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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【12章・太陽は沈んだ】
221/282

【12ー4】

【12ー4】


「自らを上位の観測者へと押し上げ、周囲の認識を捻じ曲げる。それが魔法だ」


観測者が認識する事で存在は確定される。その認識を操作出来る存在。

単純にすると、魔法使いは目が良くて声の大きい存在だ。何かを見つけるとそれを指差し叫び出す。それにつられて、周囲の人間も魔法使いが指差し指摘したことでその存在に気付く。誰もが気付かなかったゆえに今まで存在していなかったものが、周囲の人間に認識されることで存在することになる。

魔法使いは存在していなかった魔法を観測することで周囲に認識させ現実に存在するものへと昇華させる。


「魔法の存在する領域はお前たち魔法使いの脳内だ、それを現実へとフィードバックしているんだ。

そしてその中でもより強力なものを5ナンバーと定義した。

観測者は自らが観測したものを否定する術をもたない。どんなに否定しようと観測してしまったものは既に実在してしまうからだ。しかし上位観測者は違う。自ら観測したものを否定しネジ曲げる」

「魔法使い全てがそうではないのか」

「魔法使いは魔法の存在する領域からフィードバックしてくることは可能だが、現実に既に実在、つまり認識されているものへ介入することは出来ない」

「性質が違うのですわね。無の領域へと違う領域から有を引っ張ってくるのが魔法使いであり、5ナンバーは有を違う有、もしくは無へと変換することが出来る」

「そうだ、つまり周囲の人間そして上位観測者自身が既に認識し存在を確立したものを否定することが出来る。見たものを見なかったことに、あったものをなかったことに。普通の観測者ではそれは出来ない」


人は現実に存在しているものを存在していないと完全に思い込むことは出来ない。

故に観測してしまい、その存在は確定される。


「5ナンバーの特異性はエネルギー反応以外の方法をもってしてこの世の理に介入出来ることだ。つまり観測者によって認識されている現実へと介入して認識を捻じ曲げる。既に観測されてしまい存在を確立したものを否定出来る」

「ちょっと待てよ、私は5ナンバーだけどそんなこと出来ないぜ」

「お前の5ナンバーは何だ」

「物質の位置をずらす」

「やってみせろ。そこの椅子をずらせるのか」


部屋の隅に放置された椅子を新宿あらやどが指差した。

言われるがままに、私はスライドシフトを発動する。突き出した右手の平に視点を合わせ、ぼやける視界の中に椅子の存在を認める。

椅子の周囲の空間へと干渉し、位置をずらす。

右手を滑らす。触れることなく椅子は横に30cmほどずれた。


「ほれ」

「今その椅子がずれたのはお前の念力のようなもので押したわけではない。位置情報を書き換えたわけか」


確かにテレキネシスとは違うが。


「私達がAという位置にあると認識している物体。

その事実に介入して、Aという位置という情報を書き換えてBという位置にし、それを周囲と自分自身に認識させる。すると周囲の人間、つまり観測者によって物体はBという位置にあると観測され確定される。それによってAという位置にあった物質はBという位置に移動する。ということですか」

「今オレ達は椅子がズレる過程は見えずズレた後の椅子しか見えなかったからな」

「スライドシフトはそういう理屈だったなんて……けど、上位観測者である5ナンバーが自由に認識を操作出来るなら私のスライドシフトが物体の大きさや質量に影響を受けて、しかもずらせる範囲や距離に限界があるのはおかしくないか」

「おそらくそういった制約や限界があると思ってしまっているからだ。魔法の話をしながらでおかしなもんだが、常識的な尺を何処かに当てはめているんだろうな。これ以上は無理だろうとか」

「うーん」


そういうものなのだろうか。自分で自分の限界を決めてしまっているのか。

それを超えることが出来るのか。


ふと一つの事を思い出す。


「……なら東永井ビルが消えた理由はまさか」

「上位観測者が観測出来なかったからですか」

「上位観測者が認識出来ない、もしくはしないものは存在しないと同義だ」

「待てよ、あの場にいた5ナンバーは私だけど足場になっているビルなんて認識してるに決まって……いや違う」


そうじゃない。あの時に消えたきっかけは入間沙織の言葉だった。


『なにこれ、ねぇなにこれ。私一体……ねぇ、答えてよ!?』

『こ、こここ………………………わ、わわわわたたわたわたわたしは』

『消える……!?』

「入間沙織の消える、という言葉で全てが消えた」


タイミングからして、彼女が関係しているのは間違いない。


「錯乱状態の入間沙織が認識齟齬を起こした事で全てが消えたと言うの? まさか?」

「入間沙織はビル内に居た突入部隊の存在も人質の存在も知らなかった。つまり認識出来なかった」

「あの時視界がぼやけていたのは入間沙織の認識している世界を共用させられていたからですわね」

「認識齟齬を起こした入間沙織が自分自身の存在認識があやふやでそれに錯乱し消えると思い込んだ事で入間沙織が消え、更に入間沙織が認識していた東永井ビルと認識していなかった突入部隊と人質も消えた。」

「それだけのポテンシャルを彼女は秘めていたというわけですか」

「入間沙織が魔法に無害だったのは魔法という存在を限りなく認識していなかったからかもしれないね、認識してなかった」


認識されないものは存在しないと同義だ。

こよりがいつか言っていた。

あたし達が社会に認められない限りそれは生きていないと同じなのだと。

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