第18話 激闘の最終幕 後編
本日二回目の更新。
前編を読んでない方は気をつけてください。
「――ジャイアントマーダーはディメンジョンの能力で接近し攻撃しろ!! ゴブリン、バスタースパイダーは一斉掃射!」
「戦うのならお前が前に出てこないと意味無いぞ?」
「クッ……配下の速度じゃ捉えきれんか!」
ロードの命令通りに広樹の周りを包囲するエネミー達だが些か行動が遅かった。
僅かな隙間を掻い潜り広樹は一瞬でロードの下へと到達すると拳を突き出すもロードは冷静に右後方へといなすがその想像以上の重さに顔を歪める。
「重い……!」
「ならもっと重くしてやる!」
後方へといなされた広樹はより強く集中して自身の身体を強化する。
そのままいなされた勢いを利用して広樹はロードに回し蹴りを叩き込んだ。
それは遥かに鋭く、遥かに重い蹴り。
それを受けたロードの右上半身が抉れた。
「何……!?」
「やっと一撃目だ」
だが広樹がそのことに喜ぶ暇は無かった。
ディメンジョンの空間転移で別の場所に移動したロードは配下であるエネミーの一部を切り取って抉れた右上半身に押し込むと徐々に元の状態に戻っていった。
「そこにいたか!」
「……見つけるのが速いな……!」
そこからは拳と拳の肉弾戦だった。例え傷を受けてもどちらも直ぐに回復、再生する終わりなき戦い。それも片やロードはエネミーである化け物、片や広樹は疲労回復強化という能力に、両者とも疲れいらずに殴り合っていった。
「やはり化け物の塊だ……!」
「てめえにだけは言われたくねえな!!」
先程までは片手でいなされる程度の強さだった広樹がまるで別人のようで、解き放たれた拳はロードの防御を突き破りダメージを与えた。
それどころか一発が重く、ロードもかなり本気で防御しないと腕がちぎれる程にまで強くなっていた。
「そうか、それが貴様の能力か……!」
思えば初めて災害級エネミーに襲い掛からせた時の広樹はとても災害級エネミーに敵うほどの強さを持っていなかった。だが今戦っている広樹の、目的を定めた目を見てロードは確信した。
広樹の能力は明確な目的や決意を持てば持つほどその目的を達成するために能力が強くなる。ロードを倒すという目的を持った広樹に『強化』という能力が強く活性し始めたのだ。
現に学習能力強化により強化されていく広樹が僅かにロードを上回り始め、徐々に二人の差が開いていくのが分かった。
「危険だ……!」
遅すぎる危機感。思えば自らの創造主が特定の能力者に対し殺せと命じた時点から気付くべきだったのだ。
――今戦っている目の前の男はかなり危険な存在だと。
「《一点全力強化》!!」
「しまっ!?」
思考に意識が行き過ぎていたロードは広樹に隙を突かれ、最大の威力で上半身を吹き飛ばされた。
だがこういう状態になっても周りにいるエネミーは襲い掛かってきた。
「……まだ死んでないのかよ」
ゴブリン数体が上半身を吹き飛ばされたロードに覆い被せるとまるでゴブリンの身体が溶け瞬時にロードの上半身を形成していく。
「クソ! もう再生したのか!」
「貴様に我を殺すことはできん!」
そう言いロードは拳を地面に突き刺した。
すると地面がまるで生き物のように広樹に襲い掛かって来たのだ。
「やっぱり……この惑星自体が……!!」
エネミーが地面から這い出たことと、ロードが拳を地面に突き出すと惑星が広樹に襲い掛かったこと。
このことから推測するに、この惑星自体がエネミーいや、もしくはこの惑星を含めてロードというエネミーなのだ。
「我の全能力を持って貴様だけを殺す! これだけは絶対に譲らん!!」
「足場が……ッ!?」
頭上に降りかかる砂。これもロードの一部だとしたら……そう気付いた広樹は全力で防御関係を強化。瞬間、砂が連鎖するように爆発を起こした。
ただそれでも広樹の防御を貫けなかった。
その事を確認したロードは、水を起こし広樹に水攻めにした。
風を起こし広樹の身体を引き裂こうとした。
火を起こし広樹の身体を焼こうとした。
土を操り広樹を生き埋めにした。
それでも尚、広樹の圧倒的な存在感は消えない。
「――ウォォォォオオオオオオ!!!」
大地を轟かせる咆哮。次の瞬間光が起こり爆発が起きた。気付けばそこには巨大なクレーターがあり、その中心には拳を地面に突き立てた姿の広樹があった。
「まだ……やるのか?」
「化け物め……ッ!!」
これまでの余裕の表情から一変、怒りの形相を見せるロードに広樹はゆっくりと立ち上がろうとするがしかし、突如として足元がふらついた。
「な、なんだ……?」
視界が歪み感覚が狂ったことで膝をつく広樹。混乱するも次の瞬間ロードとほぼ同等の存在感が広樹に襲い掛かった。
「ロード、助太刀に参りました」
「――スピリットか!」
スピリットと呼ばれた半透明の物体がロードの直ぐ横に現れ、ロードはスピリットが現れたことに顔を苦々しく歪めた。
「……本来は我が殺す筈だった」
「だがあの能力者のゴミは予想よりも強かった。それにあの『時空』がこの場所とのパスを繋ぎ始めている。最早これは形振り構っていられないのだ」
「…………」
身体が言うことを聞かずそのまま地面に倒れこんだ広樹はボヤける意識を何とか繋ぎ止めながら強化した聴覚でロードとスピリットの会話を聞いていた。
「精神を停止させるほどの力を入れた筈だが異常だな。まだ生きているとは」
「恐らく奴は殺せない。推測だが意識がない状態で胸に穴を空けようとも奴の能力が勝手に治すのだろう」
「なら能力を封じ、殺せばいい」
そう聞こえ、命の危機を感じた広樹は今襲い掛かっている正体不明の力についての耐性を強化する。すると徐々にだが広樹自身の意識が鮮明になってきた。
「――! ……やるなら今だ。アイツの能力が私の力を上回り始めた」
スピリットの言葉を聞いたロードは自身の手を振り上げると地面が隆起し、広樹の身体を拘束した。
「クソ……」
「斉藤……広樹だったか。今から……お前の能力を封じる」
半透明の物体が広樹の頭に覆い被せると広樹は尋常じゃないぐらいの痛みが走った。白目を向き、血涙を流し、全身が振るえ、痛みに悲鳴を上げた。
「ヒュー……ヒュー……」
声がかすれ、息もままならない。能力が得た日から久方ぶりに感じる疲労や痛みが全身に回り、思考が回らなくなるがそれでも……。
「……なんだこれは」
「一体どうした?」
「私の力を持ってしても……」
それでも広樹の意思や決意、目的は潰えない。
「ウォオオオオオオ!!!」
「何!?」
「気を付けろ!! 奴の能力がまだ残っている!!」
「《一点全力強化》……ッ!!」
圧縮されていく強化の力が右の拳に集まり、拳が白く光り輝き、拳を全力でこの惑星自体に叩き付ける。
「なっ――」
ロードの驚愕した様な声が聞こえる。
それはそうだろう。
広樹が生み出した光景は地面に巨大な崖が出来ていた。
傍から見れば惑星が真っ二つになっているのだ。
「ぐふ……」
ロードの口から赤い血が流れた。
今広樹がいる惑星はロードの一部。その惑星が割れたということはロードにも少なくないダメージが入っているのだ。
「ロード!?」
「――へっ、ざまぁ見やがれ……」
意識が朦朧とするが、広樹は何とか言葉を搾り出せた。その中で、広樹は自分の重力が急に無くなり下に落下している感覚がした。
初めは崖に落下していると思ったが、下を見るとそこには横に裂かれた空間が広樹の足元に存在していることに気付く。広樹は直感でこれはサイ達が通った空間転移の能力だということに分かった。
だが今この場所にはロード以外のエネミーがいる。幸いロードには少なくないダメージを与えたがスピリットというエネミーには何も借りを返していない。
「スピリットって言ったな……」
だから代わりに中指を立て、スピリットに言った。
「テメーも必ず殺す……覚悟しとけ」
そう言い、広樹の意識は暗転した。
暗転していく中、スピリットの気配が剣呑に変わったと感じた広樹は笑みを浮かべ、そのまま空間に飲み込まれた。
これでプロローグは終わります。
次の予定は
・あらすじの変更
・タグ変更
・リメイク前とリメイク後を別々にする
・登場人物紹介
で第一章を始めます。
これからもよろしくお願いします。




