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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【9章・死神は舞い降りた】
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【9ー12】

【9ー12】


梨花は目を覚ました。病室のはめ殺しの窓が割れて夜風が流れ込んできていた。ガラスの破片を音を立てながら踏みしめて、佐樹が立っていた。

月を背に立つ佐樹の表情は梨花からは窺い知れない。


「佐樹ちゃん……?」


佐樹は梨花の拘束具を外す。梨花の身体を抱き起こしベットから立たせた。


「ありがとう」


警報が鳴り響いた。病室のドアが破られる様に荒々しく開き警備員が入ってきた途端に撃ち抜かれる。

佐樹はハンドガンを構えたまま、梨花を急かす。


「気付かれたようね。そこの窓から脱出するわ」

「うん、分かった!」


窓の縁を蹴って梨花と佐樹は外へ飛び出した。飛行魔法を展開し二人は地上数メートルの高さに浮く。空を蹴って横のビルの屋上まで移動した。

二人の眼前を閃光が走り抜ける。


「!?」

「この程度で警備を突破されるとは思いませんでした」


ビルの屋上に一人の少女が着地した。佐樹は星砕の銃口を向ける。


小柄な身体。それに似つかわしくない左手に持った巨大な鉈の様な大剣。


璃瑠がそこに居た。


「落合璃瑠か……」

「今すぐ武装解除して投降してください。そうでなければ身の安全は保証出来ません」

「断ると言ったらどうするのかしら?」

「斬ります。上からは逃走は断固死守せよとの命令が出ていますので」

「梨花、ここは私に任せてあなたは離脱して」

「で、でも」

「WIECS無しでは厳しいわ。離脱しなさい」

「……分かったよ、佐樹ちゃん」


璃瑠が動く前に梨花の姿が消えた。二つ先のビルの屋上に梨花がいつの前にか移動していた。

璃瑠が追おうとすると、それを佐樹の射撃が阻む。


「3.02A-05Mインペリアルバスター」


佐樹が腰から提げたレール状の拡張バレルにハンドガンを連結し持ちあげる。引き金を引くと同時に光芒が璃瑠を襲う。地を蹴って宙返りで璃瑠は空中に舞い上がる。


空中に舞い上がった璃瑠を狙い二門同時発射された光芒が瞬く。その隙間を縫って落下していくように璃瑠は佐樹への距離を詰める。

佐樹は拡張バレルとの連結を解除するとハンドガンの銃口を璃瑠に向け引き金を引いた。空中に居る璃瑠に向かって閃光が走る。細い光弾が数発放たれそれを璃瑠は躱し光弾は夜空の黒に呑まれて消える。

落下の勢いを利用して璃瑠は空中から辻風を叩きつけた。

佐樹の張った魔力盾が辻風を受け止める。金切り声の様な金属音が響いて火花が散る。


防がれた辻風を璃瑠は引き戻しバク転で飛び退く。眼下を佐樹の放った閃光が走り抜け地を砕いた。


「見事なものね」

「どうも」

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