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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【一章・少女は欺いた(後編)】
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【1-30】

【1-30】


 薬師寺早苗の語る言葉は途切れ途切れで断片的で、拾い集めて繋げて形を見繕ってもそれはどこか欠けた物だった。

 私は彼女の語る以上のことは訊ねなかったし、璃瑠は無関心を決め込んでいた。良心の欠片も残ってなければ、馬鹿らしい、とでも言ってのけそうな顔で。


 遡るなら、どこからだろう。入間沙織が感情の捌け口に薬師寺早苗を選んだときか。この二人が出会ったときか。果ては入間沙織が優等生であり始めた時か。

 入間沙織は薬師寺早苗に影でイジメを繰り返していた。キッカケは多分、些細な事で。

 真実なんて多数決だと、薬師寺早苗は言った。

 誰もが、築かれた高い壁とそこに描かれた壁画に感服しながら、その箱庭に踏み入れることはなかった。

 誰もが、多数が信じる虚像に眼を潰されて、その影に埋もれた事実に気付けなかった。

 本当にそうなのかは、私には分からない。

 入間沙織の所業を薬師寺早苗が仮に叫べたならその声を誰も信じることはなかったのか。そんなことがあるのだろうか。そうとまで思わせてしまうほどだったのだろうか、彼女の高い壁は。


 欺いたのは誰だ。

 入間沙織か薬師寺早苗か、それとも多数で括られた人間か。


「一つだけ聞いていいか」


 簡潔に述べるなら、薬師寺早苗は入間沙織より受けていたイジメをキッカケに今回の監禁事件を起こした。

 しかし、これだけは結論が出なかった。


「この後どうするつもりだった。監禁した果てはどうするつもりだった?」


 五分近く独白を続けた薬師寺早苗の口から返事はなかった。

 まぁ、いい。ここで調べ上げることでもない。

 そこで電話が鳴った。

 私のと璃瑠の携帯電話の着信音が不恰好に重なる。

 公安六課からだった。


「はい、伏見です」

『今、二人とも何処ですか!?』

「学園で犯人と一緒だけど……?」


 電話先から酷く慌てた声がした。

 璃瑠と顔を見合わせる。


『入間沙織を搬送中の救急車が武装した魔法使いから襲撃を受けました!

 現場に救援を派遣しましたが一人の身元が確認できません』


 仮にだ、薬師寺早苗が何らかの目的を持って監禁をしていたなら。

 薬師寺早苗の監禁に何か明確な目的があったとも思えない。入間沙織に見たところ外傷は無かったし、復讐としても、もっとスマートな方法があるはずだ。

 つまり、彼女には監禁の理由はあっても目的が無い。

 一週間近く目的もする事もアテもない監禁など出来るはずがない、何か終着点があったに決まっている。彼女以外の。

 なら、第三者が居たとしたら。第三者が何らかの目的を持っていたとしたら。第三者が機会を窺っていたとしたら。

 警察の初動が早すぎてその機会を逃していたとしたら。

 好機は今しか有り得ない。


『入間沙織が拉致されました』


【1章・少女は欺いた完】

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