【2ー10】
【2ー10】
何故か、とっとと先に帰ってしまった璃瑠に置いていかれた私はエレベーターで三階まで上がるところだった。
エレベーターの中も温泉の臭いがする。それとも私からだろうか。
このホテルは一棟の中に全ての施設が入っているようで、地下の温泉から私たちの宿泊部屋のある階までエレベーター一本である。
エレベーターが三階に着くと間の抜けた音がした。
「今日の璃瑠はやりづらい……なんなのさー」
機嫌が良いんだけど、悪いような。
璃瑠との付き合いは数ヶ月程度であるが、未だに良く分からない。
どこに住んでいるかも知らないし、家族がどんな人かも知らない。
どうして公安六課にいるのかも知らないし、第一どうやって刑事になれたのかも不明だ。
私と同じように特例だろか、だとしたらいつから活動しているのだろうか。
考えたら何も璃瑠のことを知らないことに気がついた。
聞きたいけれど聞きづらい。訳ありとしか思えないわけで。
いや、せっかくの二人での旅行なのだから一気に距離を詰めるべきではなかろうか。
しかし。
「今日の璃瑠はやりづらい……!?」
部屋の前に来た辺りで私は確かに聞いた。
いや聞かざるを得なかった。あまりにも近い距離だったから。
轟くような爆発音がした。
聞きなれた、しかし普通なら聞く筈もない音だった。
「銃声!?」
目の前のドアが勢い良く開いて璃瑠が飛び出してきたので私たちはぶつかる形となってしまう。
「うわっ」
「美樹さん!?」
「今の銃声は!?」
「分かりませんが、おそらくこの階のどこかの部屋です!」