【14章・女神は振り向いた】
【14章・女神は振り向いた】
射撃訓練場の重い扉を開けると鋭い音が轟いて璃瑠は少し顔をしかめた。
足音すら聞こえない程の絶え間なく続く轟音を立てている主の元へ璃瑠は向かう。こちらに背を向け引き金を引き続ける美樹の姿があった。
美樹が撃ち終わるまで待って見ている事にする。
マガジン1本分を撃ち終わると美樹は璃瑠に気付いて、その方へ振り返る。
「璃瑠か。珍しいな」
「面白いものが見れると聞いたものですから」
ヘッドセットと防弾グラスを外しハンドガンからマガジンを引き抜きながら美樹は射撃訓練場のレーンから出てきた。
「黒蛇の追加オプションの試射ならもう終わっちまったよ」
「どうでした?」
「実用性を除けば完璧だったよ」
美樹には硝煙の匂いが染み付いていた。ガンオイルで汚れた手を裾で拭いながら美樹は笑う。
「璃瑠、身体の調子はどうなのさ」
「平和な日々を享受する位なら」
「そうともいかんだろうね」
独立派の東京スカイツリー占拠テロから丸二日。多くの犠牲者を出しながらも璃瑠の活躍により制圧されたそれから二日間。独立派の動きは全く無かった。
占拠事件の失敗は打撃となったということかもしれなかったが、未だ予断は許されなかった。
あれで終わり諦めるにしては、捨て身の計画過ぎた。なんらかの二の手を打ってくるとしか考えられない。
璃瑠は美樹に問い掛ける。わざわざここまで出向いた本来の目的の為に。
「美樹さん」
「ん?」
「鷺ノ宮こよりの葬儀、行かないんですか」
「行けるわけ……ないだろ」
美樹が視線を逸らすも璃瑠はそのまま美樹を見つめ続けた。
暫くの沈黙を挟んで美樹は顔をあげる。
「璃瑠、ちょっと半日、付き合ってくれないか」