【11ー7】
【11ー7】
光景が浮かんでは消えた。無数の映像が連なり細い線となり集束して消えた。何かが伸し掛かるような重圧が身体中を満たして消えた。
脳の一部をごっそり持っていかれたような喪失感と同時に現実感が入れ替わりに戻ってくる。私は手を見た。自分の、そう認識している筈の手を見た。
指。
薄汚れた指。引き金を引き続けたことで、荒れた手。確かに私の手のひら。手のひらに合わせた焦点の後ろで風景が揺れる。
何だよ今のは。
幾重もの時間を過ごした気がする。映像に呑み込まれた。記憶のフラッシュバックのように。けれども、あんな記憶は無い。それに私の存在はそこには無かった。あっても、私の視点では無かった。
周りを見渡すと光景は変わっていなかった。ビルの屋上で私とこよりが弘佳を挟み込んで砲撃をぶっ放したあの瞬間と同じ。
「何だよ、何なんだよ」
「美樹ちゃんも見えた? 見えたの?」
「何ですの、今のは」
あの映像は。
誰かの。
過去だ。
過去の記憶だ。
誰かじゃない。
私の。
こよりの。
弘佳の。
璃瑠の。
美智の。
沙織の。
記憶だ。
その記憶を共用したのか。いや違う。覗き見た。覗き見えた。
記憶というのは脳細胞の電気信号だ。それを映像化し、なおかつなんの機材もなく互いの脳に伝達した。
あり得ない。こんな事が起こり得る筈がない。
記憶の共有化。他人の心理的状態の視覚化。人の電気信号へと介入したというのか。
仮定が一つ生まれた。
「次元の扉が開いた結果だと言うのか」