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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【11章・魔術師は夢見た(前編)】
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【11ー10】

【11ー10】


「5.02Bプレッシャーリージョン」


のしかかるような重圧。空気が一気に張り詰める。空気が水中の中のように重たくまとわりついてくる。体が重くなり、飛ぶ事すら難しくなる。

この感覚は知っている。

このプレッシャーは。


「この感じ……佐樹か!」

「えぇ。」


佐樹が居た。長い黒髪を靡かせて。この空域で悠然と。

弘佳と美智も戦闘を中断し佐樹に対し警戒していた。

佐樹に向けて美樹は黒蛇を構える。

美樹の疑問は尽きない。何故、佐樹が介入してくるというのか。

独立派である佐樹が革新派である弘佳達に助太刀するとも思えない。現に弘佳達は佐樹の出方を伺っている。


「現空域、及び新宿東永井ビル周辺5km圏内全ての戦闘員、非戦闘員に通達。これよりこちらは東永井ビル及び周辺5km圏内を制圧する。速やかな離脱を求めます」

「何を」

「従わなければ、如何なる暴力行動も厭わない」


独立派の、佐樹が制圧に来た。革新派の妨害の為だとすれば遅すぎる。ならば他に何の理由があるというのだ。

単騎で全ての勢力を相手にしてまで、ここを抑えようとする理由があるというのか。


弘佳が弓に矢をつがえたまま、佐樹に言う。


「随分とぶっそうな事を仰るんですのね」

「少なくとも平和的に退いてくれるのを期待はしてるわ」

「ここを制圧することであなたに得があるといいますの?」

「公安六課と革新派を相手に回してお釣りがくる程度にはあるわ」


パッとみれば4対1。だが、そう動くとは限らない。美樹達から見れば弘佳達と佐樹は何としても捕らえたい相手であるし、弘佳達から見れば美樹も佐樹もどちらも厄介である。そして佐樹は全ての勢力を相手にしようとしている。

どう動くか決めあぐねていた。


美樹は悩む。


「こちら伏見、司令部こっちに回せる戦力は」

『現在突入部隊全てがロスト! 一体そっちの状況はどうなっているんだ!?』

「……見ての通りっすよ。全部消えた」


突入部隊すら消えたのか。あのビルごと全てが。


「10秒以内に撤退行動に移らなければ敵対組織と判断する」

「一体そっちは何しに来たんだよ、記念撮影でもとりにきたのか? だったらシャッター切るのは私に任せてくれよ」

「残念だけど、私には時間がないの。手加減は出来ーー!?」


静寂を切り裂いて銃声が轟く。佐樹に向かって発砲したのは美智だった。放たれた弾丸は佐樹の元に到達する前に急速に下に逸れた。


「……なに?」

「どうしてそうあなた達は……! 5.02B-Fプレッシャーリージョン・オーバードライブ」


それは悲鳴だった。終末の悲鳴。

甲高い悲鳴が頭の中へと入り込んでくる。その悲鳴の様な音が全身を駆け抜け佐樹の周囲に広がって行く。音が衝撃波の様に美樹にぶつかる。

衝撃波の通った後から空間が重くなった。

空気の一粒一粒が全身にのしかかる。身体中が軋む。空気がまるで降りてくる様だった。

深海では金属すら水圧で潰れひしゃげて行く、そんな映像を思い出した。

あれと同じだ。潰される。


「ぁ……かっは」


飛ぼうとしても重い空気が潰そうとしてくる。

落ちていく。

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