【11ー5】
【11ー5】
この人は哀しい人だと、沙織はこよりと何度も話すうちに気付いた。
家というものに認められなくとも世界は自分を認めると信じ、それを目指してきた。家という存在から逃れるために。
けれど、世界が彼女を認めない時がきた。
女性を好きになってしまったから。
それが拒絶を生み、理解を拒み、世界から認められなくなってしまった。それは孤立だ。そして彼女の言葉を借りるのなら、それは存在してることにはならない。
沙織は、こよりが何故女性を好きになってしまったのかは知らない。どんな相手なのかも知らない。
けれど、その話を聴いて沙織は確かにネガティヴな感情を抱いた、と思う。その程度がどうであれその事実は揺るがない。
それを否定はしない。
けれど、こよりは言う。
同性愛者(こより自身はそうではないと否定しているが)と接触することになんの被害があるのかと。
「あたしは、沙織ちゃんに恋愛感情を抱かないだろうし、仮に抱いたとしてそれは男性と何が違うの?」
「ぜんぜん違う」
「もし沙織ちゃんが、あたしに言い寄られるのが嫌なら断れば良いだけだよ? それって男性の時と一緒でしょ?」
その答えは沙織には出せなかった。こよりがそれを望んでいるとも思えなかった。
その意識の根底から変革しようというのだ、こよりは。
けれど、そのきっかけも、理由も、終着地も、哀しいことなのだと。誰かに認められなければ存在してることにはならない。そんな言葉を言うこよりは矛盾する。
その恋人とやらは認めてくれるはずだろう。それだけではダメなのだろうか。