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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【13章・塔は開かれた】
238/282

【13ー7】

【13ー7】


「だから、こんな……!」


石神佐樹の放った砲撃が美樹に向かって着弾し爆発を起こした。スカイツリーの鉄骨が大きく振動する。

その爆煙の向こう側から一筋の閃光が走り、黒煙をかき消すと閃光は収束し一線の砲撃となった。

その反撃に石神佐樹は動揺しプレッシャーリージョンを発動し後退する。細く鋭いその砲撃はフィールドに入ると下向きに逸れ石神佐樹は安堵した。



美樹が立っていた。砲撃によって炎上したその足場の上で確かに立っていた。

美樹がまだ無事であることに石神佐樹は驚く。


「それじ……ゃあ、そのやり方……じゃあ、誰も救え……ない」

「知った様な口を」

「私達……が本当にやる……べきだったの……は、伝える……事だろう」

「もうそれで変わらないから、この国を作り直そうなんて事になるのよ!」

「そん……な事言っ……ているんじゃない。 お前はあ……の子と本当に……向き合った……のか!?」

「!?」

「何もか……も諦めたフリ……をして、本……当は向き合うの……が怖かっただけじ……ゃないか!」

「何も知らないで、人の心に踏み込んでーーあなたは!」

「伝わら……ないからって、……伝えられないからって、……それで、逃げ……出しちゃ何も……変わらない!」


それじゃあ、私と同じ轍を踏む。本当は諦めずに踏み込んで、分かろうとして、伝えなくちゃいけなったんだ。

いつからか、それを諦めてたんだ。


「何も知らないくせに、偉そうにごちゃごちゃと!」


石神佐樹が拡張レールを構え直し砲撃を精製する。大気中の魔力が石神佐樹の一点へと集まり離れ集束していく。美樹が飛び出した。

引き金を引き続けながら石神佐樹の元へと飛び込む。銃声と共に黒蛇が跳ね上がる。それを無理矢理押さえつけて石神佐樹へ弾丸を撃ち出す。弾丸は石神佐樹のプレッシャーリージョンの領域内で下へ屈折させられるもそれを厭わず美樹へ突撃した。プレッシャーリージョンの領域内に侵入した美樹の体が悲鳴をあげる。確かな重さが身体中を締め付けてくる。


「3.02A-05Mインペリアルバスター!」

「物分りが……悪いん……だよ!」


美樹を石神佐樹の銃口が捉え引き金を引こうとするのが見えた。その真っ正面で美樹は右手を伸ばす。視界の先には石神佐樹がいた。彼女の構えた銃身を視線で捉えてそこへ向かって全てを込める。

世界は、ずれる。


銃身の一部の位置をほんの少し、距離にして数センチ横にずらした。

瞳に映る世界がぶれて焦点が一瞬合わなくなる、古いフィルムの様に映像が左右に動いて徐々に正しい線となっていく。


「!?」


石神佐樹の拡張レールの一部が横にずれたことでその長い銃身は綺麗に叩き斬られたように一部が消し飛んだ。

ずらされた銃身の先は今まで一体となっていた銃身から切り離されて落下していく。使い物に鳴らなくなった拡張レールからハンドガンを切り離すと石神佐樹はその銃口を美樹に向けた。


「こんなことで、こんなところで私は!」

「5.02B-Xスライドシフト……!」


その手にしたハンドガンの、グリップから先をずらして切り飛ばした。

石神佐樹がそれを手放すも、直ぐ近くで爆発を起こした。その爆発をモロに受けて姿勢を崩す。


美樹が黒蛇の出力を最大まで上げる。呼応した愛銃の銃身に手を添えて全力で引き金を引いた。


「ーーっ!?」

「こいつは外さない……!」


美樹の砲撃は石神佐樹を呑み込んだ。


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