【3ー12】
【3ー12】
璃瑠の耳に美樹からの無線が聞こえた。
『璃瑠……この……魔法は……なんだ』
『……おそらく……特殊な力場……です。……下向きの……ベクトル……か……重力場の……どち……らか』
『……だとしたら、……考え……がある……、なんと……崩すか……ら。即座に……動ける……か』
『死ぬ気で……やりますよ』
美樹がゆるゆると首を上げた。何かを探しているように見える。
天井には何も無い。鉄筋に巨大な白熱灯がぶら下がっているだけだ。天井は高く先ほど美樹が空けた穴からは空が覗く。
佐樹がハンドガンの銃口を美樹に向けた。
「何を考えているのか知らないけど、終いね」
「随分と……、涼しい顔……してる……じゃねー……か」
「それはどちらの意味かしら。私があなたを殺す事? それともこの魔法発動下の事?」
璃瑠がなんとか、詰め寄ろうとするが足が動かない。一歩一歩を少しずつ擦るようにするも、佐樹までの距離は遠すぎた。
「むしろ、私はあなたがそんな無駄口を叩いている余裕がある事の方が驚きだわ」
美樹は、口角を上げた。
使えそうな物はすでに見つけている。天井までの距離が気になるが、勝算はある。
「理由は……二つあって……さ、一つは……性分」
「もう一つは?」
佐樹の質問で美樹の表情が張り詰めた余裕から真剣なものに変わる。
「……あんたの……隙……を待ってた!」
美樹の言葉と同時にその場にいた誰もが何か、そう言うなれば古いフィルムに入ったブレのようなものが見えた。視界が揺れ影が踊る。
世界がまるでぶれたかのように。
景色が「ずれた」ように見えた。