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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【14章・女神は振り向いた】
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【14ー5】

【14ー5】


野方がネット放送、民放全てで同時中継したこの演説をただただ口を開けて眺めていた私達の沈黙を私が破った。


「つまりだ、このおっさんは国を造ると言いたいのか?」

「移民問題と経済悪化で確かに国内の右傾化は見られますが、しかし、これは」


璃瑠が言葉に迷う。どう反応すべきかも分からない。

国を造る?

このご時世に革命でも起こそうというのか彼は。


「……独立派の元締めってことですか、彼が」

「こいつが東洋日本グループの代表というのは確かなのか」

「みたいですね。メディアへの露出機会も多いですし、視聴者もそう認識したでしょう」


八坂が東洋日本グループのHPを私に見せた。確かに彼の写真がある。

東洋日本グループはIT、精密機械に関して圧倒的なシェアを誇る東洋日本工業をはじめとした一大グループである。医療、食品、建設、製造と傘下の企業の数は数えきれない。


「なんだってんだよ、これは」

「新規独立政府の立ち上げは独立派の主張でありスカイツリー占拠事件を知っているということは彼が独立派のトップということで間違いないですかね」

「……東洋日本重工は政府内部にもシェアがある。WIECSの開発を一手に担ってる」

「独立派の石神佐樹や高田梨花のWIECSの入手経路はそこですか」

「で、どうするんすか課長」


私の質問に課長はゆっくりと顔をあげる。私の目の奥の脳幹まで見抜くかのように私の目を見た。

課長の大塚は今までの沈黙を破り口を開いた。


「六課は公安部の一つの課に過ぎない、公安部は警視庁の一部署に過ぎない、そうやって元を辿っていけば我々も彼の言う倒すべき政府の一部だし、彼が政府を倒すべき敵とするならば、公安はその職務として国家転覆を防ぐ為に動かなければならない。それを君がどう思うかは自由だけれども君はその立場にいることを忘れてはならない」

「はい」

「そうして、君はどう思う。

彼の言う事も一理あるだろう。数々の不条理を君も見てきたこともあるだろう。

既存のシステムではこの国を変えるのは難しく、そしてそのシステムを変えるのも難しい。強者の造ったシステムは強者にしか優しくない。その歪みの正し方を、いや歪み自体を見過ごして後回しにしてきたのは僕達だ。もはや老いた物達にそれを省みる術はなく、なら君はどう思う。

僕達が無視してきたそれを正したいと思うのかな。彼ならばそれが出来ると思うのかな」


野方率いる独立派はきっと武力で打って出る。例えそうでなくとも上は彼等を制圧することを期待する。

そうしたとき魔法使いを有した独立派を「あくまで制圧」するならば魔法使い無しでは成し得ない。


そうして私に話が回ってきてそれで、命じられるまま彼の理想を制圧して、それで良いのかと。課長が私に聞きたいのはそう言うことだ。

そうして来たのが今までだからこそ、私はそれを変えて考え直すことが出来る。


「……彼の言う理想に国民が賛同すると思うか、璃瑠」

「風向きとしては国民の不満が爆発する手前の今は非常に有利でしょう。国民の中に現政府に少なからずの反感と不満はあります」

「でも革命だなんて」

「そんな大それたこと自分には関係ない。どうしていいか分からない。

そうやって、見過ごし考えず流れに委ねてきた姿勢を彼は否定しているんです。あなたが上の命令に従って言われるがまま何も感じず考えず、そんなフリでいることを彼は否定した」

「ならどうすれば良い、私は」

「美樹さんはどうしたいんですか」


今まで出会ったものの語る言葉を私は真剣に聞いてきただろうか。きっとそれは仕方が無いことだなんて言葉で片付けてこなかっただろうか。

足掻いたって元に戻らないことは分かってる。


八坂が声を上げた。


「課長、一課より通達。独立派と思わしき集団が港区台場に集結。また周辺ではデモ行進も起きているそうです」

「デモ?」

「警察に制圧させれば……」

「それが、認可が出ているようです」

「事前に手回しをしてたってことか。となると扇動にはプロがいる、そう簡単には収まりがつかないぞ」


となると目立って独立派の制圧をすれば民衆を焚き付けかねない。さて、どうする。


「また魔法らしき反応も上空に見られ、彼等が何らかの行動を起こすことは必須かと」

「……魔法?」


嫌な予感がした。

独立派の起こす行動が先の野方の演説とデモだけで終わるはずがない。それで本当に独立政府の樹立など成されると思っているとは思えない。

そうなると、何か手が他にもあるはずだ。

世論を味方につけ動きを鈍らせ、何か決め手となる何かが。


「課長、石神佐樹と連絡とれないっすかね」

「努力しよう」

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