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あさきゆめみしきみへ  作者: 茶竹抹茶竹
【9章・死神は舞い降りた】
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【9ー7】

【9ー7】


六課のオフィスに戻ってくると璃瑠がホールケーキの前でフォークを一心に動かしていた。


「どうしました、美樹さん。顔色の悪いゴリラみたいな顔をして」

「ゴリラに顔色とかあんのか」

「さぁ?  どうなんですか、美樹さん?」

「あたしはゴリラじゃねぇよ!」

「現在の学校教育を根底から揺るがしかねませんね」

「私がゴリラとか教えないだろ!  なんの授業だよ!」


璃瑠の失礼極まりない挨拶に私は憤慨しながら璃瑠の前に腰を下ろした。

ベイクドチーズケーキ1ホールをフォークで崩しながら璃瑠は頬杖を突く。


「で、どうしたんですか?」

「梨花と面会してきた。嫌な話を聞いた」

「凹んでいる美樹さんに、特別にケーキを半分あげましょう」

「いや、半分もいらない、一切れでいい、てかケーキはホールで食うもんじゃねぇよ」


そんな優しさ要らない。重い。腹に溜まるという意味で。

紅茶をティーバックで淹れながら呟く。


「認められることって、そんなに大事なのかな」

「なんですか、それは?」

「梨花は他人から認められることを戦う理由にしてる。魔法という毒をもってしてでも梨花は誰かに認められたいと思ってる。……それってそんなに大切な事かな?  命をかけてまでやることかな?」


璃瑠は私にケーキを一切れ切り分けて私に寄こした。


「私達という存在を概念としてではなく実体とするのは何だと思いますか、美樹さんは」

「もうちょっと分かりやすく」

「ちょっと納得の行く話になるかは微妙ですが。

私達を構成しているのはたんぱく質とあと何かと、というように考える事が出来ます」

「お前、科学を苦手とし過ぎてる」

「ですが、そこから更に突き詰めれば私達は物質を構成する最小の物質、『素粒子』の集合体として見る事も出来ます。そこまで分解した場合、空間と物質と、私達を隔てる物はありません」

「極論じゃないか?」

「えぇ。ですが、そうとも考えられますよね。そうした場合、私達と世界の境界線はひどく曖昧なものではないでしょうか」


この考え方は誰が提唱した物だろうか。量子論に近いのかしら。

それともエカタス理論か。


「境界線ねぇ」

「そこに存在する何かは何者かが観測して始めて存在する。そうすることで、その何かと世界ははっきりとした境界線を持つんです」

「観測者か」

「観測者が居なければ美樹さんを世界と区別するものが存在せず、美樹さんは存在しないということになります」

「でも、私が鏡を見たら私を見るぜ?」

「その時は美樹さんが観測者になるわけです」

「なら、おかしくね。私が観測されるまで存在しないとするなら、私は私を観測出来ないんじゃないか?」

「そうですね。正しくいうならば境界線がないので存在しているかどうか曖昧な状態と言いますか」

「シュレディンガーの猫ちゃんか。シュレディンガーの猫ってそういう考えへの批判として提案されたものだけど」

「私の話はエカタス理論になるのでしょうか」


エカタス理論。

我々をその存在として確立し得るのは観測者による認識によるものである。逆説的ではあるが、観測者に認識されるものならばその観察物は存在するものである。観測者が観測しているならば、それが実在しないとしても存在として確立する。それを否定する術を観測者は持たない。

故に観測者の内に共通の認識を抱かせる事が出来れば、無より有を確立すると等しい。それは即ち現代の魔法となり得るのではないか。


これがエカタス理論である。

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