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勇者は101人いる(旧版)  作者: 酔生夢死
1章 少年、召喚される
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01話 少年、召喚される

所謂、ご都合主義な俺TUEEEEの異世界転生です。

拙い文章故、読みにくかったり無理矢理な設定が出てくるとは思いますが、最後まで読んでいただければ幸いです。

 ダークブラウンの豪奢な扉のドアノブに手を掛け、意気揚々と扉を開く。

 ゆっくりと音を立てて開いた扉の向こうは、本かゲームの中でしか見たことがなかったような広間だった。


 様々な絵が模られたステンドグラスから鮮やかな色の光が差し込み、天井から数メートル間隔で吊り下げられたシャンデリアが照らされ煌びやかに輝いている。

 白い壁には幾つもの幻獣の彫刻が施され、床に真っ直ぐ敷かれた真紅の絨毯の先には、金銀の派手な装飾で彩られた玉座が鎮座していた。


 入ってきた者を圧倒するほどの荘厳な大広間には――10代後半から20代前半であろう学生らしき沢山の男女が(ひしめ)く様に集まっていた。


「どういう事なのこれ……」


 想像とはまるで違う光景に、上がっていたテンションは冷や水を掛けられたように下がって、その場に頭を抱えて蹲った。

 それは30分ほど前の事……



 ――キーンコーンカーンコーン


「はい、今日はここまで。みんな寄り道せずに帰れよ~」


「きりーつ、礼っ!」


「「「さようならー!」」」


 ウェストミンスターの鐘が鳴ったのを合図にHRの終了と同時に別れの挨拶の号令が掛かると生徒たちが一斉に席を立ち上がり、椅子を引きずる音が学校中に響き渡る。

 学校という束縛から放たれた生徒たちは、タガが外れて弾け飛んだように動き出す。

 その中で一際勢いよく教室から飛び出した生徒がいた。


 彼の名前は伊藤勇樹、どこにでもいるゲーム・マンガ・小説が大好きな高校2年生である。

 特に好きな物は現実には存在しない魔法や空想動物が登場するファンタジー物であると公言しており、口を開けばファンタジーの話ばかりしている妄想バカと周囲からは認識されていた。


 勇樹が飛び出した直後に、他の教室からも生徒が廊下にゾロゾロと流れ出て、廊下はあっという間に生徒で溢れる。

 友達同士で集まりどこへ遊びに行こうかと予定を立てる者たちや、部室へ向かう者や図書室で居残ろうとする者たち……そして、道草を食みながら帰宅しようと下駄箱へ向かう帰宅部たち。


 人の波に出来た隙間を器用にすり抜けながら、勇樹は一階の下駄箱を目指して駆け抜ける。


「(今日は予約してた新刊の発売日だからね! 早く買って帰ってじっくり読まなきゃ!)」


 階段の手すりに腰かけ滑りながら降りると、間の悪い事に降りた先に生活指導の新井田教師(46歳)が通りかかった。

 新井田教師は手すりを滑り降りてくる勇樹の姿を見るなり、眉を吊り上げた。


「コラッ! 伊藤、この前のローラーブレードの持ち込みと窓から飛び降りた件からまだ反省していないのか!!」


「いえ! アレはロープとか回収している時間も考慮すると、階段で下りるのと大して変わらなかったので、その点を反省して素直に階段を滑り降りる事にしたんです!」


「それは反省の内に入らん! 待たんかっ!」


 しかし、勇樹は新井田教師の伸ばした手をするりと躱すと、そのまま玄関まで駆け抜ける。

 勇樹の頭の中には、既に帰宅の予定のルートが出来上がっており、流れる様に下駄箱から靴を放り投げる様に置き、代わりに上履きを突っ込むと履くのも億劫と言わんばかりに靴の踵を潰したまま学校を飛び出す。

 まだフライングで校舎を出た生徒しかいない校門を駆け抜けながら、一月も前から予約していた新刊を購入すべく、通学路の途中にある本屋を目指した。



 勇樹の通う学校は最寄り駅と大通りで一直線に繋がっていて、その通りが学校指定の通学路にもなっている。

 なので、大概の生徒は大通りを通って通学してくるのだが、実はこの大通りは少し湾曲した形になっていて、駅周辺にある学生御用達の娯楽スポットへの近道が存在した。

 ただし、その道は道幅が狭く人気も少ないので校則では通行を禁止されているのだが、寄り道をするには打って付けのルートなので勇樹に限らず、他の生徒も頻繁に利用している道だった。


 目的地へ最短距離で向かう為に、勇樹は人気のない通学路から少し外れた脇道に入る。

 通り慣れた小道を通り抜け、小さな階段を飛び越え、目的の本屋が通りの向こうに見え、最後のスパートを掛けようと足に力を入れた所で、突然水の中へ飛び込んだような感覚に陥り空気が纏わりつくように重たくなる。


 一歩一歩と進める毎に足を泥に突っ込んでいるかのような抵抗が襲い、吸う息も重く息苦しくなってくる。

 加えて、何故かここから一刻も離れ立ち去らければならないような使命感にも似た強迫観念に襲われ、額から冷や汗が止め処なく流れた。

 不可思議な出来事の連続に慌てて周囲を見回すと、普段なら同じ方向へ帰る生徒が何人か歩いている筈が、今は自分と前を歩いている生徒以外は一人もこの道に入って来ていない事に気が付いた。


 それと同時に、頭の中で何かがこれ以上先へ進む事は危険だと猛烈に訴え始める。

 足を止めて引き返して、一刻も早くここから離れたい。

 まるで虫の知らせのような予感が強く、まるで警報のように勇樹の頭の中で鳴り響いた……が。


「でも……今日は待ちに待った発売日なんだ! ここで引き返してたまるか!!」


 高熱に浮かされたかのように頭痛がしてガンガンと頭の中で叫ぶ警告を振り払うように、力の抜けるような宣言を叫びながら気合いを入れ直して走るスピードを上げた。


 しかし、それでも頭痛と纏わり付く空気は変わる事は無く、フラフラになりながら目の前の生徒を脇から追い抜こうとした瞬間、酸欠気味でボーっとしていた勇樹は足元の小石に(つまづ)き、目の前の生徒にぶつかってしまった。

 「倒れる!」と思った瞬間、彼らの前に幾何学模様の円陣が立ち塞がる様に現れ、反応する前に2人はその陣に飲み込まれ、この世界から消え去った。


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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