【10ー2】
【10ー2】
私は課長に住所を聞いて璃瑠の家を訪ねていった。マンションの一室のインターホンを連打していると、チェーンをかけたままドアが開いた。
「璃瑠、こんなとこに居たのか」
「……なにしにきたんですか?」
「お前を探しにだよ」
「住所、課長に聞いたんですか」
「私は鼻が利くんだよ。……入っていいか」
一度、ドアが閉まってチェーンを外す音がした。
璃瑠の部屋は殺風景だった。備え付けの薄いカーテンと、部屋の隅にベット。小さなタンスの傍には電子機器が散らばっていた。
「……アルカナの事、聞いた」
「……気持ち悪いですか? 気持ち悪いですよね」
「薬品と洗脳、肉体改造と特殊な訓練。正直者言うとそんな物、薄気味悪いし、理解出来ないし、許せない」
「でしょうね」
それは正直な気持ちだった。非現実的な事実を私としては容認したくない。強化人間だなんて計画、受け入れられるわけがない。
「でも、私は璃瑠を知ってる」
アルカナだとか関係ない、落合璃瑠という人物を知っている。落合璃瑠という人物を好意を抱いてるちゃんと璃瑠として認識してる。
些細な差異があったて、璃瑠を知ってる。
「何が言いたいんですか」
璃瑠の目を見つめて、私は言葉を探す。
「私達という存在も観測者によって確定されるなら、全ての人間は無数の側面を見せる。何人が何百人が何億人がお前を観測したって、何億の側面が生まれたって、何億の観測者がお前を決定づけたって私は私の目でお前を見てる。
どんな言葉で飾ったって、私は本当の璃瑠を知ってる。
どんな事実で隠したって、私は本当の璃瑠を知ってる。
どんな虚言で逃げたって、私は本当の璃瑠を知ってる。
私は璃瑠を知ってる。だったら全部、些細な事じゃんか。
アルカナだろうとなんだろうと、璃瑠は璃瑠だろ」
「世界がどうあったって、私は璃瑠をちゃんと見てる。だから、そんな些細な事で泣くなよ」