【13ー3】
【13ー3】
「……見えた」
美樹が黒蛇を両手で構えた。銃身の下に取り付けられた拡張バレルが持ち上がり接続し砲撃形態へと移行する。狙いをつけて引き金を引く。
砲撃は石神佐樹より大きく上へ外れた位置へ翔んだ。当たりようもない着弾点だった、しかし石神佐樹のプレッシャーリージョンの発動領域に砲撃が侵入すると、大きく下へ逸れた。それによって大きく上へずれていた砲撃は下へ逸れることでフィールドの中心にいた石神佐樹へと向かう形となった。
「なーー!?」
石神佐樹の目の前すれすれを砲撃が通り抜けた。その風圧で石神佐樹の長い黒い髪が靡いた。
「プレッシャーリージョンによる重圧。それを受けて砲撃は下へ曲がる。それを利用した……けれど、この空中戦で絶えず動き回る相手にそれだけの事並大抵の事じゃない」
互いの距離や位置取りが変動し続ける上に外部要因によって下へ曲げられる砲撃の軌道を計算して直撃コースになるように砲撃を放つ。
それをこの戦闘中の僅かな時間に思い付き更に実践してみせた。
それだけの技量に石神佐樹は驚く。
「今度は外さない……!」
「思っていた以上に厄介ね、あなたは。何の信念も守るものもないくせをして」
「背負ってばかりで重くなってるぜ」
「一発のまぐれで調子に乗って!」
石神佐樹が二発同時に砲撃を放つ。弾かれる様に美樹が横に高速で動いた。スライドシフトで自身の位置をずらす。
美樹が手榴弾を山なりに投げた。石神佐樹のプレッシャーリージョンの発動領域に入った手榴弾は下向きに逸れる前に爆発した。石神佐樹が張った魔力盾に爆風が直撃する。その隙をついて美樹が砲撃を放つ、発動領域に直進した砲撃は下向きに逸れて石神佐樹を掠める。
「何発当てたら認められるのか試してみるか!?」
「何も考えずただ流されて引き金を引く。その怒りの矛先はどこでもいいのでしょう。そんな薄っぺらい人間が!」
「そんな物分りが良かったら誰もこんな事になんてならねぇんだよ!」
「口だけは達者ね!」
「お前の方が口数が多いぜ!」
美樹が黒蛇を構えたまま突撃する。石神佐樹が迎撃として誘導弾をばら撒いた。美樹は一気に下降して追ってくる誘導弾を引き離すと振り向き様に砲撃を放った。美樹という一点に向かって収束していた誘導弾は纏めて消し飛ばされる。
「……全力で行くわよ」
「力んで落ちるなよ」
美樹を前にして石神佐樹が自身の魔力を完全に解放した。