【16章・魔術師は夢見た(後編)】
【16章・魔術師は夢見た(後編)】
こよりは言った。
人は誰かに認めてもらえなければ存在していけない、と。誰かに認めてもらいたい、と人は生きるのだと。
見なければ聞かなければ手を伸ばさなければ、私たちは知ることさえ出来やしない。
惑わされてぼやかして触れようとしなければ、私たちは他の何かを拒絶してしまう。
こよりを拒絶した世界が何にも優しくはないから。こよりはそれを変えようとした。少数派はいつだって虐げられる存在だから。こよりはそれを変えようとした。
人は新しい価値観を持つようになる、そうシフトしていくのだと。あたしは、そうしたいのだと。
人は進化していく。変わっていける。きっといつか他者を異質を拒絶することなく分かり合うことが出来るようになると。
「ぶち抜け、3.02A-02D:2.02-02-01Cジェノブレイカー」
野方が動くと同時に美樹は目の前の宙を蹴り飛ばすと後ろへ大きく跳んで距離をとる。野方がビルの屋上へ着地したところを狙って美樹が魔力砲撃をぶっ放す。射出と同時に周囲の空気が弾け飛ぶかというほどに衝撃波が反動としてうねる。野方の元へ高速で着弾しようとしたその砲撃に向かって野方は手を翳す。
その瞬間美樹の放った砲撃が消えた。
「!?」
文字通り消えた。防がれたわけでも打ち消されたわけでもかき消されたわけでもない。文字通り、まるで今まで何も無かったかのように消えた。
「どんな奇術を使ったってんだよ」
美樹の呆けた声に野方は応える。
「当然魔術だろうさ」
「言ってくれるじゃねぇか、3.02A-04Qアサルトビット」
美樹が無数の魔力弾を周囲に停滞させると野方への距離を詰める。黒蛇を構え魔力砲撃へのチャージを開始する。
野方がライフルを構え引き金を引く。銃口でエネルギーが膨らむと押さえきれなくなった魔力が崩壊し撃ち出される。ライフルから撃ち出された熱線が空気を撫でる度に紅い色に変えていく。熱線を回避すると同時に美樹は停滞させていた魔力弾を射出させる。
美樹の後方から無数の魔力弾が野方へ時間差で向かう。美樹は体勢を立て直すと黒蛇を構え直し魔力砲撃を放つ。
「3.02A-02D:2.02-02-01Cジェノブレイカー」
ばらまいた大量の魔力弾が野方へ襲いかかる。それによって生まれるだろう隙を期待して美樹は砲撃をぶっ放した。
雹のように降り注ぐ魔力弾が野方に触れる前に全て消えていく。欠片さえ残らず存在していなかったかのように全て音もなく消えていく。
美樹が時間差で撃ち出した砲撃も野方の目の前で消滅した。
「あんたが前に出てくる自信があんのも頷けるよ」
「君では私に届かんさ」