【11ー3】
【11ー3】
「こより、話がある」
そう呼び出されて、こよりは美樹の家へ向かった。出迎えた美樹の表情は暗くそれを見てこよりの気は萎えた。
「話って何かな、話って」
「こより、私達別れよう」
「何それ、ホント何それ」
美樹の顔を正面から覗き込むと、美樹は視線をずらした。
「なんで」
「なんで、ってそりゃ」
「あたしの家のせい?」
こよりの質問で美樹は外した視線を戻した。
妙な沈黙が流れてから、美樹は口を開く。
「あれだけ反対されて、お前が勘当されるなんて聞いたら」
「そんなの関係ないよ」
「なくない。それに鷺ノ宮家は」
「どうせ分家だから、たいした名前でもないよ、ないない」
美樹は強いと思う。
こよりはそう思う。
けれど、彼女は自由奔放に破天荒に振る舞うそぶりを見せながらいつも根底には常識を抱え込んでいる。
だから、二人の関係に美樹は他の問題を絡めてしまう。
こよりは例え勘当されようと構わなかった。美樹との恋人関係が原因で勘当されようと家などどうでもよかった。
ずっと嫌いだった。
鷺ノ宮という姓が。
鷺ノ宮という家が。
鷺ノ宮という人が。
いつからか反発を抱き。
いくつもの反抗をして。
その一つで普通高校に行き、美樹と出会った。
だから、これはきっと運命だと。
それは許されない関係だった。
同性愛という事実はどうしても周囲から認めてもらえなかった。社会も周囲も家も。
鷺ノ宮という存在が自分を認めなくても構わない。
けれど、世界が自分を、自分達の関係を認めないのはこよりには耐えられなかった。許せなかった。
こよりが黙りこくったのを見て、美樹は言葉を続けることが出来なかった。
例え周囲がどう見たって、周囲にどう見られたって、美樹は構わなかった。
けれど、美樹とこよりの関係で、こよりの人生を曲げてしまうのは怖かった。
好きならそれ以外はどうでも良い。
そんな言葉でこよりを何度も慰めて、気付けばそれは美樹を裏切る。