【16ー10】
【16ー10】
哀しいことがあった。
私は何もかも救えると思い込んでいた。そうできると信じていた。けれどもそんな理想は音を立てて崩れて現実は無慈悲に冷たい刃を突きつける。
こよりを止めたいという一心で私は公安六課に入った。けれどもそれも本当にそうだったのかも分からない。ただ目の前に転がり込んできた事態を訳も分からず受け止めきれず流しただけだった気がする。
何かにがむしゃらなら見たくないものを見なくて済むから。
なら私に何が出来た。意識に弾かれ、もがく私の何処か末端がいつの間にか徐々に死んでいく。だったら私に何が出来た。こよりの影を追いかけて不安を知ったような口を聞いて誤魔化して。そんな私は何が出来た。
「やったさ、必死に! 目の前に立ち向かったさ! これ以上何をどうすれば良かったんだよ!」
「逃げたじゃないですか」
その声に私の矮小な心は世界を閉ざす。
そんなことは言われなくたって知っている。こよりに、なんて言葉をかけて、どんな事をすれば良かったかなんて分かるはずがなかった。それで逃げて何が悪い、そう叫びたかった。
こよりの死を止められなかった。私を庇って死んだ彼女のそんな結末を決定付けたのは私の行動だった。その責に押し潰されそうで、暗闇で必死でもがいて、気付けばこんな所にいる。
「私はどうすれば良かった、どうすれば良い?」
「知ってるじゃないですか」
私はその声に手首を掴まれる。溺れそうな心が一瞬安堵の息を吐く。
「あなたはその方法を知っているし気付いてもいる。そしてそれが出来るし出来た」
一抹の光が差し込んだ。その微かなそれを受けて私の心はかつてあった場所へ舞い戻る。
掴まれたと感じた手首からゆっくりと温度が戻ってくる。散らばった心を、必死にかき集める。
「だからあなたを信じてる」