【5ー2】
【5ー2】
「魔法みたいなもんだよ」
私の携帯がなった。こよりからのメールだった。委員会が終わったので今から来るらしい。
「こよりが来るぜ」
「こ、こより……鷺ノ宮?」
「そうそう」
「じゃ、じゃあ僕はこ、この辺で」
立ち上がろうとする村山を引き止める。
「ハブられてる同士、仲良くやろーぜ?」
「は、ハブられてる? ふ、伏見、が?」
「私の美貌に嫉妬してだな」
「そ、そうなんだ」
「今の冗談だぜ、笑うところだぜ」
「ご、ごめん」
「私にもいろいろあるんだよ」
やべぇ身体中がパッサパサ。
なんでこんなにパッサパサ。
パッサパ……バタバタと足音を立ててこよりがやってきた。
「遅かったじゃん」
「うん、そうだね、遅くなっちゃった。って、あれ?
村山君がなんでここに、うんなんで?」
「え、そ、そのごめん」
「謝らないでよ、あたしが怒っているみたいじゃない、怒っているみたい」
「ご、ごめん」
「だーかーらー」
「お前ら漫才でも始めるのか」
こよりは納得がいかないようだったが、ひとまず私の横に腰を下ろした。
リンスの匂いがいつもと違う。変えたのだろうか。
誰も知らない陽の差し込まない日陰の階段で私達は何を語るわけでもなく。何を見るわけでもなく。
何処かカビ臭いこの場所は心が安らぐ。この場所には私達しか居ない。煩わしいものなど何もない。
学校は窮屈すぎる、だから誰もが日向を取り合って誰かを追い出そうとするのだ。そんなクサイ事を考えていた。
「美樹ちゃん、そろそろ戻らないと、うん戻ろ?」
「だな。村山、昼休みに行く場所ないならここ来いよ」