【2ー29】
【2ー29】
高田梨花は野方に呼び出されて都内のとあるビルに来ていた。
エレベーターで最上階の部屋に到着すると秘書が待っていて梨花を案内する。連れられて部屋に入ると野方が居た。
「やあ、呼びだてしてすまないね」
野方は今年で39才になったという。そうは見えない若々しい男性である。
高い鼻に甘い頬骨のラインにそって背中まである長い髪が艶やかなウェーブを描いている。
「いえ、その平気ですから」
部屋は一面ガラス張りに近く元々広いこの部屋をより広く見せている。
忙しなく瞬く夜の街灯は遠くで消えては表れを繰り返す。
ここから見える夜景だけでも、この部屋に来る価値はあるだろうと梨花は思った。
「仕事の依頼というのはやはり、信頼できる人間だからこそ直接頼むべきだと私は思うのだよ」
「そんな、信頼出来るなんて……。あたしはまだまだ未熟だし言われた事をやるので精一杯で」
「それだけの事が出来る人間がいかに貴重かということだよ」
野方はブランデーのボトルとグラスを持って来ると梨花に向ける。
「どうかな」
慌てて梨花はクビを横にふる。
「その、あたしはまだ未成年ですし」
「いや、そうだったね。すまない、秘書に何かアルコールの入っていない物を持ってこさせよう」
「そんな。わざわざすみません」
「なに、気の効いたもの一つ部屋に置いてなくてすまないね。とりあえず座ってくれ」
「はい」
このソファは幾らするのだろうか。これだけで、自分の報酬金が飛んでしまうのでは無いかと思うとつい浮かし気味に腰掛けてしまう。
梨花が座ると野方が正面に座り秘書が梨花の前に紅茶を置いた。
「ダージリンの夏摘みですね」
「詳しいね」
「野方さんが出してくれる紅茶はたいていダージリンですから、覚えたんです」
「いかんせん、私が紅茶を飲まないものでね。とりあえず来客用に買っているんだが」