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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【11章・魔術師は夢見た(前編)】
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【11ー1】

【11ー1】


「なぁ、璃瑠。何故、春先に私達はおでんを作っているんだ」

「食べたいって言ったの美樹さんじゃないですか」

「いや食べたいとは言ったけどなんで、六課のオフィスで作るんだよ」


六課の給湯室の一角を占拠しながら、私達はおでんを煮込んでいた。

馬鹿じゃないのか。


「どうせ暇なんですし、いいじゃないですか」

「いや暇じゃないよ。前回の始末書書いてないからね?」

「私、関係ないですから。美樹さんのミスですし」

「お前から始末してやる」

「10年はかかりますよ」


大根が煮えない。私は煮え切らない。


「今日は春にしては暖かいですね。夏頃の気温になるとか」

「より、おでんを作るのが馬鹿らしくなるな」

「美樹さん馬鹿ですもん」

「お前、餅巾着抜きな」

「餅巾着の入っていないおでんなんて、ほうれん草の入っていない酢豚みたいなもんですよ」

「酢豚にほうれん草は入らないだろ」

「美樹さん貧乏ですもんね」


人が出払い静まりかえった公安六課のオフィスに私達の声だけが通る。もはや留守番役とかした私達新人コンビはたいした仕事もないままだった。


「いや貧しくてほうれん草買えなかったとかじゃなくて、普通酢豚にほうれん草はいらねぇだろ」

「美樹さんも要らないです」

「酢豚に私入ってたらおかしいだろ。あれか、私が豚とか言いたいのか」

「いや、酢豚でなく、私の人生に要らないって意味です」

「一生付きまとってやる」

「ゴリラじゃないんですから」

「ゴリラは別に付きまとわねぇよ。お前、私にゴリラって言いたいだけじゃねーか」

「よくぞ見破った、ゴリラよ」

「ゴリラリアット決めてやる」


璃瑠に放った拳が簡単にあしらわれながら、私はぼんやり考える。璃瑠とも随分打ち解けたもんだと思う。

落合先輩なんて呼んでた頃が懐かしい。考えてみれば私が璃瑠程度から教わることなどない。


「お前と漫才をやってる暇はない」

「でも暇ですよ、私達」

「とっとと、私達に仕事を回せってんだ」

「美樹さん、ど新人ですから」

「だからといって仕事回してくれないと新人のままだぜ」

「陸自の訓練校あがりで、捜査のイロハも知らず。かといって腕っぷしに頼ろうにも頼りない、どうしようもないじゃないですか」


ボロクソ言うね。確かに事実だけれども。


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