う。
「何やってるのよ」
夏目がいう。
「実は昨日学食でうどん頼んで出てきたあとに財布忘れたって気がついてさー、この人が貸してくれたの」
「馬鹿じゃないの?」
男はガサガサと鞄を漁る。
「……今日も財布忘れたみたい」
「もーーー!」
夏目は自分のカバンから財布を出して、俺に350円を出した。
「祐、ごめんね」
「いや、いいよ」
俺は久しぶりに触れた夏目の手から350円を受け取った。
指先に塗られたピンクのマニキュアを、じっと見てしまった。
「祐くんって言うんだ? え、夏目と知り合い?」
「あー……」
俺は困る。
「中学校の時の知り合いなの」
夏目はさらりと言った。
知り合い。
キスしてても、知り合いなのか?
俺の中で何かがチラリと動く。
「そっかー。おれ中島優斗。夏目の彼氏で一緒に住んでるんだ、よろしくね!」
優斗くんは、にこりと微笑んで俺に手を差し出した。
俺はその手を握った。