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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【12章・太陽は沈んだ】
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【12ー5】


【12ー5】


「東永井ビル消失直前に私達は互いの記憶を覗き見たっていうか交差したんだけどこれはどう言う事だ」


私は話を続ける。

あの時、私達はその場にいた他人の記憶の映像を確かに見た。知り得る筈のない他人の頭の中を。


詳しい話を聞いて新宿あらやどは口を濁した。


「……5ナンバーであるお前ががその場にいたものの記憶を観測したことでそれが無意識のうちに共用されたのではないかな」

「記憶を観測?」


急に歯切れの悪くなった彼女は少し考えてから続けた。


「お前はおそらく上位観測者では収まりきらない。その上に居る」

「?」

「人の記憶までも観測してみせた。信じられないことだよこれは。」

「……私が」

「人の記憶までも観測した……あり得ない」


しかし現に私はその場にいて、彼女達の記憶を見たのだ。無数のフィルムカットをかき集める様にして。走馬灯の如く。

私の記憶能力は上位観測者としての能力によるものなのだろうか。記憶の中にダイブし五感全てが記憶の中でも機能し、見ていなかった細かい箇所も鮮明に思い出す事が出来る。


これも上位観測者だからと、いう説明がつくのか。


新宿が黙りこくったので弘佳が話題を変えた。


「なら魔法の有毒性についてはどう説明しますの」

「脳の酷使に身体がついてこれないんだろうな。そもそも魔法自体理に反する。周囲の観測者の認識を捻じ曲げることで魔法使用者内の脳内領域の概念を現実世界へとフィードバックする。この反動が出ないわけがない」


だがしかし、魔法使用者以外にも魔法は有害な筈だ。魔法反応の生じた場にいた全員に悪影響を及ぼす。

周囲の認識を捻じ曲げているから捻じ曲げられている方にも悪影響が出ているのか。


「なら魔法の有毒性をなんとか回避する方法はないの? ないの?」


こよりの質問に新宿は腕を組んだ。

そればっかりは難しいのか。そもそもアルカナ計画で完璧な魔法使いを目指すのなら、それも目的に入っていそうなものだが。


「そこまでは分からん。原因がはっきりしない以上なんとも言えんが、魔法という概念を中毒者から引き離す事が出来ればあるいは」


魔法という概念か。

私の中にも確かにある。確かに魔法を信じてる。


私達の魔法は御伽噺の様に素敵なものじゃない。突き詰めれば莫大なエネルギー反応とそれを利用し転用した兵器でしかない。

けれど、そこにあると信じているからこそ存在するのが魔法だなんて随分とメルヘンな話じゃないか。


「概念を引き離す?」

「魔法なんて忘れて静かに暮らせってことさ」

「よく言うよ」

「オレだって忘れたいもんだよ」

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