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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【16章・魔術師は夢見た(後編)】
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【16ー8】

【16ー8】


 乳白色の空間がどこまでも続いていた。何処からか風に流されて散っていく緑光の粒を視界の隅で追いながら、私はぼんやりとした意識を傾けた。

 ここはどこだ。

 ぼんやりと焦点が遠ざかっていく。私はその先に紡がれては崩れていく景色を見た。


「この感覚は知ってる」


 この何もない空間でただ唯一私だけが存在していた。緑の光の粒子は柔らかな風に運ばれ細かい羽となっていく。乳白色の空間は所々綻びが作られそこから緑の光の粒子がこぼれていく。そして崩れたその空間はまた乳白色に塗りつぶされていく。

 その繰り返しに私の意識は無限ともいえる時間にさまよう。


 どこからか声がした。その声は空間を振動させ私を包み無数の色へ変わっていく。見通せない色の暴力が私の皮膚を通り抜けて体の中へ浸透し身の内でまた音に変わる。溢れ出るようにして私の身体からこぼれた音は甘い感触を持ってくる。

 それに誘われて記憶が脳から溢れ出す。記憶の映像が私の身を切り裂き軽やかな音を立てる。その音が幸福感で鼻孔を刺激し重さで呻き出す。


「今離したら美樹さんまで消えそうで」

「それじゃあ、あたしは満足出来ないんだよ。

 認めてもらえないなんて耐えきれないよ。

 それって社会からあたし達抹殺されたようなものだよ。

 それって存在しないと同義じゃない!」

「自らを上位の観測者へと押し上げ、周囲の認識を捻じ曲げる。それが魔法だ」

「変わるんじゃない、変えていける。アルカナだろうと何だろうと璃瑠という人間を誰かが知ってくれたなら、それで受け入れてもらえる。要素じゃない、本質で」

「人が誰かを拒絶するのは要素だよ、本質じゃない。だからそんなものに囚われずに本質を見抜けるなら人は分かり合える。

そしてその方法は私達は既に知ってる。なら人は変えていける、変わっていける」

「一番の問題はさ、彼女の居場所が何処にもないからだよ、きっと。だから壊してしまいたくなるんだよ、世界も人も。変えてしまいたくなるんだよ、失ってしまった心の隙間を埋める為に」

「あなたがあの子を幸せに出来るというのなら、わたくしは何も言う事はありませんわ」

「あたしたち、あたしが欲しかった世界は手に入らないのかな。欲しかったな……。

 ねぇ美樹ちゃん。

 美樹ちゃんの言葉はきっと正しいよ、そしてあたしが欲しくて、あたしが探してた言葉だよ」

「欲しかったセカイと違っても、望んだセカイと違っても、あたしたちはそれを壊しちゃいけないんだよ。向かい合って変えて変わっていくしかないんだよ」

「何もか……も諦めたフリ……をして、本……当は向き合うの……が怖かっただけじ……ゃないか!」

「伝わら……ないからって、……伝えられないからって、……それで、逃げ……出しちゃ何も……変わらない!」

「あなたなんかに分かるわけがないよ! 魔法でならあたしは誰かに必要とされる、認めてもらえる! こんなの誰もくれなかったんだ!」

「私はあなたが居てくれさえいれば良かったのに」

「佐樹ちゃん、ごめんなさい。あたし負けちゃったごめんなさい。あたし何の役にも立てなかったねごめんなさい。こんなんじゃ、あたし何の意味もないよね。勝てなきゃ結果を残せなきゃこんなあたしなんて誰も認めてくれないよね」

「何も分かってないくせに、分かったふりして、ワケもワカンナイで、がむしゃらになる」

「あなたが私を、私の事を大切だって言ってくれたから。アルカナなんて関係なく私は私だって言ってくれたから。

 あなたが私に出会わなければ、あなたが高田梨花を知らなければ、あなたが石神佐樹へ言葉を伝えなければ、どれか一つがかけてしまっていたのなら、そうしたら救われなかった。

 あなたが無駄だった、何の意味も無かったって切り捨てた事達が私達の運命を変えたんです。あなたがその運命を認識したんです。

それを無下にするなんて寂しいじゃないですか」

「あなたの全てを否定なんてしないでください」

「そうして、君はどう思う。

 彼の言う事も一理あるだろう。数々の不条理を君も見てきたこともあるだろう。

 既存のシステムではこの国を変えるのは難しく、そしてそのシステムを変えるのも難しい。強者の造ったシステムは強者にしか優しくない。その歪みの正し方を、いや歪み自体を見過ごして後回しにしてきたのは僕達だ。もはや老いた物達にそれを省みる術はなく、なら君はどう思う。

 僕達が無視してきたそれを正したいと思うのかな。彼ならばそれが出来ると思うのかな」

「何処で迷子になっていたって見つけますよ」


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