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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【一章・少女は欺いた(後編)】
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【1-24】

【1-24】


 非常灯の明かりだけしかない、校内の廊下はぼんやりとした明かりに照らされながらも確かに暗闇を隠し持っていた。

 隠し切れなかったのか、見せびらかせているのか、暗闇は確かな存在感を誇示している。その中に目を凝らせば何も無いことは分かるが、その目を凝らす一瞬に何かが視界の端を通った気がしてしまう。


 本能的に暗闇を私たちは避けようとする。故に、私たちは暗闇を照らすかがり火を求めた。いや人とすら呼べなかった時代から誰かが火に手をかざしていたのだろうか。

 科学の発展はまるで暗闇が存在しないかのごとくまばゆい光で世界を照らし続けてきた。けれど、その灯台の下は暗闇が這い明かりが強ければ強いほど暗闇はその反動で黒を増していく。

 その反動は私たちがふと気付いた時に襲ってくるのだ。


 明かりに目を奪われ、気付けないだけで。

 慌しい足音がした。


「ごめーん刑事さん、待った?」

「ううん、今来たとこ」


 薬師寺早苗が懐中電灯片手にやってきた。暗い廊下だと昼間見た彼女とは別人に見える。


「で、どうしたの?」


 私は携帯で視聴覚講義室の前に彼女を呼び出したのだった。璃瑠には別の場所で待機してもらっている。


「ちょっと気になることがあってな」


 視聴覚講義室のドアを開けて、薬師寺早苗を招き入れる。

 暗い廊下から「明かりのついた」視聴覚講義室に入ると一瞬目がくらんだ。


「確認したいんだけど、入間沙織に会ったのは何時だっけ」

「6時くらいだったよ」

「その時、旅行カバンみたいなものを持ってたんだよね」

「そうだよ」

「その時、会ったのはお前がメールで呼び出したからだよね」

「違うよ」

「お前、今2つ嘘をついただろ」


 薬師寺早苗の目は私を見据えていた。逸らす気配はまったく無い。

 動揺の色は見えない。しかし昼間に見た色はない瞳だった。



「入間沙織は6時頃、旅行カバンのような物を持っていたって言ったよね。

 でも、お前の前に東楓が入間沙織と会っていた。東楓の証言では5時50分頃に入間沙織にメールが来たのをきっかけに二人は分かれた。

 お前に会うまでの10分間の間に何処から旅行カバンを持ち出してきたのか。

 中庭から寮までは往復で走って10分はかかるし、その時の目撃証言はない」


 東楓の証言は5時50分まで。その後に入間沙織の目撃証言はなく、6時頃の薬師寺早苗のものだけである。そしてそれを最後に薬師寺早苗は姿を消した。


「私たちは旅行カバンを持っていたことから入間沙織は家出だと思い込んだ。

 でも、学園から外に出るのに旅行カバンを持って校内を通る必要はない。だから校内でお前に会ったからには入間沙織には何か校内へ向かう理由があったということになる」


 それを私たちは探した。

 璃瑠は学園内に入間沙織が居るのではないかとまで言った。

 家出するために旅行カバンを持っていたにしては持っていく荷物がおかしいと。


「でもその何らかの理由は分からなかった。

 だから見方を変えた。

 何故、旅行カバンを持っていたという証言が東楓の時にはないのか。

 何故、旅行カバンをどこかに取りにいったとしたら、東楓と薬師寺早苗の証言の間の時間に目撃証言がないのか。

 何故、校内で薬師寺早苗に会ったのか」


 その結論にたどり着くまで随分と遠回りをしてしまった。

 いくつも勘違いしてしまった。

 ミスリードさせられてしまった。


「入間沙織は旅行カバンなんて持っていなかった」


 入間沙織が旅行カバンを持っていたという証言が薬師寺早苗以外から出ない理由は簡単だ。

 誰も見てないからだ。

 なら、薬師寺早苗だけが入間沙織の旅行カバンの証言を出来たのは何故か。


「お前、入間沙織が旅行カバンを持っていたって嘘をついただろ?」


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