【1-22】
【1-22】
屋内運動場第三倉庫の扉を開くと、その名のとおりの倉庫であった。
卓球台に、バレーボールか何かのネット。分厚い体操用のマットが何枚も積みかさなり、得点電工掲示板がスイッチを切られた状態で並べられている。
室内灯のスイッチの場所が見当たらないと関さんが探し回る。
「ここじゃないですか?」
璃瑠が積んである木の箱の隙間に手を突っ込んでいた。
壁のスイッチの手前に木の箱を積んでしまっているらしい。
ちょっと手間取ってから璃瑠はスイッチに手を届かせた。
倉庫というより他はなかった。
つまるところ何も無かった。
入間沙織が筋トレしながら私たちを待っていたりはしなかった。
「やっぱりなんもないな」
「美樹さんの休日の予定みたいですね」
「ゲームで終わる璃瑠に言われたくない」
「反射神経を鍛えてるんですよ」
璃瑠がそこらかしこを見て回る。
入間沙織を見つけたら、どうするの? か。
考えてもいなかった。
本人がそれを選んだなら、私たちにそれを引き戻す権利はあるのか。
いや、違う。入間沙織が自分から失踪を選んだという証拠は無い。
璃瑠はそう言っている。
それを確かめてからだ。
「美樹さん、ちょっと良いですか」
「なんだ?」
璃瑠が私に指を見せる。人指し指の先から少し血が出ている。
「あれ? どうしたんだ、この指」
「さっきスイッチ押すときに木の箱で切っちゃたんですよ」
大した切り傷でもなさそうだが、見た目がよろしくない。少し痛々しい。
「で、絆創膏持ってないですか?」
無いとは思ったが一応カバンの中を漁る。やはり持ち歩いてない。
余分なものは持ち歩かないのが出来るヤツの証だと言われたので持ち歩いていない。
基本、なんでも璃瑠に持たせる。
「まぁこの程度なら舐めときゃ大丈夫でしょ」
「へ? あ、ちょっ――」
璃瑠の指を取って指先を口に含む。軽く吸うと血の味がした。
てっきり璃瑠の指くらいなら砂糖の味がすると思っていたが。
口から離してハンカチで拭う。
大した傷口でもないので今日中にふさがるだろう。
見ると、璃瑠の口が静と動の間で揺れ動いていた。
何か言おうとしているのは分かるのだが、言葉が出ないようだ。
気のせいか、頬が高潮している様に見える。
「な、なにをしてくれてるんですかぁ!?」
何故か平手が私の頬にとんだ。
何故だ。
平手打ちされたのは私であるのに、璃瑠の頬が赤くなっていた。
口から泡を飛ばすとはこのことか。
「ば、馬鹿じゃないんですか!?」
「いやなんで……」
「一回死んでください」
慌てた璃瑠の姿を随分久しぶりに見たような気がした。
とりあえず、よく分からないが理不尽だ。