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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【12章・太陽は沈んだ】
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【12ー10】

【12ー10】


「それで多分彼女達は救われる、私達にはそんなこと出来ない」

「覚悟は?」

「あるよ、クサイ言い方だけど、誰かを救うためにここまで頑張ってきたんじゃないのか私達は」


私の目を璃瑠は数秒覗き込んだ。瞳孔の微かな流動すら見えるほど、私は目を逸らさなかった。

無表情のそれを璃瑠は崩して、瞬きをする。次に見えたのは諦めでも呆れでもない表情で。


もし新宿あらやどが美智を救えると言うのなら。今まで暗闇に囚われて動けずに居た彼女をそこから連れ出せるというのなら。きっとそれは今でなくては駄目なんだ。そしてそれは私達には出来ないことだ。

美智の求めていた救いがどんな形であれ、新宿の言葉ほど近いものは無いだろうから。

璃瑠が口を開いた。


「見逃す……というのでは問題が有りますが、逃したならどうでしょうか」

「……故意ではなく過失だと?」

「まぁ、そんなもんです。幸いここは山奥ですし目撃者も少ない。

新宿は逃走の末、転落死。それを偽装出来ないでしょうか」

「転落死を偽装か。死体がないのはどうする」


璃瑠が少し悩む素振りを見せた。

それを考えるのは私か。彼女達を逃すこと自体は難しくない。

川に転落死なら何とか誤魔化せないだろうか。遺留品を幾つか流す事で偽装する。死体が上がらないのも誤魔化せるかもしれない。


「……というわけだ。明日の早朝あんた達を逃がす」

「それは有難いが良いのか?」


私の提案に美智と弘佳と新宿は驚いた。

出来れば直ぐに逃したい。公安に定期報告を催促される前に動きたい。あまりのんびりしていると怪しまれる。


「少なくとも私はそうしたい。それにそれが最善だと思ってる」

「事実が露呈すればお前の立場は危なくなるぞ」

「それは私の問題だ」

「……どうしてあなたがそんなに頑張るのです?」

「あんたの幸せを願う人だって居るんだよ」

「……。」

「ありがとう」

「だから生きろ。誰かを呪う人生でないものを」


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