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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【12章・太陽は沈んだ】
223/282

【12ー6】


【12ー6】


新宿あらやどの部屋を一人、美智が訪れた。


「……お久しぶりです」

「あぁ。」

「……。」

「オレは逃げ出した。今でもなにが正解だったのか分からない」

「……。」

「お前を助けた事は本当にお前の為になったのか今でも悩む。美智、オレを恨んでいるか?」

「……いいえ」

「恨んでいてくれた方が気楽だったかもしれないな」

「……。」


アルカナ計画の中断は全ての破棄を意味した。政府組織が人体実験を行っていたこと。更に魔法というものに手を出していたこと。

全てが明らかになってはならない事実であった。

利用価値があると判断された落合璃瑠を除き全ての強化人間と被検体を破棄し、組織は解体。参加していた科学者、職員達は別の研究施設や公安へと配置換えされた。


新宿はその時、美智を生かす選択をした。


「あの時、オレにはお前が哀れに見えた。誰かの都合に振り回され、そして殺される。そんな運命はおかしいと思った。

だから、もっと生きるべきだと思った」

「……。」

「けれど、それはオレのエゴだ。そんな過去と宿命を背負った人が自由に幸せに生きれるなんていうのは無理だった」


もしそれが叶えられないのなら。

行き着く先は憎しみだけだ。

その矛先が見つからないから、突き立てる先は大きなものになる。


「美智。お前は何をしたいんだ。何を思って此処まで来てしまったんだ」

「……私は生きていると証明したいです」

「どうやって」

「成し遂げてです」

「何をもってして」

「人も世界も変わらないといけない。でなければ同じ事を何度も繰り返す。私の様な子供が生まれる事のないように人類を進化に導かなくてはならないんです。そのための力も宿命も授かった。それが生きる意味だと背負わされました」

「もうそんな事に拘る必要はないんだ」

「……でもそれが私の使命です」

「それだけが生きる意味じゃない」


その宿命は背負わされただけだから。その重荷はもう背負わなくて良いのだから。

復讐の矛先を大義名分で塗りかくして、人と世界へ喧嘩をうって。それでは何も救われない。


「……。」

「なぁ、オレと何処か遠くへ行かないか」

「……え?」


新宿の誘いに美智は虚を突かれた。


「世界の手なんて届かない場所へ。煩わしいものは何もないどこか。もう疲れたんだ、立ち向かうだけが人生じゃない」

「……私は」

「オレにはお前が必要だ、美智」


「何処かで静かに暮らそう」

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