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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【一章・少女は欺いた(後編)】
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【1-21】

【1-21】


「サオリンは昔から勉強も出来たし運動も出来たし、それに他の人に優しかったの」


 入間沙織とルームメイトになってどれくらいになるかは知らないが、薬師寺早苗の言い方には子供時代を懐かしむような語り口であった。

 今もまだ子供だと思うが。


「困ったことがあったら他の人はみんな、サオリンに相談してたし、どんな時でもサオリンは他の人に手を差し伸べてた」


 入間沙織の評価を周囲の人間に聞くならばおそらくどれも同じようなものしか返ってこない筈だ。

 優等生。人柄も良く、欠点のない。完璧な人間。


「だけどサオリンはいつも孤独な人だった。友達も楓っちしか居なかったし。

 でも他の人はみんなサオリンのことを頼りきってた。でも一歩引いてるんだよー。傍から見たらどう見ても。」


 高い壁だ。入間沙織を隔てていたものは。それを彼女が作ったのか、周りが作ったのかは分からない。

 それを私が知る術はない。


 入間沙織が失踪する理由など周囲の人間は有り得ないと言った。

 それは事実でありそうでないとも言える。

 周囲の人間にとっての入間沙織という人間は自分から失踪するような人間でなかった。困難から逃げ出さず、そして周囲の人間に優しく手を差し出す。「そういう」人間だった。

 彼女の周囲にそり立つ壁ではそうとしか見えなかった。


 しかし、薬師寺早苗は入間沙織が耐え切れなくなって逃げ出したのだと思っている。

 それは周囲の人間からは決して出なかった言葉だ。


「サオリンは耐えられなくなっちゃたんだよー、きっと。そんな風に逃げ出したサオリンを見つけたら刑事さんはどうするの?

 連れ戻すの? またこの場所に?」

「……私の任務は入間沙織を見つけ出すまで。それから後は彼女自身が決めることだよ」


 人生を比較してはならない。そこに一定の評価など存在しないのだから。

 入間沙織の行為を否定してはならない。彼女の心境は察することしか出来ないのだから。

 だから私は私情を挟んではならない。

 けれど、私は自身と彼女を比べてしまう。


「サオリンには外壁よりもっと乗り越える壁があったのかもね」


 薬師寺早苗がぽつりと呟いた。


 璃瑠が私たちを呼んだ。次の場所に行くらしい。


 一つだけ。

 私の気のせいかもしれない。

 私の思い違いかもしれない。

 薬師寺早苗の言葉を深く考えすぎただけかもしれない。

 けれど、一つだけ。


 他の人とは、入間沙織から見た他人ではなく。

 他の人とは、薬師寺早苗から見た他人ではないのか。


 そうだとするならば、入間沙織は薬師寺早苗に手を差し伸べることは無かった、そう言いたいのか。

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