【1-1】
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聖マリア学園はキリスト教系の寮制の女学校である。
去年開校二十周年を迎えたそうで、私には基準が分からないがわりと新しいようである。
新しい建築であるが三年前に改築を行い、セキュリティ面は完璧らしい。
外壁は高く、防犯カメラが24時間稼働しており寮生活にありがちな寮長の目を掻い潜り……なんてのは無理らしい。
まぁ寮に入ったことはないので、実際どんなものかは計りかねるが。
とりあえず言うなれば、私とは程遠い世界である。
それと言うまでもないが金持ちのお嬢様ばかりである。
そんな聖マリア学園の応接室にある、なんとも居心地のいいソファに腰掛けて私の居心地の悪さは最悪であった。
まず応接室に通されただけで、貧乏性の私の体は拒絶反応を示した。
金かかってんな、と。やばい、蕁麻疹が出てきた。
「緊張しちゃうな、こりゃ」
「現場に入るときはいつでもそうあって欲しいものですね」
私のこぼした嘆きに鋭く横の少女が返す。
このちんまいのが私の現パートナー(別の人に変えて欲しい)である。
落合璃瑠、聞くところによると史上最年少の公安部員らしい。
15歳にして私よりキャリアが長いと聞く……こんな国で大丈夫か? まあ着任したての私と比べてもしょうがないが。
生意気にして不敬な口ぶりに対し私は璃瑠の髪をかき乱しながら諭す。
「リラックスが私のモットー、そして私という存在自体が癒し」
「賎しいの間違いじゃないですか?」
私の手を払いのけて璃瑠は髪を手櫛で直す。指先で栗色の細い髪が踊った。
性格は不敬、生意気、根暗、堅物、皮肉屋、喧嘩っぱやく、絶えず不快感と嫌悪感にまみれているせいで目付きが悪いと、
まったくもって言うことなしである。
それでいて見てくれは良いと、嫌な人間というより他はない。
邪魔になるからと短くしている髪を伸ばせば何処ぞの美少女コンテストとやらで、
なかなかの成績を収めてくるにちがいない。まぁ優勝するのは私であろうが。
ここで待たされて5分経っただろうか、という時にドアが開いた。
長身の女性が入ってくる、化粧っ気は薄く切れ長の目が印象的である。
こういった所ではシスター服かと思ったが黒のスーツであった、意外。
というよりも、高校の制服にコートといった出で立ちの私たちが場違いである気がしてくる。
まあ年相応であるし、一応わざわざ制服を着る理由もあるのだが。
スーツの女性が頭を下げた。
「お待たせしてすみません。関と申します。学園からは捜査に最大限協力するよう言われております」
「公安部公安第六課の伏見です。こっちは同じく六課の璃瑠……じゃねーや、落合です」
公安部公安第六課超自然現象及び事件特別対策係。
やたらながったらしいので、六課とみな呼ぶ。
良い略し方がなかったらしい。ゲンケンと呼ぶのもいるが、いまいちだと思う。
超自然現象とは言ってはいるが、実情は巷で「魔法」と呼ばれている現象を追っている。