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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【13章・塔は開かれた】
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【13ー6】

【13ー6】


ずっと悩んでいた。

梨花の事。


梨花の寿命は長くない。確実に魔法は彼女の命を蝕んでいく。

魔法が何故有毒なのかはいまだに分からない。けれど、確かに魔法は梨花の身体を蝕んでいく。

その事実を前にして何も出来なかった。


野方の言う新しい強い国などどうでも良かった。確かに拾われた恩もここまでしてくれた感謝の気持ちもあった。

野方に言われるまま彼の指示をこなした。自らの才能を存分に使って。


自分がこの国を変えるのだと思った。

力で、どうしようもない間違いだらけの世界を変えるのだと。


けれど、気付いてしまった。何処か他人事だと。新しい国だろうと何だろうと関係がない様に思えた。どうでも良い様に思えた。

ただ流されるまま状況を受け入れて流れに身を委ねて。


梨花の寿命が長くないと聞いて居ても立っても居られなくなった。けれど、出来る事など何も無かった。

だからその現状に苛立ち変えようともがいた。何も出来ない事実を忘れるかの様にただひたすら任務をこなした。


それは逃げてるだけだ。

そんなのは分かっている。二度と元に戻らない事も分かっている。ならどうすれば良かったというのか。

梨花は止められない。彼女の存在理由が認識欲だから、それを満たせるのは魔法しかない。けれど、魔法は梨花を傷付ける。


なら。

何が出来た。




「早急に全てを終わらせる。全て終わらせて私はあの子と帰る!」


石神佐樹が魔力を集束させた。目の前の美樹へ向かって全てを撃ち込む決意と共に。


「本……当にそれ……で良い……のか……よ! お前は!」


美樹は声を絞り出す。こよりの言葉が頭を叩く。

何も分かってないくせに、分かったふりして、ワケもワカンナイで、がむしゃらになる。


美樹には石神佐樹と同じ様に思えた。

どうしようもない事実が目の前に直面して、そのために何が出来るか分からなくて。何をすれば良いのか分からなくて。

そうして分からないまま何かにぶつかっていく。

それが正しいのか近道なのかも分からずに。そうして居ないと不安で押しつぶされそうになるから。


だけどそれじゃあ駄目だと美樹は思う。

本当に必要な事はもっとシンプルで気付けないだけだと。そしてそれに気付けなかったのだと。



「あなたさえ居なければ!」


石神佐樹が引き金を引いた。集束した魔力がうねりを帯び二本の砲撃が絡まり合い美樹へ向かって跳ぶ。


それが眼前を支配し視界が塗りつぶされる。

美樹は動けなかった。身体中を浸す様な鈍い痛みがただのしかかっていた。血が溢れ出て指先から死んでいく。


ここで死ぬのか。私は。


もう分からないんだ。何をすれば良かったの、何が悪かったのか。暗闇に放り込まれてどこへ向かっているのか。


こより。


お前を守れなかったのは何がいけなかったんだ?



『欲しかったセカイと違っても、望んだセカイと違っても、あたしたちはそれを壊しちゃいけないんだよ。向かい合って変えて変わっていくしかないんだよ』


なら、どうすれば良いのさ。お前の居ない世界で私は何を頑張れば良い。

この衝動を何処にぶつければ良い。


私達は本当は何が欲しかったんだ。

私達は本当は何を守りたかったんだ。



「だから、こんな……!」


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