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報酬は世界の半分  作者: 麦ちよこ
中山の本気編(改稿前)
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35.お光、悟君2号と出会う

 そんな、本当に? 本当にあれは。見間違えるはずもない。あれは、あれは。


「悟様!!」


 又吉の村にきて3日。術の指導をしていた私は人間が一人こちらに向かっているとの報告を聞き、又吉と二人、完全武装にて待ち構えておりました。笠を目深に被った一人の男がこちらへと向かってきていたのです。


「そんな、本物の悟様か?」


 又吉もあまりのことに驚いています。目深に被った笠、品のいい着物、優しく微笑んでらっしゃる口元。あのお姿は悟様に間違いありません。


「お光と又吉ですか。長い間お待たせさせてしまいましたね」


 いつも聞いていた声。優しい声。ああっ。悟様は生きていらっしゃった。生きていらっしゃったのですね。


「悟様、悟様は生きていらっしゃったのですか」


 胸が一杯になる私の代わりに又吉が悟様に声をかけます。


「ええ、60年もかかってしまいましたが。まぁ、なんとか。私は封印されていたのですよ。あなたたちもその様ですね。我々妖怪は少し術式が違ったようです。昨日解除されたのが確認されました。今は、復活した妖怪たちが住処の修繕をしております。あなたたちの気配があったのでこうして私は探しにきました。心苦しいですが修繕がなされるまでお待ちください。また会いに来ますから」


「では、皆いきておるのでしょうか?」


「ええ、全員に会ったわけではないのですが、皆の気配を感じ取れますよ。一際、お光の感情が大きい様子なのでこちらには早めに様子を見に来た次第です」


 私の気持ち。悟様に会いたいと思った気持ちが通じたのですね。良かった。本当に良かった。


「お光、先ほどからだんまりですが、体調はいかがですか?少し痩せてしまったのでは?」


「大丈夫です。確かに環境は以前より良くはありませんが、少しずつ改善しております」


「そうですか。あまり無理はしないように。又吉、目覚めてから何があったのか聞かせて貰っても宜しいですか?」


 悟様は又吉から今、鬼里におり何をしているのかを語っています。私はまだ夢見心地です。生きていらっしゃった悟様が、私を気にかけてくれた。それだけで幸せなのです。何故又吉がいつものようにお話できているのかわかりません。悟様が生きていらっしゃったのに! それだけでも気持ちが溢れてしまうのに。どうしようもなく自分が高揚しているのがわかります。まともに話せる気がしません。ただこの喜びをお伝えしたいのに。どうしたらいいのかわかりません。本当に、良かったとしか思えないのです。


「そうですか。では住処に鬼人も住まえるように整えましょう。ここを離れる気はないかもしれませんが、何か起きたとき住処に逃げ込むように。術の勉強をはじめたとのことですが、あまり人に見られてしまうと本気で潰しにかかられるやもしれません。安易に戦おうとはせず逃げるように」


「人を返さねば良いのではないでしょうか?」


「人と敵対することが鬼人の真意なのですか?彼らも我々と同じように神に疑問はあったとしても、人に恨みがあったとしても、鬼人が悪ではないことを知ってもらいたいのではないのですか?少なくとも私はそうでした。人とまともに戦って、神の使いが現れて、ただ終わり行くことは望んでいないのではないのでしょうか?又吉、あなたが世話をしたのです。鬼人たちがどうしたいのかは、あなたが聞いて決めなさい。ただ敵対することを望んでないのであれば、我々妖怪は味方になれます。我々の敵は人ではない。神の与えた選別なのです」


「はい、悟様……」


 相変わらず悟様はおやさしい。妖怪たちだけのことでもまだ戦いを続けるのに鬼人という人とも妖怪ともつかぬもののことまで気にかけていらっしゃる。私はちゃんと理解しているつもりです。私達の敵は神が与えたわけのわからぬ加護なのです。加護が消え、神の支配から解き放たれれば、きっと妖怪も鬼人もそして私達人間も、皆等しく生きていけるはずなのですから。そして私たちは悟様と末永く平和を甘受するのです。悟様と、また共に生きていくのです。できれば、できれば今すぐにでもついていきたい。


「悟様、私たちはいつ住処に戻れるでしょうか?」


 やっと出た言葉はなんと間抜けなものでしょう。悟様がいることに喜び、ついていくことだけで一杯で。なんと自分本位なことを。


「少し施設を増やさねばなりません。来月には少しはマシになっているでしょう。その時また連絡を入れます。今日は復活したてでしたから、まだ回る場所があるのです。少しの時間で申し訳ありませんが、次はゆるりと話せればと思います。又吉、お光、日々をしっかりと生きていくのですよ」


 微笑む悟様は夢幻であったかのように少しの時を過ごされただけでまたどこかへと去ってしまわれました。



***


 本部に悟君2号こと、エバンスさんが帰ってきます。心配だったので見ていたのですけれど、少々喋りすぎなくらいで必要事項はこなしてくれています。開発部の人は人身掌握が壊滅的だと思ってはいたのですけど、私の元上司、エバンス氏のことを忘れていました。彼はテレパスなことに加えて、口調が旧式悟君、ラムザとよく似ています。がさつな悟君をしている促進部長に見せてやりたいくらいです。いや、見ても変わらないでしょうけど。


「ただ今戻りました。中山君」


「おかえりなさい、エバンスさん。それ、なんですか?」


 満面の笑みで帰ってきたエバンスさんは何故か大木をホールド中。わけがわかりません。


「ほら、例の事件でデータ全部飛んだでしょう?機械だらけの世界出身の新人に見せてあげようと思ってお土産に貰ってきました」


 え、確かにものの持ち帰りはある程度許可しましたけど。それ、大きすぎませんか? エバンスさんの最終座標を確認してみると周りに人はいませんけど、これ後々目立つレベルの木ですよね?


「はぁ、確かに植物データなのでしょうけれど、おっきぃですね……次からはもっと目立たない小さなものでお願いします」


「ええ、わかりました。これは開発部に送っておきますね」


 嬉しそうにエバンスさんは大木を転送します。そんなに嬉しそうだとあんまり文句が言えないじゃないですか。さっきまで信頼度がかなり上っていましたが、やっぱり文明ランクAはわからない。細々チェックを入れないと怖いです。


「とりあえず3号がお待ちですので、D11会議室に飛びましょう。悟君会議をします」


「了解しました」


 なんとも不安ではありますが一応、全レジスタンス合流時期を操作のためにも悟君たちには頑張ってもらわねばなりません。

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