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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【16章・魔術師は夢見た(後編)】
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【16ー3】

【16ー3】


 高田梨花が野方の元にいたのは存在する自信をなくした彼女の認証要求を満たすことが出来たからだ。そうして初めて高田梨花は自分の存在に意味を見いだせた。

 そうやって身を削っていく高田梨花を石神佐樹は止めることが出来なかった。高田梨花のその気持ちを満足させる術を知らなかったから。どうすればいいか分からず別の方向を向いて誤魔化してきた。


 きっとそれは悲しいことだと思う、けれどそれはどうしようもないことだとも思う。それを止める方法なんて私達は誰からも教わってこなかった。

 悲しいから、そうならないように私達は必死にもがくのに、もがく度に私達は捕らわれてしまう。


 鷺ノ宮こよりが死んで初めて分かったのだ。私がすべきだったことは見るべきだったものは。世界じゃない、ただ目の前にいるこよりに目を向けて手を伸ばして心を届けようとすれば良かった。

 それだけの簡単なことに私達はいつだって逃げてる。


「認識」

「?」

「魔法は自身を上位の観測者へと引き上げるものだ。観測者によって世界は確定される」


 野方が突然語り出した。美樹は一瞬悩むも彼の言葉を拾って返す。同じような意見を持っていた人が記憶に上る。


「魔法使いは上位の観測者であり魔法使いによってねじ曲げられた認識が現実世界にフィードバックされ魔法となる」

「ほう、詳しいようだね」

「そんな仮定を立ててた奴から話を聞いたことがあるだけだよ」


 意識の隅が朦朧としているのが分かる。ふと見た左手が真っ赤なものに塗りつぶされていた。美樹は黒蛇のグリップを握り締める。

 まだ身体は動く。


 グングニルは破壊した。これ以上野方に付き合う理由もない。こちらの救援は期待できない。グングニルが破壊された以上、他の部隊は撤退に移っている筈だった。

 最初は野方と遭遇した手前、撃墜して捕獲するつもりだった。だが今、ハッキリと分かる。こいつは危険だと。

 どうにかして野方を撒いて離脱したい。


 野方が左手をゆっくりと持ち上げる。その手の平の先の光景に美樹を据えて野方はその手をゆっくりと握り締めた。野方はそのまま言葉を続ける。


「なら観測者が認識しなかったものは存在しない。観測者が認識できないものは存在を許されない」

「何が言いたい」


 野方は握り締めた手の平を真横にし空を一文字に切る。


「君の見てきた私の魔法はそういうものなのだよ」




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