【10章・星は意味をもった】
【10章・星は意味をもった】
「帰りたくないな、うん帰りたくない」
「……そっか」
こよりと美樹の乗っている観覧車は徐々に高度をあげて、夕日も差し込んできている。大地は段々と遠くなり一日中遊び尽くした遊園地を一望出来た。
「こっから私の家は見えないかなぁー、無理ぽいかな」
「美樹ちゃん」
「ん?」
「この観覧車の中は、あたし達以外の誰も居ない、誰も知らない、誰も言わない。ここなら、あたし達の関係は何も言われない」
差し込んだ西日にもたれかけて、こよりは言う。
「でも、観覧車はいつしか地上に着いちゃうんだよね。着いちゃう」
「……誰も知らない場所まで二人で逃げちゃうか」
「それもいいかな、いいかもね。でも、あたしはそれじゃあ嫌だな。
あたしはみんなに祝福される世界がいいよ」
「私たちが祝福される、ねぇ」
遥か下に見える人の影は、男女の区別もつかない。
それに目をやりながら美樹はこよりの話に耳を傾ける。
「誰かに認識されなくちゃ、あたし達の存在は意味のないものになっちゃう、意味のないものに」
「……それは違うよ。私は、世界の果てでだって、誰からも認識されない場所でだって、こよりの事ちゃんと見てる。それじゃあ駄目なのかな」
「それは嬉しいよ。嬉しい。でも、それじゃあ世界で生きていくのには辛すぎるよ」
「どんな世界だって構わないよ。私はこよりを見てる、こよりは私を見てる。それで、充分なんじゃないかな」
「それは美樹ちゃんが強いからだよ、強いから」
こよりのこの渇望からは彼女は抜け出せないのだろうか。
今まで周囲からの賞賛を一身に受けてきた彼女にとって、周囲から認めてもらえないことは、そんなにも彼女を苦しめるのだろうか。
こよりのその意識は変えられないのだろうか。
そう美樹は思う。
「あたし達は理解されないのかな」
「こよりちゃん、目が覚めたのねぇ」
「……あたし……あれ? あたし、あれ?」
こよりは目をさました。いつかの記憶を夢に見ていた気がする。
おネェが覗き込んでいるのに気付いた。
「負傷したのよぉ。昨日の夜、回収して……」
「……沙織ちゃんは?」
「あなたが倒れていたところには居なかったわぁ」
「……革新派に奪取されたかな、奪取」
「……どうするのぉ?」
入間沙織が奪取された。
革新派がそうまでして彼女を求めた理由は分らない。だが、好意的な事態とは言えなかった。