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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【12章・太陽は沈んだ】
224/282

【12ー7】

【12ー7】


美智が部屋から出てきたのとすれ違いに私は新宿あらやどの部屋に入った。


「美智と何を話していたんだ?」

「プライベートだよ」

「あんたがやった事で、不幸な人間を生み出した。彼女もそうだ。その事に後悔はないのか」

「あるさ。今でも押し潰されそうになる。人は後悔の中でしか生きていけない。過去ばかり見てる人間は特にな」

「そればっかりは同感だよ」


私達は過去の積み重ねの上にしか立てないから。だから埋れそうになる。それが悪いことだとは言い切れないと私は思う。


「落合璃瑠はどうだ? 今でもオレを恨んでいるのか」

「どうだろうな。わかんないよ。ただあいつが何もかも馬鹿げた事だと思っている原因はあんたかもしれないな」

「当時からだったよ。だが今日見た時は幾分違って見えた」

「?」

「あの頃より目が生き生きしている」

「あれでか」

「骸骨からゾンビ位にはレベルアップしてるよ」

「そりゃ大したもんだ」

「それに恋する少女の顔になった」

「恋!?」

「鷺ノ宮こよりを見る目が完全に嫉妬の目だったよ」

「なんと言う……」


璃瑠の気持ちが私には分からない。いや分かっているけれど理解すれば引っ込みがつかなくなる。

それが何故だか怖い。


「それで本題だ。公安六課は何を要求している」

「あんたを連れ戻せとしか命令を受けていない」

「今更アルカナ計画を掘り起こしてきてどうしようって言うんだよ」

「あんたは知りすぎだ。どこから良くも悪くも狙われるだろう」

「オレが消されるのはともかく何処かにヘッドハンティングされるのは我慢ならないわけだ」

「上は多分そう考えてる」

「お前自身はどう思う」

「現に今革新派の接触を受けているわけだしなぁ」

「親子の再会みたいなもんだろ」

「涙じゃなくて血が流れかねん、今すぐではないだろうけど」

「だがオレの知り得る事は全て話した。あの二人はもう十分なんじゃないか」

「弘佳はまだ人類の進化を諦めていない」

「オレの知識じゃそれは無理だ」

「上位次元の生命体、そしてそれへと進化することは可能だと思うのか?」

「問題は上位次元と言うものが眉唾なんだよ。アルカナ計画は確かにそれを目的としていたが、聞いての通り魔法は周囲の認識を捻じ曲げるというものだ。原理はあれだが、この次元でも理解できるものだ」

「理解できるものは上位のものでない。クラインの壺と同じ理屈か」

「となると上位次元自体存在しないか、オレ達には認識出来ないという事になる。魔法でならそれは可能になると弘佳は以前思っていて踏み切ったようだが魔法はそんなに便利なものでもないさ」

「ならアルカナとは何だったんだ」

「計画のきっかけとなった始めての次元接触や美智によって開かれた次元の扉。これらの事象の際にこの世界ではないものと接触したのは確かだ。だがこれ以上は分からん」

「そうか」

「あぁ。」


魔法の存在する領域が新宿のいうとおり、魔法使いの脳内概念だというのなら、新宿区大規模爆発事件の際に大量の魔力が流入してきたのは何故なのか。

弘佳達は上位次元との接触によって魔力が流入してきたと考え、故に魔法は上位次元のものであると考えた。現にアルカナ計画もそれと同じ発想を元に始まった。

だが魔法は上位次元のものではなく、私達魔法使いが周囲の認識を捻じ曲げることで起こすものであり、上位次元そのものがあるかどうか疑わしいものであると新宿は言った。

しかし新宿区大規模爆発事件の際や東永井ビル消失の際に大量の魔力が何処から流入したのは確かでありその際に何らかのこの世界ならぬものと接触したのも確かだ。


上位次元はやはり存在していると考える方が自然だった。


「話を変えよう。オレはお前に着いて行く気はない。やることも行くべき場所もある」

「……もしあんたがその知恵と力を誰かを傷付ける為に使わないと言うのなら、もしあんたがあの子を幸福に出来るというなら。

私には止める理由はないよ」

「……聞いてたんじゃねーか」

「それがあんたが過去と向かい合う方法ならさ」


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