【15ー8】
【15-8】
「逃がさんさ」
「なんだよこれは」
目の前の空間が消えた。文字通りぽっかりと目の前の空間に黒い穴が開いていた。声のした方へ顔を向ける。
野方が居た。
映像で見たあの姿のままだった。野方と対峙した状態で美樹は黒蛇に手をかける。
「なんであんたがこんな所でウロウロしてんだよ」
「グングニルにより射出された魔力弾の軌道を変えたというのか。どんな奇術を使えばそうなるのだ」
「そりゃ魔術だろうさ。大将自らこんなとこまで出張ってきて良いのかよ」
「グングニルが破壊されれば私とて見ているだけというわけにもいかんさ。グングニルを単身乗り込み破壊にくるほどの相手、見逃すことも出来まい」
「ずいぶん自信があるみたいだな」
自分から前線に乗り込んでくるとは美樹には信じられなかった。
「あんたはこんなことをして一体何がしたいんだ。人が死ぬだけだこんなの」
「そうさせたのは他ならぬ君達だ。傲慢と欲にまみれた人のせいだとなぜ分からん」
「だとしてもあんた達にそんな権利はない」
「なら誰にその権利があるというのかね、そして誰がそれを為すというのかね。そうならぬからこそ、今この状況を招いたのだろう」
「それはあんたらの理屈だ」
「だがそれが理由だ。君が何処の誰かは知らないがグングニル阻止の罪は重くつく」
「それもあんたらの理屈だ」
「それを否定できる人間など居らんよ。君がここにいるのも君の理屈によるものだろうに」
「そうだよ。だから私は止めなきゃならないんだ。あんたが、あんたのやり方がおかしいって思うから」
「それは結局反発を生む」
「平和主義を謳うつもりはないさ」
野方が手にしたライフルをかざす。美樹が黒蛇を構える。
「君は私を撃つのかね」
「あんたが私を撃つのなら」
「考えの違うもの同士が交わることはない」
「私もそう思うよ」
【15章・騎士は迷った完】